梗 概
Anti Q
テーマ:「何をすべきか」は「何者であるか」から生まれる
概要:AI技術により超人的な知能を持つAを記憶喪失のBが助手として見守るバディもの。しかし根幹の謎はBの失われた記憶にあり敵組織との戦いを通じて真相が明らかになっていく。
〇世界設定
舞台は2055年の日本。犯罪者の動機となった記憶を消し(=シナプス長期増強(LTP)の破壊)無理やり社会復帰させる「輪廻更生計画」が存在する。格差が拡大した結果社会を揺るがすような犯罪が頻発し、2046年に発生したS駅前自動車暴走事件はその犯人が死刑を望んだために死刑廃止及び「輪廻更生計画」のきっかけとなった。2050年にはAIを用いたテロが起き、その首謀者であるAI学者が政府に捕らえられている。紛争が続く世界では自律型致死兵器システム(LAWS)の是非が論じられている。
〇主な組織、キャラクター
【秘密警察「Q」】
接脳型(ハードウェアを脳に埋め込み直接信号をやりとりする)AIを用いて感覚を拡張した改造人間が所属する警察組織。テロ犯の逮捕が主な任務。
・イオリ
記憶喪失の男。何故か「Q」に配属された。臆病な性格。
実はS駅前自動車暴走事件の犯人。家族仲が悪く生きてきた時間全てが動機に繋がっていたため、「輪廻更生計画」によって記憶を全て失い「Q」に配属された。
・イヅル
「Q」の捜査官。接脳型AIの使用者でありデータベースの記録と現場の証拠を突き合わせる能力に長けている。無能に厳しく人付き合いが悪い。
実は「アンティーク」に所属するスパイ。イオリの正体を知っており、その監視をしながら政府の内情を探る。
【反政府組織「アンティーク」】
反政府を掲げるテロ組織。AIやロボティクス等を用いて武装する。真の目的は政府に捕らえられた学者の解放。
・センリ
「アンティーク」のボス。接脳型AIにより思考の処理速度を加速させているが外部のデータベースとは接続していない。実はイオリの弟でありイオリの凶行は自分のせいだと思っている。
【養護施設「骨董」】
テロ被害などの理由で保護者のいない児童を養護する施設。「アンティーク」の支援を受けており教師は武装している。
・カナギ
「骨董」の創設者であり教師。右目を失っているが身体能力は高く、子供に剣道を教えている。
実はイオリの事件により眼球を欠損した。イオリの活躍を複雑な思いで見守る。
〇ストーリー
イオリが夢から目覚める。何も分からぬままイヅルと対面し「Q」へ所属することに。
「Q」としてテロを鎮圧する中「輪廻更生計画」を知ったイオリは自分の正体を疑い始める。
記憶を思い出したいというイオリの意志を汲みイヅルはイオリを「骨董」へ連れていく。カナギがイオリと会話をし覚悟を問う。
その後「アンティーク」幹部との戦闘。実はイオリの能力を試す試験で、切り抜けたイオリをイヅルが「アンティーク」に誘う。
「アンティーク」に加入したイオリはセンリと対面し自分の過去を知る。そしてセンリは動揺するイオリに学者の救出作戦を伝える。彼らの研究内容は「人の記憶によるAIの学習」であり、その研究にイオリの記憶が利用された可能性が高く、イオリが目覚める前に見ていた夢にヒントがあると言う。
その夢から導き出された場所へ向かうと「Q」が待ち構えていた。センリはイヅルの接脳型AIが外部回線を通じて政府に情報を流していると気付く。
「骨董」の助力で撤退に成功。イヅルは自分を置き去りにするように言うがイオリは拒否し、接脳型AIを逆手に取って政府の裏をかく作戦を提案する。
イオリの作戦は成功し学者を救出。そして政府が企図する「無我計画」という「犯罪者の記憶を使い暴力行為を好むよう学習したLAWSを量産する計画」が明らかに。「輪廻更生計画」はデータを集めるための隠れ蓑だった。
準備期間を経てイオリたちは「無我計画」のための工場を襲撃し「無我計画」を阻止。世間にも「無我計画」が露呈し「アンティーク」は非人道的計画を止めた正義の組織として受け止められる。イオリは安堵しながらも本当に許しを請うべき相手は既にこの世にいないと気付き罪悪感を抱く。
政権が乱れる中「輪廻更生計画」は記憶を消すことなく更生させる制度へと変わり、イオリは「輪廻更生官」として犯罪者たちの自立を支援する生活を送る。そして自身が起こした事件の慰霊碑を訪れ、「自分は何者であるか」から逃げてはならないと己を戒める。
文字数:1798
内容に関するアピール
売れそうだと思った根拠は、最先端技術との付き合い方にキャラの個性が表れる点です。例えばイヅルは「頭は良いが人付き合いが悪い」というキャラなのですが「AIなどの技術に頼りがちで対人コミュニケーションが上達しない」という背景があり、同様に接脳型AIを使うセンリは課題に応じて技術にも人にも頼る性格です。また片目を欠損しているカナギは神経接続型義眼の使用を拒否しています。技術との付き合い方が多様化してきた今だからこそ、こうした差異を描くことはキャラの性格や背景を演出する上で非常に重要だと考えます。ちなみに主人公格のイオリはあらゆる技術に疎い立場なのですが、これは何も知らないところからスタートする読者がこの世界観に馴染みやすいように設定しました。
テーマにつきましても、技術によって「できること」が広がった今だからこそ「何者か」と問うことが大切なのではないかと思い、こう設定しました。
「Anti Q」というタイトルは「Qと敵対するアンティーク」を指しているのですが、機械学習の一種である「Q学習」とも絡めています。Qは行動の価値を導く関数で無限回の試行の末に最適化されるものなのですが、裏を返せば一回きりの試行である人生において決して最適化できないものであり、その最適化に失敗した例として犯罪者、つまり暴力的行為を高く評価してしまう人々を描いています。故に被害者の声も読者に届けなくてはならないと思い、被害者が活躍する「骨董」という組織を登場させました。その名はantiqueの和訳である骨董品が由来ですが、それはantiqueと違ってがらくたを指すこともあり、「有用性で人を判断しない」というカナギの思想を表現しています。キャラごとの犯罪観、及び人生観が表れるのもこの作品の魅力だと思います。
そして各方面に大変申し訳ないことなのですが、これは私が現在カクヨムで連載中の「ソリストの協奏」という小説の続編として構想していたものであり、2050年に発生したAIを用いたテロというのが「ソリストの協奏」で描かれるVRMMOゲームへのプレイヤー監禁事件になります。ライトノベルの人気ジャンルであるVRMMOから異能力バトル風味の今作へと繋げるのはいささか挑戦的とは思いますが、「技術の躍進を前に人はどうすべきか」という疑問を共有しておりとても気に入っている世界観ですので、いずれどちらも完成させるつもりです。これ以上の「売れる長編」の構想を思いつかなかったため、とても悩みましたがこれを提出させていただきました。ちなみに想定字数は20~30万字で、「ソリストの協奏」も同様の規模になる予定です。実作として提出することになる第1章の内容は「イオリが目覚める」ところから「1件目の犯人確保時に『輪廻更生計画』について知ったイオリが、自分の記憶喪失とそれに何か関係があるのではと思い始める」までになります。
文字数:1194