自動掃除機の恩返し

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梗 概

自動掃除機の恩返し

 家事手伝いの三郎は工場を経営する兄達の指示で念願の自動掃除機を買いに行く途中、廃品集積場で「まだ働きたい」と訴えてきた薄汚れた自動掃除機を拾う。兄の太郎と次郎は「そんなもの捨て直してこい」と言ったが、三郎はその自動掃除機を修理して充電してやった。自動掃除機は喜んで家中を綺麗に掃除し、更には隣接する工場までも掃除するようになる。兄達もその働き振りを認めた頃、奇妙なことが起こり始めた。工場から出荷する愛玩機械達の評判が急に上がったのだ。どの愛玩機械も設計より優秀になり、人命救助する個体もあって評判が評判を呼び、工場の儲けは膨れ上がっていった。しかし兄達にも三郎にも従業員達にも何が起きたか分からない。ただ一人、最古参の顧問だけが何か知っている様子で工場を夜間も稼働させることに反対し、「夜は決して工場内を見るな」と三郎や兄達に厳命した。顧問に頭の上がらない兄達はその命令を守ったが、三郎だけは我慢ができなくなって、ある夜、工場内を覗いてしまう。工場内では自動掃除機が不思議な光を纏って動き回り、完成間近の愛玩機械達に何かを施していた。三郎は慌てて家に戻り、兄達に見てきたことを伝えて相談する。次郎はそのまま黙認すべきだと主張したが太郎は製品に責任が持てなくなると反対した。三郎が自動掃除機に何をしているのか確認するべきだと提案すると兄達も賛成する。翌朝、三郎が自動掃除機に尋ねると、円形の機体から少女の立体映像が浮かび上がって答えた。曰く、自分は宇宙人で地球に漂着して壊れた自動掃除機に入り込んだところ一人の老人に拾われた。その老人は技術者で自動掃除機を趣味のままに改良するうち宇宙人の存在に気づいた。宇宙人は居候させてほしいと懇願して了承されたが、老人が病を得て施設に入所したのち親族によって廃品集積場に捨てられてしまったという。可能ならば老人に再び会いたい、それまで愛玩機械達の機能を向上させ続けて恩返しすると言われ、三郎は了解した。兄達にも事情を伝えると、老人探しを手伝う代わり、愛玩機械の機能向上技術を教えるように自動掃除機に迫る。自動掃除機が、その技術は老人から教わったものだと告げたので、兄達も積極的に老人探しを始めた。一ヶ月後、愛玩機械の購入者から有力な情報が寄せられる。教えられた施設を三郎達が訪れると、自動掃除機から見せられていた画像の通りの老人がいた。三郎達が名乗って経緯を説明すると、老人は工場の顧問と旧知の仲だと言い、自動掃除機にも会いたがった。兄達は老人をもう一人の顧問として雇い入れ、自動掃除機は再会を果たす。いつまで地球にいるのかという三郎の問いに、自動掃除機は宇宙を旅する体力を回復するには百年ほどかかると明かし、子々孫々に至るまで工場を支えると約束した。

文字数:1146

内容に関するアピール

物語の典型のようなものがいろいろ混ざった話になりました。「最も新奇な」という課題はとても難しく苦しみ、結果、途中までは典型的だけれども結末は典型的ではない形となりました。とりあえず、めでたしめでたしです。

文字数:102

課題提出者一覧