梗 概
第四形態
概要
「朝は四本足、昼は二本足、夕は三本足。この生き物は何か?」、答えは人間。この有名なスフィンクスのなぞなぞに続きがあるならば、そして神は人を神に似せて造ったと考えたとき。人の行き着くところ、人の本来の姿は、時空を超えた場所で足さえつかない、夢の中で空を飛ぶという第四形態なのではないか。一人の少女の幻想は別の少女を引き込んで、もう一人の少女と巡り会わせる。
明晰夢、誰でも一度は憧れたことのある夢のコントロールを題材として、夢の中ではなく現実を生きる意味を問い直す、長編SF小説です。
主な登場人物
綿雲 緋色/丹色(18)
寡黙だが明晰夢の研究事業に熱を入れる、事業家の跡取り娘。中世的な容姿。巻き髪ショートヘア。家族の希望で早世した兄の名を名乗って生活していて自分を押し殺しているところがある。友人を失くした過去がある。
止雷 紫(14)
生活に支障が出るほどの頭痛に悩まされ、第四形態が人の本当の姿という幻想にとりつかれ明晰夢の実験を繰り返し、夢と現実の境がつかなくなる。
流風 碧(17)
助けを求める巻き髪の幼女が夢の中に出てくるようになり、夢に興味を持つ。頭痛クリニックで明晰夢に関する求人を見つけ、応募する。胸に傷がある。紫と顔が似ているが前向きな性格。
展開
第一部 あわせかがみ…明晰夢が社会化する事態ときっかけ
第二部 かがみのくに…明晰夢の実験
第三部 うつしかがみ…実験の顛末、現実を生きていくこと
内容
止雷紫は頭痛により生活がままならない現実から夢の世界で自由に飛べるのが人間の真の姿、第四形態なのではないかという幻想を抱き始め、明晰夢の実験を試みていく。彼女はSNSで交流していた同い年の綿雲緋色と会っている最中に夢と現実の区別がつかなくなったことで亡くなってしまう。紫は親の意向で臓器提供者となる。
緋色は心を閉ざし、実業家の跡取りとして成長していくが紫のいない現実を受け止めきれずに夢の中で紫に会いたいと事業費をかけて明晰夢の研究を始める。明晰夢のトリガーの作成、夢で紫を彷彿とさせる女性の登場する場面を見て明晰夢に入っていくことに成功する。その技術はトラウマを持った子どもの治療に生かされていくが、いつしか会員制サロンに持ち込まれ、サロンで使った者は明晰夢の世界に没入していく。
この事態に緋色は他人の夢に干渉する実験の被験の募集を出し、顔が紫に瓜二つで心臓付近に傷のある流風碧が応募してくる。部下が採用した碧に緋色は当初邪険に当たるが碧との交流を通して心を開き、様々な実験を試みる。
結局実験は打ち切りとなり、明晰夢に取り憑かれた者への外部的手立ては見つからず、夢の事業のせいで会社のイメージに傷をつけたとして、緋色は追放されるも、碧から伸ばされた手を取り、自分の本当の名前、丹色として生きていく決意をする。
文字数:1234
内容に関するアピール
この小説が売れそうだと思った理由は以下の2つを考えます。
1 夢をコントロールすることは多くの人が一度は興味を抱いたことがあると思うので、題材にすることで目を留めてもらいやすいと考えたから。
2 ネットで実体験を持たずして情報交換が容易になり、VRの技術で行ったことのない空間を実体験なくして体験できるようになった今、明晰夢の社会化を想像することは、肉体を持ち現実の自分を生きることと対比になり、興味を持ってもらえそうな話題と考えたから。
この話の底のイメージにはミケランジェロの『アダムの創造』という絵があるらしいと感じています。少女の幻想という設定のタイトルのイメージにはこの絵の空を飛ぶ神の姿を重ねていますが、自分の頭で考えて人の中で生きていくみたいなテーマを、こんがらがった登場人物たちに乗せて書いてみたいのだと思います。
夢については仮説と文献によって構築していく予定です。
文字数:388