梗 概
【人質デビュー!?】宇宙でハイジャックされてみた【#ニートハッカー】
大学生の主人公・鷹野フユトは、妹のナツハを連れて、福引で当てた宇宙クルーズツアーに来ていた。ナツハはハッキングが趣味の引きこもりインフルエンサーである。当初は旅行を嫌がっていたが、ツアーの日時が書かれたチケットを見せると、なぜか素直に受け入れたのだった。
彼らの乗った観光用クライマーが、軌道レール上を上昇していく。建設は当初の計画から遅れており、目的地の静止軌道ステーションも、かろうじて観光施設が運営されている状態だという。
しばらくして一人の男が船内でレーザー銃を発砲する。男は犯行の様子を全世界に生配信しており、配信が途切れたら乗客の命はないと語る。
男は石神カズヤと名乗り、視聴者に演説を始めた。彼の兄・トオルは軌道エレベータの建設作業員だったが、複数の作業員とともに気密扉の外に取り残される事故に遭い、死亡したという。事故原因は作業員の過失とされたが、実際は気密扉メーカー、カムロ重工の点検ミスにあると石神は主張した。石神が極秘裏に入手したデータによると、当時、人感センサーに反応はなく、誤作動の可能性があるという。
するとゲームをしていたナツハが、石神にコラボを提案する。石神が銃口を向けても、ナツハは「どうせ助けなんてすぐには来れないでしょ」と気にせず、ハッキングを始める。
まず公安のファイアウォールを突破して当時の捜査資料を披露すると、石神はもっと調べるようにナツハに指示する。
調査の結果、気密扉の人感知システムは光学センサーと赤外線センサーの併用のため、両方の誤作動は考えにくく、外部から操作された痕跡もないことが分かった。さらにエアロックに取り残された人々の悲惨な光景を収めた監視カメラの映像も発見された。しかしそれを見た石神は「兄は左利きなのに右手で工具を持っている」と指摘した。
ナツハは配信を観ている端末全てを並列化して映像解析の演算能力を高めることで、フェイク映像だと見破る。さらにカムロ重工の社内システムに侵入し、オリジナルの映像を入手する。そこには無人のエアロックが映っていた。
困惑する石神に、ナツハは推理を語る。
「作業員たちは死を偽装されて、計画が遅延している軌道ステーションの建設のために奴隷同然で働かされているんじゃない? 地球から何万キロメートルも離れた地点なら、違法行為を隠しやすいでしょ?」
ナツハがカウンターウェイト建設現場の監視カメラの映像を盗むと、死んだはずの作業員たちが劣悪な環境で働かされていることが明らかになった。
事件後、静止軌道ステーションの観光もせずにナツハはゲーム三昧。そこでフユトは、ナツハのハイジャック事件の動画があまりにも早く投稿されていることに気付く。
「もしかして、初めから事件を動画にするために付いてきたのか?」
ナツハは素知らぬ顔をしてゲームに没頭していた。
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内容に関するアピール
前回の課題で大森先生に「ホワイダニットっぽい」という言葉をいただいた時に、確かに好きなミステリはホワイダニットだなと気付きました。そこで「SF×ミステリ」が自分の武器になるかもしれないと考えました。『攻殻機動隊』シリーズや、安野貴博さんの『サーキット・スイッチャー』を意識しています。
本当はハイジャックの動機を探るホワイダニットにしたかったのですが、なんとなく流れで真犯人が出てくる謎解きになってしまったのが心残りです。
しかし、こういう無理やりこじつけたようなロジックであれば適当にやっても作れるという感覚を得られて良かったです。なんなら前回のフラッシュフィクションの方が時間がかかりました。「楽に作れる」という点も「私の武器」なのかもしれません。
謎解きとSFをもう一段深いところで絡められるといいなと感じたので、この路線でいくつか書いて最適化できるか探ってみようと思います。
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