大囚人

印刷

梗 概

大囚人

優等生的な人生を送ってきた主人公は就活を始めたばかりの大学三年生。育ちのいい彼は人の話をよく聞き、常に人のために親身になれるところは就活で評価され、大手コンサル会社の最終面接一方手前までたどり着き、内定を手に入れる所も目に見えている。人生で大きな挫折を経験したことのない主人公にとって現状は当たり前すぎでなんの新鮮味も感じない。あるとき、Youtube動画を視聴するとき「ムショ飯食べたい人募集!近日OPEN!」という怪しげな広告が流れてきた。その広告のリンク欄をクリックして、隣の県で近頃開業される監獄型のテーマパークの紹介が出てきた。主人公は次の面接前にそこに遊びに行くことにした。

テーマパークは本格的な監獄体験を売りにしているところで、主人公は入園時にAIツールに生成された罪状を渡され、看守(スタッフ)に番号で呼ばわれ、独房を割り当てられるなどこれまでの人生に体験したことのない出来事を色々と経験できた。さらに、主人公の罪状は相当な重罪で、「死刑」の執行は不可欠である。営業時間終わり間近に、スタッフが主人公を刑場に連れていき電子椅子みたいな装置に座らせてボタンを押した。しかし、流れてきた電気の量は尋常ならざるもので主人公は失神した。

目を覚めたら、主人公は三年前に飛ばされて元の自分とは同姓同名の別人となった。そして奇しくも職業は元の自分が受けようとした大手コンサル企業のコンサルタントで、目下取り込んでいる仕事のクライアントはあの監獄型テーマパークを運営している会社である。仕事内容はまさに監獄型テーマパークの建設プランについてのもの。このまま時間が進むと、この世界線のもう一人の自分が就活になってあそこに遊びに行ったら、電気椅子で意識が飛んでコンサルとなった今の自分が消えるのではないかと危惧する主人公は、焦燥感に駆り立てられ仕事に取り掛かることにした。

誰でも気軽に行けるテーマパークではなく、招待制で宿泊料高めのホテルに変えるよう提言し、建設方針が大きく変わった。仕事は忙しくなったが、これで自分の消滅を回避できる(かも)と一安心する主人公はある夜、元の自分の様子を伺おうとして元の家に行ったら、ちょうど元の自分が警察に逮捕されパトカーに入れられたところを目撃した。果たして主人公の運命はどうなるのか…

文字数:959

内容に関するアピール

自分とは全く違う思想を持つ人間とは?って考えたら、おそらくこういう人物に違いない:常に人の役に立つことをしようとする人、真面目で行動力のある人、そして何よりもマゾ(自分の利益を無視できるから多少そのような性質を持っていると邪推)。このような人にとって、程よく不快感や苦痛を体験できる場所とは何かを考えたら遊びに行ける監獄みたいなところを思いついた。

 

文字数:174

課題提出者一覧