インフルエンサー×SFの連作短編集 『ひろげる人たち』

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梗 概

インフルエンサー×SFの連作短編集 『ひろげる人たち』

<概要>
拡散の種をコンセプトに入れ込むSF連作短編集。
インフルエンサーたちを主人公にし、インフルエンサーのSNSで取り上げていただくことを狙う。

タイトル案『ひろげる人たち』。

 

<連作の構成>
以下のようにインフルエンサー×SF設定で短編を用意。

■短編1 崩壊世界で配信を続けるVTuber (詳細後述)

■短編2 リアルゾンビに挑むFPSゲーム実況者
ゾンビが溢れはじめた世界。FPSの腕を活かし射撃し、スーパーからの脱出行をはじめる。幼い子供を恐怖から守るための、明るい実況とともに。

■短編3 改変に抵抗する書評系インフルエンサー
電子書籍やサイトは、歴史修正主義で暴走したAGIによって知らぬ間に改変されるようになった。主人公は陰謀論者のように笑われながら、紙の本の紹介を行う。

■短編4 AIに嫉妬していたインスタグラマー
港区女子。嫉妬が癖の彼女がライバル視していたアカウントは、AIモデルによる試験的なものだった。

 

<短編1 「ワールズ・エンド・バーチャルフレンド」あらすじ>
崩壊した世界。ビルの瓦礫、わずかな人類。

ネットは分断され少数サーバが独自に動くのみ。YouTubeクローンの中で、いまだ更新される唯一の動画チャンネルの主はVTuber『空名ミア』。
「おいしい缶詰の食べ方」 「あえてイマジン歌ってみた」「絶望的すぎる悩みへの明るすぎる人生相談」「ばえる廃墟MV」……彼女は、可愛らしい2Dモデルで能天気な配信を続けていた。中の人が誰かも、どこからの配信かも謎。
配信内容と進行する物語を交互に展開。

「私」はトーキョーの避難所で更新を楽しみにしていた。周りも元気づけられている。皮肉っぽい「先輩」はやけに明るい様子を見て「AItuberじゃねーの」とバカにする。でも、私は人じゃないかと思う。きっとかわいい女の子だ。
ある日、『空名ミア』の疲れた変調を画面の向こうに感じる。

私と先輩は動画をヒントに、廃墟を旅し発信場所へ。チャットしてヒントを引き出すうちに、VTuberの心に近づいていく気がする。

辿り着くと病気の中年女性がいた。世界崩壊時、女性の弟が行方不明になっていた。弟が好きだった、更新が止まったVTuberの2Dモデルと声設定をハッキングで取得、「中の人=魂」を勝手に継いでいた。

女性の最後の日々、私と先輩は話を聞く。
「最初は、また弟がコメントしてくれる、見つかると願って、弟の好きな歌を歌ったりゲームをしたりしてた」
「もう弟は亡くなってるって気づいてる。けど、配信を待ってる人がたくさんいた。生きる理由になってた」

息をひきとる彼女に、私は「魂」を継ぐことを約束する。
だって私は、『空名ミア』らしい盛り上げ方をよく知ってる。「慰めでもいいじゃねーか。やろーぜ」と手伝ってくれる先輩。
終わる世界に、今日もVTuberミアの声がこだまする。
貨幣経済が崩壊した今、意味を成さない1億のスパチャが届いた。

文字数:1200

内容に関するアピール

<企画の背景>
■マーケティング的な拡散への視点を導入。
狙うは拡散の「核」。押さえればウェブで広がりやすい、レバレッジが効くポイント。
■そこでインフルエンサーに注目。
彼らのSNS上(YouTubeやXなど)での紹介や帯の推薦文は大きな影響力を発揮する。
例:
・にじさんじのVTuber栞葉るりさんが推薦し「不純文学」が即重版
・書評系TikTokerのけんごさんが「残像に口紅を」を紹介し11.5万の増刷
・YouTuberのTERUさんが「世界でいちばん透き通った物語」を絶賛し50万部のヒットへ

<戦略>
■インフルエンサーの興味や共感を向上させるコンセプトをインストール。
あらかじめSNSで紹介しやすい、されやすいものを目指す。
■インフルエンサーに「自分ごと」として感じてもらう。
主人公は、VTuberやゲーム実況者など、すべて「インフルエンサー」。彼らならではの気持ちにフォーカス。ノイズだらけの中、がんばる支えになっているやりがい。代替されるかもしれない、戦いのルールが変わるかもしれない、という危機感……そうした感情を、SF的なギミックで際立たせていく。

<プロモーション展開案>
インフルエンサーやデジタルプラットフォームを絡めた販促がしやすいことも本企画のメリット。
■インフルエンサーへの手紙付き献本
……本を送るだけでなく、その方の肩書きを意識して、読んでいただきたい短編に焦点を当てた手紙をセットに。SNSで取り上げていただくことを丁寧にお願いする。その内容を帯でも活用。
■コラボコンテンツ
……プロモーション予算がある場合は、ぜひインフルエンサーを協力者に。一緒に得意なメディアでコンテンツをつくる。例えば、VTuberとコラボする場合、小説の配信場面を再現してもらう動画を制作したり。ASMR的な喜びを提供するようなもの。こういったコンテンツは繰り返し観られ、聴かれる広告として機能する。
■SNSの投稿が集まる特設サイト
……本の紹介サイトも工夫を。こちらサイドからの発信だけでなく、YouTubeやXなどの関連投稿を集めてサイトを構成。UCG的に開かれた「育つサイト」で注目を集める。

<短編1 「ワールズ・エンド・バーチャルフレンド」ポイント>
VTuberはキャラクターになりきっている。それが演技であろうが、作りものであろうが、救われる人がたくさんいる。救われる心や元気づけようとする心は本物。そこに、VTuberの本質があるのではないか。その本質を、極端なSF的状況だからできるやり方で描く。
こうした設定で本質を追求する考え方は、いずれの短編でも共通。

文字数:1080

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