ダニ・コスメティック

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梗 概

ダニ・コスメティック

 

―― 顔面加工用のダニが普及し、理想の顔が現実世界で手に入る時代。

芸能人などをモデルにしたダニパックも販売され、人々は手軽に自らを”映える”顔に加工することができた。
大学院へ進学するアヤカ、地元銀行の内定が決まり恋人も途切れないユカ、就活中のアヤノの同級生3人組は、毎日のようにアヤカの下宿マンション”シャンデリア”に集まっていた。

顔を加工する際、既存のダニを一度リムーバーで除去した後に新たなダニパックを浸透させる手段が一般的だが、アヤカはより浸透を早める方法を研究していた。
現在取り組んでいるのは”嗅覚”を発達させた新たなダニが古いダニを感知し、自ら除去することでリムーバーを使わずに新たな顔にしようとするものだった。
実験中にサンプル用のダニがバグを起こし、アヤカは自身の顔を”のっぺらぼう”にしてしまう。ユカとアヤノに助けを求め、人目につかないように隠れながら3人はシャンデリアへと戻る。解消するには、顔に生息しているのっぺらぼうを構成したいる数千匹のダニから、バグの原因となっている一匹の”オリジン”を探し出す必要があった。

オリジンは通常のダニより嗅覚が優れているため”匂い”の生態データに敏感に反応する。その特性を生かし、顔に他人の匂いを放つことでアレルギー反応を引き起こしオリジンの特定を行おうとアヤカは考える。ユカとアヤノのダニから抽出した生態データを元に、アヤカはオリジンをおびき寄せるための香料パフュームを調合する。作戦は成功しアヤカの顔は元に戻る。
しかし翌日のっぺらぼうが出現する事件が報道される。研究室からマンションに戻る際に、アヤカのダニが街中の誰かに寄生したようだった。
ユカとアヤノに連絡すると、2人ものっぺらぼうに感染していた。

再調合した香料パフュームを持っていくことを伝えると、アヤノはそれを拒んだ。
「私はもう私であることに疲れた、これからはのっぺらぼうとして生きていきたい」と2人に伝える。
アヤノは就活がうまくいかない中で、進路の決まった2人に対してコンプレックスをいつしか持つようになり、面接で問われる続ける”あなた”にも疲弊し、自分自身から逃れたいと思うようになっていた。

***
大学を卒業して以来、久しぶりに3人で集まることになった。アヤカはダニを販売する化粧品メーカーの研究職に就いている。
のっぺらぼう騒動はアヤカがダニデータを提供することで収束したが、その後一部の人々から求められるようになった。
自らを”美しさ”で加工するのではなく皆が平等に同じ顔となることが、共感を呼んだようだった。
のっぺらぼう型のダニが正式に販売されるようになると、顔のない人たちは特別なコミュニティ”のっぺ”を作り共同生活をはじめた。
そこにアヤノも所属しているらしいとユカから聞いていた。

久しぶりに再開した3人はそれぞれの近況を語り合い、カラオケで踊ったりと学生時代のように過ごす。
のっぺらぼうであったが、2人からはアヤノが笑っているのがわかった。【了】

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内容に関するアピール

▲テーマについて
インスタ映え/Vtuber/Zoomの顔出しや背景画像など、今は誰もが「みられる」ことを強く意識させられる時代なのかなと感じ「自分を加工する」という設定を使用しました。

▲登場人物について
本作では登場人物の名前をはじめ、歌手のPerfume関連のギミックをいくつか使用しています。
これは上述のテーマについてPerfumeが「みられる」ことを意識してデザインされていると個人的に感じているからです。(デビューから一貫して同じ髪型をしているなど)

▲ダニについて
・生物コスメの一種で、遺伝子組み換えされた人工ダニ。
・従来の化粧品より肌に優しく人体に無害。
・ドラッグストアなどでリムーバー液とセットで販売されている。

文字数:311

課題提出者一覧