梗 概
芙美に家族を教えてください
・どんな話?:結婚や家族の制度が終わり、パートナー制度が主流になった。気軽にワンクリックで結ばれ、ワンクリックで別れる。そんな世界で生まれた子供が、古い家族を求める話。
・ターゲット読者:20~30代の結婚を真剣に考える世代。
・主人公:芙美16歳。昔の価値観や考え方に憧れを持つ。芯を強く持ちたいが、自分の考えに自信が持てず、強く言われると一歩下がってしまう癖も。
・パートナー制度の概要:日本政府が2070年頃に予測していた出生数50万人割れが、2030年大幅に前倒しで現実となった。国力が急激に低下する中、異次元の政策の導入に迫られ、北欧で試験的に行われていたパートナー制度の導入を決定した。パートナー制度は、戸籍廃止、婚姻・離婚届廃止、何人と結ばれようが別れようが法律上問題なく、子供を作っても養育の義務すら生じないという制度。子供は0歳から6歳まで、ナーサリーと呼ばれる施設で国が全額負担で面倒を見る。卒業した子供たちは、次にドームと呼ばれる施設で18歳まで集団生活を行う。その中、養育希望を持つパートナーに対し、子供に様々な大人との生活を経験させることを目的に、ホームステイと呼ばれる制度も導入。子供とパートナー間でマッチングが行われ、最初は2週間のトライアル、その後、両者の希望で半年の延長を繰り返し、最大5回までを可能とする。導入当初は無期限延長、すなわち昔の家族制度に近い考え方も選択可能としたが、家族法が事実上消滅した中、相続や扶養など法律上の課題の整理も難しく、また無期限希望者の多くは、仲違い、金銭トラブル、犯罪など多くの問題が起こり、大半が途中解約で終わり、無期限延長制度が廃止となった。
・ストーリー展開:ドームに住む芙美は、古き時代や家族に憧れ、古い本や映画に浸っている。ホームステイ・マッチングの条件に敢えて「家族を教えてくれる人」と条件を入れ、提出する。数ヶ月後、忘れた頃に芙美のホームステイ先が決まる。相手は80歳過ぎの老人。芙美は最初は明るく振る舞おうとするが、老人は言葉をほとんど発せず、常に陰気な表情。心が折れてしまった芙美。ホームステイの延長を諦める。2週間後、ある女性が訪ねてくる。老人のケアテイカーが、その老人が余命わずかであること、また滅多に口を開かなかったが、芙美のことを嬉しそうに話し、また戻ってきてほしいと語ったという。ケアテイカーは老人最後の願いを叶えるため、戻ってきてほしいと頼む。芙美は悩むが、戻ることを決意。芙美は弱りゆく老人を放っておけず、介護を買って出る。芙美は、老人の過去のパートナー、そして子供の話を知る。日々徐々に弱り、死に近づく老人。芙美は、過去の家族に対する憧れは甘えだったと気づくが、本当の家族とは何なのか、さらに悩む。そして最後の老人の言葉を聞く。
文字数:1161
内容に関するアピール
当たり前のような、結婚や家族という制度や概念、でも実は当たり前じゃないもので、国が制度を整えていて、それに私たちは乗っかっているだけでもあります。また、3組に1組は離婚する今、若いジェネレーションはズレを感じてきていて、将来もっと気軽で責任フリーな、今とは違う形が求められる可能性はあるんじゃないだろうか、という課題意識(&空想)から生まれたアイデアです。「もし、家族や結婚に縛られない世界があるなら」と想像することで、「今」の読者は目の前の制度をより深く考えることができると思い、結婚や家族に真剣に向き合う必要に迫られる20、30代の読者層に、特に刺さるテーマになり得るのではないかと考えました。
文字数:299