梗 概
「解放」体験コーディネイト
Ⅰ
銀河帝国の辺境。どうにか自治を保つ地球。ショウはそんな故郷を出たかった。「外側」、銀河中央で一旗あげたかった。精神生命に転生し支配種族の仲間入りを望んでいた。それには金が要る。夢を見ない飲み友達。看護師のステラやホストのタイレル。解脱を求め修行する仏僧ヘイルらを、どこかで見下していた。そんな彼を「全ては自らの内にある外への出口もだ」とヘイルは嗜める。
「外側」からの観光客、地球人類の体でしか味わえない快楽を求める支配種族にアクティビティをコーディネイトするのがショウのビズである。
今回の客、アラヤネートは特異だった。支配種族にも関わらず不平が多い。帝国の停滞や精神生命の苦痛を嘆く。他のコーディネーターが提供できない「より解放的な」快楽を求め、高額の成功報酬を提案した。ショウはホストを手配する。
Ⅱ
一般的な快楽で満足しなかったアラヤネート。その為の定番、夜のビル群でのバンジージャンプを提供した。「良かったが。解放感に距離がある」と言う。次に夜の街を違法改造したバイクでの疾走を提供。満足はしたが「望むものから離れた」と答える。
彼は精神生命体同士の無機質な関係や、天文距離を越えて互いを意識してしまう性質を「透明な迷路」と形容。それから離れられる経験を求めていた。ショウが彼の悩みを仏僧ヘイルに語ると「もっと内側に目を向けよ」と諭される。
ドラッグの利用を思いつく。キメた後で夜のクラブで一晩騒ぐ。「あと少しで『外側』に届きそう」と言う。ドラッグを盛った状態でのバンジージャンプや街の疾走は今一つ。「変わらず『外側』に届かない」と答える。
Ⅲ
仏僧ヘイルに引き合わせる。「内にある外側」を説かれドラッグを接種して修行。アラヤネートは肉体を持ったことが無く、地球でアクティビティを経験している間は「繋がり」から解放されると聞いた。ここでなら「透明な迷路」から脱出できると期待していると語る。法悦を気に入り、二人はガンギマリしたまま即身仏を目指しだす。寺に穴を掘って埋まる。
2週間後中止信号を受信。掘り出されたヘイルは語る。「やっこさんだけが解脱した。肉体を得て穢れを知り、はじめてあちら側に行けたのだな。ワシは取り残されたよ」
ヘイルは自分も解脱しようと無理な修行をドラッグをキメながら繰り返す。看護師ステラはそれを見て、「一度、精神生命体にならなきゃだめなんじゃない」と揶揄する。
大金を得たが「外側」に去るとは思わなかったので成功報酬は逃した。銀河中心に拠点を移すには種銭が足らない。変わらず地球でビズをしている。今回、需要を感じ、アクティビティとして失われつつある地球の文化を掘り起こす事を決める。
中央で支配種族になる事を解放と思っていた。だが「外側」は、広がる宇宙だけではないらしい。「この世の理の外側」なる解放もあるのだなと、人それぞれの解放について考えに耽る。
文字数:1200
内容に関するアピール
☆ 課題への応答
「宇宙人」 + 「外側(ここでは無いどこか)」
「使い古されたアイデア」として宇宙人を採用しました。多くの場合、非日常的な他者として用いられます。すなわち、「日常・社会・人類」と外側を接続。あるいは混入する装置です。
そこで次に「外側(ここでは無いどこか)」への憧れを混ぜました。それはSFを含め物語の全般で使われるテーマだと思います。これもまた「最も使い古されたアイデア」と考えました。追加で見知った「銀河帝国」「支配種族」「精神生命」なども盛りつけました。
☆ 補足
・ショウの一人称で書きます
・サイバーパンク的荒廃感を演出
・地球人の報酬系は精神生命にとっては薬物並みという設定
・梗概で出番は少ないステラは会話シーンで存在感を出す想定
☆ 演出プラン
1幕 銀河帝国と地球の荒廃を対比
2幕 満足させれるか、客の本当の望みは何か
3幕 外側へ、外側/内側について
文字数:380