梗 概
電子麻薬取締官の日常的非日常
厚生労働省管轄インターネット厚生局電子麻薬取締部電子麻薬取締官ワダ・ヒカリ三十八歳は、さまざまなアバターを使ってバーチャル空間を動き回り、電子麻薬の違法取引を取り締まる日常を送っている。電子麻薬とは光や音の刺激で脳内麻薬を分泌させる安全な麻薬としてインターネット上で拡散したものだが、使い方によっては強い暗示作用があり、洗脳されて犯罪行為や自傷行為に至る被害者が続出したため取り締まられるようになったプログラムだ。日々新しい電子麻薬が出回る中、ヒカリは次々と密売人を検挙して名を馳せていた。
そのヒカリの下にアマノ・ネネという新人が配属される。二十四歳のネネはアバターでしか会わないヒカリのことをいろいろと詮索してくる女性だった。ヒカリは性別すら明かさずにネネを指導し、現場に立ち合わせて経験を積ませていく。しかしある捜査中に、ネネが不意を突かれて電子麻薬を使わされ、ヒカリが使用中のアバターを聞き出されてしまう。ヒカリはネネの身体の保護を同僚に要請するとともに、同じアバターを使い続けて自ら電子麻薬密売組織の罠に嵌まった。窮地に陥ったかに見えたヒカリだが、実は複数のアバターを併用していて、その密売組織の中にもヒカリの操るアバターが二人いた。ネネに電子麻薬を使わせたのはその一人だった。そうしてヒカリはその密売組織の構成員の殆どを一斉検挙したが、体調を崩したとして休養に入ってしまう。複数のアバターを使って潜入捜査をすることは相当の負担を精神にも肉体にも強いるので疲れが出たとのことだった。ネネが同僚から聞き出したヒカリの居場所は病院で、しかも体調を崩す前からずっと入院しているという。見舞いに訪れたネネが見たのは、首から上しか動かすことのできない痩せた男性だった。ネネと同じ二十四歳の時に交通事故で脊椎を損傷したという。ヒカリはネネが来たことに文句を言いながらも、電子麻薬を使わせたことを謝罪する。ネネは今後も見舞いに来続けると一方的に宣言した。
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内容に関するアピール
バーチャル空間でアバターでいる際と、自分の肉体でいる時のシーンの切り替えを効果的に書く作品として考えました。ヒカリが自分の肉体をどう感じているかを少しずつ伏線として出しつつ、物語を盛り上げていけたらと思います。
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