フィジカル長女とロジカル長女

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梗 概

フィジカル長女とロジカル長女

【登場人物】
二名とも大富豪の娘だが認知をされていない。誕生日同じ。

[フィジカル長女・燈子]
両親の間に愛はなかったが、両親が通常の性行為を行い、母親が避妊具に穴を開け生誕。肉体関係と暴力的性格のWミーニング。
[ロジカル長女・文江]
両親の間に愛はあったものの、性行為はなし。別人の精子に対して父親の遺伝情報を上書きコピーしたものを人工授精し生誕。論理コピーと理論的性格のWミーニング。

【物語】
 独身で大富豪の男が「財産は全て長女に相続する」という遺言を残して死去。認知した子もおらず謎の遺言状とされた。

 二人はそれぞれその情報をキャッチし死後認知の申し立てを行う。二人は大学の同期だが、学内で会うたびに〝長女の定義とは何か〟を巡って罵倒しあうことになる。

[第一罵 →あなたは行為なき子供なのね! 行為だけが愛だなど動物的ですね←]
二人ともDNA鑑定で親子関係あり。この時点で富豪は二股をかけていたという認識になる。
何かおかしいと直感した燈子は探偵を使って文江を調べた結果、文江が人工授精で生まれたという情報を知る。
燈子は性行為子のみ真の子であると主張するがすでに世の中に人工授精で親子となった事例は星の数ほどあると文江は反論。
論点は[愛し合った事実がないのに子供と言えるのか]

[第二罵 →すり替えは手品師だけにしておきなさい! 論理のすり替えをした貴女が?←]
精子提供者が富豪とは別人であることが判明。どんなトリックを使ったのかと詰め寄る燈子。
DNAのみで純粋に決まる子であるかの話をしているので厳然たる事実がある以上トリックなどは論理のすり替えと文江は反論。
論点は[精子提供の事実とDNA鑑定とどちらが事実として重いのか]

[第三罵 →友情から子供は生まれない! では喧嘩から生まれるのかしら?←]
文江の母がアセクシュアルであり恋愛感情も性行為もない、という証言を燈子が得る。
一方、燈子の母親が富豪と激しい喧嘩ばかりしていた、という証言を文江が得る。
論点は[子は愛の結晶というが、性行為と友情レベルの仲良しとどちらが愛なのか

[第四罵 →コピーにオリジナルの価値はない! デジタルにおいては違うのでは?←]
文江の母の兄が最先端の科学者であり、精子情報を上書きして得たものであるという事実を燈子は掴む。
論点は[クローン人間の子供はクローン元から見て実子といえるのか]

[最終罵]
弁護士登場。「二人長女が名乗り出るはずなのでその二人にこの音声を聞かせてほしい、と富豪に言われている」。
 自分は自分の遺伝子が嫌いで断ち切りたいのに、文江の母にも燈子の母にも裏切られてしまい恨んでいる、よってあの遺言書で娘二人を喧嘩させるのが僕の復讐だよ、という内容。遺産は大半が死の瞬間の前に慈善団体に寄付され残り金額は4円(ご縁も無し、の意)。
 二人は共に被害者である互いを確認し、姉妹として奇妙な友情が生まれて握手する。

文字数:1198

内容に関するアピール

仮の武器について。
一点目、小説を書くときに自分が何にこだわっているか振り返ったとき、私は文章のリズムに関するこだわりが人より強いように考えています。
二点目、過去作を分析してみたのですが、多いのが「『愛』要素があり『恋愛』要素のない作品」でした。

というわけで今回、この二点を武器として盛り込みました。

梗概で実作のリズムを表現するのは難しいですが、まずタイトルで韻を踏み、またサブタイトルを見せることで体験版っぽくしてみました。
親たちに愛はあったのか、という要素はあっても、絶対に恋愛物語ではない骨肉の罵倒物語を是非ともお楽しみいただければと思います。

文字数:274

課題提出者一覧