梗 概
システムエラー
犯罪抑止の目的で、ある法案が可決された。
体温のエネルギー変換で半永久的に動作が可能なネックレス型小型録画デバイスを、常時身につけること。幾つかの例外を除き、全国民に義務化した。デバイスは、生活の全て、24時間の録画を行う。録画データは、リアルタイムにサーバーへ送信される。法令化において、プライバシーの問題が当然大いに議論された。サーバーは政府・警察含め誰もアクセスができず、AIだけが常時モニタリングを行い、犯罪に繋がる問題活動・発言を検知すると本人に確認が送信される。本人承諾を得て、はじめて捜査機関など関連機関に情報が提供される仕組みで、48時間後に全データは自動消去される。プライバシーにも一定の配慮が取られた。犯罪が巧妙化・凶暴化・頻発化している中、いつ襲われるかもしれない、という恐怖感が世の中に蔓延しており、この技術が犯罪抑止に絶大な効果があるという実証実験結果を盾に、プライバシー懸念派の反対を押し切り法令が可決された。
また犯罪だけでなく学校でも大きな効果をあげた。導入から半年で、いじめが校内からなくなったと喜びの報告が多く上がった。当初映らないようにしたり、デバイスを取り外したりと、かい潜るようにいじめを試みた者もいたが、すぐに対策が打たれた。
臼井賢一郎が高校から帰宅すると、AI監視サーバーより本人確認が届いた。思い当たる節はなく、報告対象データをプレイバックをする。明らかに自分の行動とは違う映像が映されていた。男が写っており、音声がよく聞こえない。他人の生活を覗き見している気持ち悪さを覚え、すぐ映像を閉じ、ミス送信だったとメッセージを送った。その後も、頻繁に臼井宛に確認が入るようになった。見てはいけないと思いながら、見てしまう臼井。知っている風景、聞き覚えある声、これは同じクラスで密かに憧れている、神崎若葉のものと確信を持つようになった。どうやら神崎は脅しを受けているようだった。臼井は神崎に伝えるか悩んだ。しかし、これまで神崎とは喋ったこともない。気持ち悪がられるだろうし、下手すると自分が報告されるかもしれない。何も言えず悩む臼井。その間もサーバから確認は入ってくる。映像の男は録画を警戒し、隠語で話していて、脅しの直接の内容はわからない。しかし何やら犯罪の関与を感じた。学校で神崎とすれ違った臼井。意を決し話そうと声をかけるが、神崎に睨まれ、怖気付いてしまう。帰宅した臼井、その晩、新たな確認が入った。首を小さく横に振り、無機質な顔で「報告」のボタンを押した。それっきり、臼井宛に確認が入ることはなくなった。結局何だったのか、今もわからない。その後も、やはり神崎と話す機会はなかった。あれはシステムエラーだった。それでいいじゃないか。そう思うと臼井の気持ちが随分と楽になった。
文字数:1158
内容に関するアピール
自分の強みを考えることは、簡単な作業ではなかったです。悩みました。
でも、この課題を真剣に取り組んだことで、以下の貴重な気づきを得ることができました。
①できていると思い込んでいたけど、自分をそんなに客観的に見れていない。
②もっともっと書かないと。書く量が足りないので強みも弱みも見えない。
ただ、結局分かりませんでした、というのも何なので、一応今回、仮説で立てたことをお伝えします。私、中学1年から大学卒業まで、寮生活をしてたんです。全寮制って、四六時中ずっと生活を共にすることですので、まぁ色々見たり聞いたりするわけですよね。ぽろっと出る友人の本音、人の群れ方の変化、いじめた奴が今度はいじめられたり。私自身も上級生から殴られたり、いじめを受けたこともありました。そんな経験や体験で得た人間関係の苦味(そして甘みも)を、皆が共感できる形で、物語に落とし込んでみたいなと思っています。
文字数:390