ラブラブラブ

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梗 概

ラブラブラブ

 スーパーに勤める主人公は、業務用プレハブ冷蔵庫の中で、推し活仲間の店長から推し変を知らされる。本社がとあるラブチューバーのスポンサーを務めることになり、各店舗の店長も彼女を推すよう業務指示が出たという。
 今や国民の三人に一人が推しているとも言われるラブチューバーは、バーチャルアイドル専門の動画配信サイト「Love Tube」で活躍するアイドルたちのことだ。
 そのサイトでは運営AI〈BIG LOVER〉によって人気がランキング付けされる。〈BIG LOVER〉のモットーはファンを幸せにすること。噂によると個人のパソコンや携帯端末をハッキングして推しに関わる言動を収集し、その幸福度を測っているという。動画視聴回数等の数字以上に、その幸福度がランキングを左右するのだとか。
 分厚いステンレス製の冷蔵庫は電波を遮断する。噂を信じる二人は不幸せに聞こえそうな話題はその中で話すと決めていた。
 主人公は掛け持ちを勧めるが、週末のライブを最後に推し変するという店長の意志は変わらない。掛け持ちは個々の推しへの幸福度が低いと見なされるらしい。

 主人公が冷蔵庫を出ると、恋人が待っていた。彼女は推し活をしていない。半年前に同棲を始めて以来、彼の熱心な推し活を目の当たりにしたことで、推しに否定的だ。ついに彼女は、自分と推しのどちらが大事かと詰め寄る。彼は言葉を濁すことしかできない。

 その夜、推しのランキングが不自然に下がった。
 主人公には、推しを巡る彼女との口論が〈BIG LOVER〉によって不幸判定されたとしか思えなかった。

 その週末、主人公は店長と共にライブ会場にいた。
 長年の推し活仲間たちが言葉に出さずに店長の推し変を惜しむ。
 ライブが始まる。ホログラムでステージに立つ推しは、最高のパフォーマンスを見せる。きっと〈BIG LOVER〉も盛り上がりをチェックしているだろう。気づくと店長は満面の笑みで泣きながらペンライトを振り回していた。
 主人公は思い出す。仕事に悩んでいた時に、店長にライブに誘われた。彼女の歌を浴びると悩みが吹き飛んだ。
 その時から変わらないコール&レスポンスに主人公は店長と一緒に全力で答える。

 そして店長は推し変した。新たな推しはランキングが伸び悩んでいると聞く。
 あれから帰ってこない彼女を、主人公は冷蔵庫に呼び出す。
 彼女は詰問する。こんなふざけた場所で自分との将来を真面目に考えているのか。主人公はもちろん真剣だと答える。そしてあの問答。恋人か推しか。冷蔵庫の中なら〈BIG LOVER〉にも聞かれないはず。嘘でも彼女を選べばいい。しかしそれで自分は幸せなのか。結局主人公は恋人を選べず、彼女は去っていった。

 その夜、主人公は推しのライブ配信で万単位の投げ銭を連投する。それは恋人のために貯めていた結婚資金だった。
 推しが喜ぶ。主人公はそれに満足する。推しのランキングが上がった。

文字数:1200

内容に関するアピール

あまり何かを熱心に推すという経験がないので、この題材にしました。
もちろん多少の推しというのは誰でもあるでしょう。一方で、自分の人生を捧げるような推し活をする方々もいらっしゃいます。
この話では、後者のタイプの推し活が、推される側の管理者によって監視されるようになった世界を舞台に、それでも推し活によって救われる、そんな物語を目指します。
そう書くとなんだか真面目な話っぽいですが、おそらくシチュエーションコメディ味もある話になると思います。ラブチューバーのキャラ設定は頑張ります。

文字数:238

課題提出者一覧