梗 概
鼻くそブラックホールのモンちゃん
お正月にばあちゃんちの畑からみた空には星がいっぱいきらきらしてて、今にも僕が空に向かって落っこちちゃいそうだった。でもくしゃみをしたら、鼻水はすぐに僕の口に返ってきて、気持ち悪かった。
僕は小学校2年生になっても鼻くそをほじるくせが直らなかった。気がついたらほじってて、指先の鼻くそのやり場に困って机の右奥にギュッと押し付けていた。1年生の時は机の裏全体を鼻くそだらけにしてプリントに年季の入った鼻くそをつけたりしたけど、もう2年生だから、ずっと計画的になった。
でもこれは、斜め前の席のみよちゃんには見られたくないなと思う。みよちゃんの両サイドの三つ編みはきゅっと結ばれていて、とてもかわいい。
ある日、いつものようにぎゅっと鼻くそを押し付けようとしたら、なんか変な感じだった。いい加減ぎゅったま(鼻くそを固めたもの)が大きくなっきてまずいなと思ってたけど、その日はいつもと手応えが違った。代わりにそこに小さな穴が開いたように、人差し指の腹がぎゅったまがあったところにピタリと吸い付いた。
おかしいなと思って指を離そうとしたら、頭の中に声が聞こえてきた。
「お前か、鼻くそなんてもので俺を作ったのは。ふざけんなよ」
声の主は自分はブラックホールだと名乗り、僕は図鑑でみたブラックホールの形がモンブランのぐるぐるに似てると思ったのでモンちゃんと名付けた。モンちゃんは鼻くそは金輪際お断りだと言い、消しカス、答案、給食を吸い込んだが、嫌いな先生は「後味悪いだろ」と、吸い込んですぐ教室のごみ箱から吐き出した。僕がみよちゃんのお気に入りの消しゴムを拾って渡そうとする前にモンちゃんがそれを吸い込んでしまい、みよちゃんが泣いてしまったので、なんで消しゴムが消えたのか、みよちゃんにモンちゃんとその出自の鼻くそについても話すことになってしまった。
一学期の終わり頃、机の右奥は表側も黒ずんできて、机がひしゃげ始めた。
「俺、そろそろやばいから宇宙に帰らせてくれ。優太とはお別れだが、その前にモンブランを丸ごと一つ、食べさせてくれないか」
僕とみよちゃんは夏祭りの夜にそっとみんなの輪を抜けて、机を学校から近くの空き地へ運び出した。モンブランを吸い込んだモンちゃん。
「うっ」
呻くようなモンちゃんの声がした。美味しくなかったのかな……僕は心配になって隣のみよちゃんをちらりと見た。次の瞬間、
「ま!優太もう一個だ、もう一個!」
モンちゃんは叫びながら星空に向かって落ちていった。
二学期の席替えの前にニュースが届いた。白昼堂々ケベック州のケーキ屋から、モンブランが数個、吸い込まれたようなクリーム痕を残して消えたらしい。それらしき犯人は目撃されなかったが宙を舞うひしゃげた机を見た人がいて、証拠写真を見せている。ブレた写真だったがそれは確かにモンちゃんで、みよちゃんは僕へ振り返り、おさげを揺らしてくしゃっと笑った。
文字数:1200
内容に関するアピール
主なシーンの切り替えは以下です。
①冒頭の冬の星空
②1学期の教室での様子(細かな切り替えは、発生する各種のイベント毎にあります)
③夏祭りの夜空
④夏休み中、優太がモンちゃんを思い出す場面(字数の都合で文字になってはいません)
⑤夏休み明けの教室での幕引き
実作にあたっては、例えば、①③で星空や浴衣のヒロインを細やかに臨場感をもたせるように書き、②で起こる各種のイベント(具体的には以下等)
・なんでもない日常→ブラックホールの出現
・優太がブラックホールについて自宅や図書室等、教室外で学んだ後にモンちゃんと命名する
・消しカスや答案、食べ物(給食だけでなく、家からこっそり持ってきたりする)等をあげる
・先生を吸い込んだ時の顛末
・みよちゃんの消しゴム吸い込み事件
を丁寧に書き、楽しく読みながら夜空の向こうの宇宙に思いを馳せる作品にしたいと思います。
文字数:373