梗 概
夢の続き
■登場人物
・ぼく:高校2年生。
・夢 :転校生。
・瑞香:夢の恋人? 夢が探している人。
・クラスメイト:ぼくと夢を東の街に売る。
・先生:もと東の街の住人。
■introduction
『昭和X年9月1日、私は死んだ。
波のように、繰り返し繰り返し、咳が喉からこぼれて取り戻せない。
薄れゆく意識の中で、夢を見た。
瑞香が、涙にくれた瞳でぼくを見つめている。
彼女は言った。
「今だけよ、さようなら。
来世でまた会いましょう。
きっときっと、今度こそ、×××××××××」
聞かせて、その先を聞かせて。
きっときっと、今度こそ。』
■第一章あらすじ
21××年、「個別化」が進んだ世界では、人々の遺伝子情報が管理され、人工知能が、食事・教育・医療・職業、友人からパートナーまで、あらゆるもののベストを提案してくれる。
人々は、主に「イエ」と呼ばれる個別の住居で、自分にとってのベストなものに囲まれて成長する。
ただ、不思議なことに「個別化」が進むほど、人々の思考は画一的になっていった。そして、誰もが「自分こそは正しい」と信じる世界で、人々はきれいにふたつに分かれ、各地では対立による事件や戦争がひっきりなしに起こるようになった。
無駄な衝突を避けるため、人々は東と西に分かれて住むようになった。東は、高い塔の街。上に行けば行くほど、権力も知名度も上がり、情報はトップダウンで降りてくる。西は、平坦な平屋の街。誰しも自分だけの「イエ」にこもる。
ぼくは、西の街に住む高校生だ。教育スペースこそ個別化されたものの、昔から変わらない、大きな校舎に通っている。
ある日、クラスに「夢」がやってくる。夢は、とりわけ変わっていて、歴史の遺物である「紙」や「筆」を持っていたりする。
何より彼が特別なのは「絵」だ。「絵」は、人工知能が描くようになった百年以上前から、徐々に廃れてしまって、今ではもう描く人などいない。
ぼくと夢は仲良くなる。
夢は「私は瑞香を探している。今生ではきっと、妻になるはずの人だから」という。ベストなパートナーなんていらない、瑞香がいればいい、と。
夢は、自分はかつての絵師の生まれ変わりなのだと主張する。一度死んで、目が覚めたらここにいたと。
ぼくは、夢を有名にすることで、瑞香を見つけ、この世界を変えようと思う。
■展開
・ぼくと夢は、まず西の街で夢の絵を売る。話題にもならない。
・東の街で夢を売り出す方法を考える。
・クラスメイトに密告され、先生に東の街の門まで連れて行かれる。
・門番の隙をついて夢が東の街に逃げ込んでしまう。ぼくも行く。追いかけられる。
・東の街の住人になりきる。
・「絵」を夜な夜な貼り出す。
・東の街の塔を徐々に登っていく。一回落ちる。でも登る。
・トップに辿り着く。夢は「瑞香」を探せると考える。
・瑞香はいない。
・西の街に帰る。夢は瑞香を探して、自分の絵を描き続ける。
文字数:1186
内容に関するアピール
生まれ変わって、前世では恋人になれなかった運命の人と出会えるか?というのがテーマの小説です。
一見、個性が尊重されているように見えて、そうではない世界や、個性を追求すると「個」がなくなっていく、という現象についても書いてみたいと思いました。
効率を追求する世界では、芸術ってどうなっていくのかな、というのも考えてみたいと思いました。
読者にアピールする点として、モデルは有名な画家・詩人です。
古くて新しく、切ない、絵や詩。彼が今に生きていたら、と考えて、今のもっと先、未来に生まれ変わったらどうなるだろう、と想像し、SFにしたいと思いました。
何かに憧れ、追いかけたいと思う気持ちを、絵画的に、疾走感をもって表現したいと思い、展開を考えました。
文字数:318