VRゲーム「スーパーファイナルクエストタクティクスドラゴン」

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VRゲーム「スーパーファイナルクエストタクティクスドラゴン」

 とある高層ビルの一室

 「おお、これが完成したゲーム『スーパーファイナルクエストタクティクスドラゴン』か」

 「そうです社長、このゲームは十年の歳月、百億円という予算をかけ、ユーザー十万人のアンケートを基に作成した超大作ゲームです。VRはもちろん、手や足にも細かいコントローラーを付けて五感で楽し  めるゲームになっております」

 「体験するプレゼンか面白い、早速やってみようじゃないか」

 ―START―

 目の前には雄大な草原が現れた。そして遠くには地平線。そこは地球に似てはいるが、地球上のどこにも無い風景であった。

 「すごい映像だ、おお、ドラゴンが遠くに飛んでいるぞ」

 「そうでしょう、リアルさは随一でしょう」

 「お、鼻に風が……草のにおいがするぞ、これは匂いもゲームから出るのか」

 「そうです。最新のゲームシステムで再現しています」

 「花の香りに……ってこれは臭い!なんだこれは」

 「あ、ドラゴンのウ〇コが落っこちてますね」

 「そんなもん再現すんなや!」

 「あーアンケート結果ではリアリズムが求められていまして……」

 「こんなリアリズムいらんだろ……」

 「あっ、ハイ修正しておきます」

 「まあ、気を取り直して次だ次!」

 女の子『キャー助けてー』

 「あ、社長、女の子がモンスターに襲われていますよ」

 「お、大変だな助けなければ」

 ―BATTLE-

 スライムっぽい粘性の敵が現れた

 「おお、戦闘シーンもリアルだな」

 「そうでしょうそうでしょう」

 「これで剣を振ればいいのか、セイッ」

 ―かいしんのいちげき―

 ザシュッ、スライムっぽい敵に1,632京3,278兆6,630億2,245万8,620ダメージ

 ―PAUSE―

 「ちょっと待て、何かダメージ量でかくねえか」

 「アンケートの結果ではレベル上げが面倒くさいという意見が上位に来ておりまして、最初からレベルがギガMAXになっております」

 「にしたって限度があんだろ……」

 ―おめでとう、スライムっぽい敵を倒した―

 スライム『ウーンウーン、苦しい、ゲホッゲホッ、娘が生まれたばかりだというのに……早く逝くお父さんを許しておくれゴハアッ(吐血)』

 スライムを倒した(テレレレー)

 「テレレレーじゃねえよ、何だよこの悲惨な死に方はよ」

 「アンケートではやはりリアルな生活感とそれに伴う生死が求められてまして」

 「いや、心が痛くなりすぎるわ、こんなんじゃそこら辺のモンスターも倒せねえだろ」

 「ちなみにあそこのミノタウルスっぽいモンスターは病気がちのお母さんがいてですね」

 「もうやめろ聞きたくねえ、お、助けた女の子がこっちに駆け寄ってくるぞ、結構かわいい子じゃないか」

 「そうでしょうそうでしょう、あのヒロインは有名なイラストレイターにデザインを頼みましたからね」

 女の子『勇者様大好き、抱いてええファックミー!』

 ―PAUSE―

 「待てぇい!何だこの頭のおかしい女は!」

 「アンケートではヒロインとの仲が深まるのに時間がかかるのが面倒くさい人が多くいましてね、最初から主人公に惚れているという設定です」

 「にしたって仲良くなる手順があるだろ、せめて『助けてくださってありがとう勇者様』とかからとかさあ……」

 「あ、ハイ分かりました『助けてくださってありがとう勇者様、抱いて(ファックミー)』に直しておきます」

 「何も分かってねえな!?まあいい、最後だ、最後の方見せてくれ」

 ―LAST BATTLE―

 「おお、戦いの中で仲間たちが地面に倒れている、それほどラスボスは強敵なんだな」

 「そうなんですよ、このゲーム一番の難所です」

 「そして、主人公は……なんかラスボスの玉座に座ってねえか!?」

 「ハイ、そうなんですよ、実は世界を救って絶望した主人公がラスボスになっているという設定でして」

 「いや、それにしても急展開すぎんだろ、こういうのは普通続編とかでやるもんじゃないのか」

 「それがアンケートですと続編で急展開をやられるのが苦痛という意見が多くてですね」

 「アンケートアンケートっていい加減にしろ!なんでもアンケートの結果をやりすぎればいいっていうことではないだろう!これは本当にわが社が100億と10年かけた大作なのか!?」

 「実は、下請けに時短させて三日で作らせました」

 「やりすぎだよ」

文字数:1772

内容に関するアピール

 フラッシュフィクションと言われて大事なことは、短い文章の中でいかに読者を引き付けるかだと思います。

 そしてそれにはキレのある文章が最も肝要であると考えます。

 キレのあるとはなんだろう、と考えていて思いついたのが芸人のコントです。

 面白いコントにはキレがあり、正に丁々発止といった具合で進行していきます。

 今回の作品はぶっとんだVRゲームをとある芸人にコントさせたらどうなるだろうという考えから着想しました。

 皆さんも好きな芸人を当てはめて楽しんでみてください。

 

文字数:232

課題提出者一覧