梗 概
Outside World
またしても、世界は3度目の悲劇を止めることは出来なかった。第三次世界大戦において、主力兵器は、戦車でも、戦闘機でも、空母でもなく、ドローンであった。ドローンは、AIにより自律的行動と判断が可能となり、人の行動パターンを予測し、互いに自動隊列を組むことができた。ドローンは最も有効な兵器として、第三次大戦で大量投入され、人類を驚くべき速さで駆逐していった。どの国も一旦投入を行った大量のドローンを引き上げることはできず、大国すら国を維持できないレベルまで全世界の人口が減っていき、第三次大戦は、勝者が誰もない戦争として終わった。ドローンだけが空中に彷徨う世界だけが残された。
そんな中、わずかに生き残った人々の一部は、ドローンが潜入できないドーム型の建物でごく小さなコミュニティーを作り生き残っていた。わずかな土地を利用して、自給自足の生活を営んでいた。徐々に土地も痩せ細り、地下水も出なくなってきた。かといって、外に出ると、ドローンの餌食だ。いよいよ飢え死と誰もが思った。そんな中、ドームのドアを叩く音。皆に緊張が走る。子供の声がドームの外からする。心配する者と、不審者は絶対に入れるなという者、言い争いが始まり、収拾がつかなくなりそうになる中、ドームの長が立ち上がり、素早くドアを開ける。子供を引き入れた。子供は衰弱していた。手には旧式のドローン。残り少ない食料と水を分け与え看病を行い、子供は徐々に回復を見せた。話を聞くと、外で生き残っていたらしい。どうして生き残ることができたのかと長が尋ねると、子供は旧式のドローンを指さし、これで身を守っていたという。子供はドーム内でドローンを操作して見せた。誰もが息を呑んだ。まるで超高速の燕だった。外にいる最新鋭のドローンの動きすら凌駕している、天才的な操作だった。その見事な操作を見ていた長はふと思いつき、皆を呼び、地図を広げ、ドームの近くにある旧工場を指差した。「ここは元植物工場、ここから資源を持ち帰ることができれば皆が助かる。この子のドローンに援護してもらえば希望はあるかもしれない。外の世界にでる勇気のある者はいるか」と聞く。誰もが手を上げない中、「行くよ」と声上げた少女。長が心配する中、少女の母親が「娘は誰よりも足が早く、勇気がある。必ず成し遂げてくれる」といった。少女は強く頷いた。真夜中、少女とドローンを持った子供は、皆が心配する中、ドームの外へ足を踏み出した。ドームの外はドローンだらけと思っていた少女は、空に何もおらず、拍子抜けする。子供に聞くと「じきにくる」という。微かな風を切る音がする。子供は急いでドローンを飛ばす。空がどんどんと黒くなっていき、大量のドローンが二人を襲ってくる。子供は、ゴーグルをかけ、空中で指を動かしドローンを素早く操作。瞬く間に敵を撃墜していった。あっという間の出来事に少女は呆気に取られる。子供はドローンを呼び戻し、二人は再び外の世界を歩き始めた。
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