訓練訓練、新新新校舎の理科室で火災が発生しました

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梗 概

訓練訓練、新新新校舎の理科室で火災が発生しました

夕陽山小学校の避難訓練は毎年1月。消防法でそう決まっているのでトイレの花子さんや深夜にピアノを弾く幽霊たちも避難させないといけない。ただし絶対に子供達にバレてはいけない。これが教員と地元消防署に代々伝わる伝統行事だった。

主人公は消防士の春日井ミカ。地域への防災指導も消防士の大事な仕事。ある日上司から、自身の母校、陽山小学校におけるその秘密を明かされ、担当を命じられた。

訓練前日、深夜の旧校舎を回りながら各怪異たちに避難経路を説明するミカ。例年経路は同じだが、みんな記憶が止まっているので話が噛み合わない。

ミカ「理科室から出火します」
旧校舎の元理科室の人体模型「ここか?」
ミカ「いえ、ここはもう使われていません。新校舎の理科室です」
人体模型「ああ、昭和60年にできた」
ミカ「それは新しい方の旧校舎」

徒労感に愚痴っぽくなるミカ。ちなみにミカの最近の悩みは結婚式の日程が決まらないこと。彼とは小学校で出会った。避難訓練で階段を踏み外し派手に転んだところを、同級生の助け起こされ、それ以来好きになった。彼は今自衛隊員で、この後PKOで日本を離れる。できればそれまでに式をしたい。だが結婚式場の日程が開いていない。
ということを階段の鏡の幽霊に話していたら、なんとその場を小学生に見られてしまっていた。なぜこんな時間に小学生がいるのか! 小学生が逃げ出す。


視点が小学生に映る。翌朝。実は小学生たちは、毎年避難訓練で先生たちが何かコソコソやっていることに気づいていて、悪戯好きの子達が調べていたのだ。当然鏡の話で持ちきりに。 彼らは考えた。当日、避難したふりをして校舎に残り、先生たちを監視しようじゃないか。立候補した小学生は5人。どうやって校庭での整列・点呼を誤魔化すか。被服室のトルソーに服を着せて誤魔化すことに。しかしトルソーが一個足りない。旧校舎から人体模型を持っていこう。小学生たちが旧校舎に忍び込む。

そのとき、教頭先生が訓練の放送を入れる時間を間違えてしまう。

「訓練訓練、新新新校舎の理科室で火災が発生しました」

ちなみにこの言い回しは、怪異たちとってわかりやすいようにという、伝統的な言い方だ。

これを聞いた人体模型が、「避難しなきゃ」と言って歩き出してしまう。小学生がパニックになり走り出す。たまたま増える階段を追い立てていたミカを追い越す形になる。予想外のタイミングで段が増えたので、一人の女の子が転んでしまう。それを助け起こす男の子。なんとなく恋が芽生えている雰囲気をみてミカがぼやく。

「お前だったのか」

小学生たちは、今見たことは絶対に口外しないとミカに約束させられ、校庭に連れて行いかれた。


その晩、結婚式のプランナーと電話。

「どうしても〇〇日は空いていないですか?」
「その日は法定の避難訓練が入っていまして、式の途中に避難訓練が挟まってもよければできますけども」

ミカはゲンナリした。

文字数:1193

内容に関するアピール

災害小説というのは一大ジャンルかと思いますが、避難訓練を題材にした小説って読んだことないなと思いました。多分、避難訓練を書くより本当に避難しなきゃいけなくなった時を書いた方が盛り上がるからだと思いますが、それなら避難訓練だからこそ一番面白いシチュエーションを考えようと思って出てきたのがこれです。

ちなみに次点は消防士が自分の結婚式の余興で本気の避難訓練をする、でした。そっちもいつか書きたい。

シーンを切りかえる、という課題について、ドラえもんを参考にしました。ドラえもんのアニメでは、「ここから大変なことが起こるな」という瞬間に視点人物が切り替わることに気づきました。

『誰かが大失敗する(加害者)』→『何も知らない人が通りがかる(被害者)』→『大パニック』→『加害者が戻ってきてフォロー』→『加害者達の反省会』というフォーマットがあることに気づいたので、それに則りました。

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課題提出者一覧