第三世代

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梗 概

第三世代

西暦2050年、月の裏側で探索機が突然消滅した。そして、世界各国の空港や軍事基地に突如降り立ったのは、月の裏側からやってきた100名の監視者――通称「月の民」だった。

彼らは地球各国の指導者に面会し、驚くべき事実を語り始める。実は、今の人類は“第三世代”にあたり、“第一世代(月の民)”は遠い惑星から飛来し、地球の重力に馴染まないために月の裏側で長く暮らしていたのだという。彼らは自らの遺伝子を改良した“より強靭かつ発育の遅い”生命体を地球に落とし、その行く末を監視してきた。それが、“今の人類”である――この衝撃的な真実が、世界中を混乱の渦に巻き込んだ。

月の民によれば、人類は極めて強い攻撃性をプログラムされており、それは文明拡大の原動力である一方、制御を誤れば破壊へと傾きかねない要因でもあった。第二世代の人類は衝突の末に月の民にリセットされた。第三世代である現人類は、幾度も試練を与えられクリアしていた。“かぐや姫”の物語は、かつて月の民からの試練を伝えられた痕跡だった。

さらに、月の民は画期的な先端技術を保有していた。低重力環境で培った研究と、かつての惑星間移動技術を融合させた宇宙戦技術は、地球重力下では建築が難しい長距離航行船を可能にする。彼らは「人類が成熟し、争いを制御できると判断できれば、技術を完全に渡す。そうでなければ人類をリセットする」と宣言し、7日以内に答えを示すよう各国に求めた。

混乱する国際社会を前に、国連は緊急会議を招集。全科学知を検索・推論できるAI「ORION」が哲学・物理学・社会学・法学・歴史学の専門家5名を招集した。AIと人類が協力し、リセットを回避する方策を検討する。「ORION」は各国の軍事・経済状況を分析し、全面協調から限定協調、大国・企業の独自路線まで複数のシナリオを提示。最適解は「暫定地球統合調整機関」の設立とされ、兵器管理や停戦、技術共有、環境資源の配分を包括する案がまとめられる。5日間寝ずに議論し、草案をまとめ、各国の大枠の合意をとりつける。人類史の中で最速かつ広範な合意だった。

だが、軍需産業の情報漏洩や首相の暗殺未遂など、人類内部の衝突は激化。特に戦争中の国家は、停戦を拒否した。それでも、「未来を見据えたロードマップ」を提唱する物理学者がメディアへ発信し、各国は残り2日間で妥協点を探り合う。最終的に「暫定的な大合意」が成立し、世界各地の戦争は一時的に停止する。この歴史的な転換点を目の当たりにした月の民は、人類の“協議する意志”を評価し、先端技術の一部を提供すると約束した。

さらに、月の民は「500年後には、我々を追いやった侵略者が地球に到達する」と警告する。迫る危機に備え、宇宙へ進む道を切り拓かなければならない――。こうして、第三世代である我々人類の“宇宙時代”が幕を開けた。

文字数:1173

内容に関するアピール

今回、使い古されたアイデアとして
「月の民との戦争」、「地球外の敵の出現による団結」を選びました。人類創世の秘密、未知の監視者、文明の存亡を賭けた試練――SFでは幾度となく描かれてきたテーマです。

ただ、今描くとなると7日間の各国の動きやSNSの登場など情報伝達性が高いので、かなり違う動きが作れそうだなと思いました。

文字数:157

課題提出者一覧