梗 概
営業三課のロビンくん
駒形機械工業の営業三課にロボットがやってきた。
「こんにちは、でゲス。ロビンといいます。フミタさんはいらっしゃいますか」
課長の文田は目を白黒させながら立ち上がった。
「社長がヨロシクとのことでゲス。ロビンが来たからにはもう大丈夫でゲス」
何が何だかわからなかった。メンバーたちも首を傾げている。ロビンの後ろから駒形社長がスタスタと現れた。
「ガッハッハ。びっくりしたかね。ホームステイしているロビンじゃよ。前に話をしたじゃろう」
留学生が来ているとは聞いていた。でもロボットとは聞いてない。
「ロビンが会社で働きたいと言うんじゃよ」
「そうでゲス。お先真っ暗な営業三課を立て直すでゲス」
「は?」
混乱する文田たちをよそに、社長は空いていた席にロビンを座らせた。
「そんなわけで、しばらくよろしく、じゃよ。ではでは」
手を振って社長は出て行った。ロビンは営業三課の一員になった。
ロビンは出来の悪いロボットだった。口は一丁前だがコピー一つ取れない。
「画面が見にくいせいでゲス。困るでゲス」
「ゲスゲスやめてくれよ、ロビン」
「失礼な、でゲス。お国言葉は大事でゲス」
「どこの国の言葉だよ」
営業三課の成績は芳しくない。製品不良などで顧客を失っていた。士気も落ち、会議でも良い意見が出ることはなかった。
「みんな、困ってるでゲスね。ロビンが立て直すでゲス」
メンバーはやれやれと下を向く。文田が口を開く。
「ロビンにはわからないよ」
「わかるでゲス。みんな袋小路から抜け出せないでゲス。そんなときは、外に出るでゲス。何か見つかるでゲス」
そういえば最近、ドサ回りをしていない。社長直伝の営業方法で、用がなくても顧客を回り歩く、御用聞きだ。
「よし、ドサ回りをしてみるか」
「ボクも行くでゲス」
「ロビンも?課長が連れて行ってくださいよ」
メンバーの竹下が声をあげる。ときどき生意気な口を聞く。
「よし、竹下、俺とお前とロビンで行く」
竹下はギャフンとうなだれた。
ドサ回りは予想外にうまくいった。ロビンに話題が集中するのだ。製品不良で迷惑をかけていた顧客も話を聞いてくれた。
「すまなかったでゲス。全部この文田が悪いでゲス」
「おい、そりゃないだろ」
「竹下くんはよくやっているでゲス。文田から竹下くんに担当を変えるべきでゲス」
「なー、ロビンー」
竹下とロビンが目を合わせる。
「なんだと?」
「ワハハハ」と顧客が笑う。そんな感じだった。竹下はロビンと握手をしている。何をやっているんだ。
「どうじゃったかね?ロビンは?」
数ヶ月後、社長が現れた。
「どうもなにも、本当に立て直してくれましたよ」
「渾身の作品じゃからな、ロビンは」
「社長が作られたんですか?」
「駒形機械工業、ここにあり、じゃ」
「営業三課は明るさが足りなかったのかもしれません」
「もともと明るい職場じゃよ。最近忘れていただけじゃ」
ロビンと営業三課の進撃はまだ始まったばかりだった。
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内容に関するアピール
物書きとしての自分の武器はなんだろう?と色々考えて、会社に長くいることくらいかな?経理や経営企画を長いことやっているし、工場の管理の経験もあるし。ということで会社の話にしました。経理ではなくなぜか営業の話になってしまいましたが。
他の武器といえば…ほんの少しのユーモアでしょうか。本当は横田順彌さんが好きなので、ギャグ全開にしたいのですが、あそこまでめくるめくダジャレが思いつかず、こんな感じになりました。どうぞよろしくお願いします。
文字数:218