赤砂

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梗 概

赤砂

島の南北を貫くのは大河のような国道。この幹線道路を挟み右に人々が暮らす街、左側にはかつて外国の基地があったが今はもう撤退している。基地の跡地にはテーマパークの建設が予定され島は建設によるゴールドラッシュに沸いていた。しかし、いつの間にか海の向こうからそれがやってきて、気づいたときに跡地は侵食されていた。そしてそれはやがて国道を越えはじめる。それでも人々は此処で暮らすことを選んだ。
――「赤砂」とともに生きることを。

パインはかつて跡地を工事する建設会社で働いていた父親と祖母と3人で跡地の向かい側に地区で暮らしている。解体作業中に強烈な赤砂が吹いて足場が崩れ、父親は半身不随となった。遺族たちは管理が甘かったとして提訴し会社は倒産寸前となるが、外資企業SRSが会社を買収し遺族に莫大な賠償金を払うことを発表した。赤砂にはセメント等に混ぜると強度が増す特徴があり、SRSは島にしかない赤砂を独占することを目的としていた。SRSは海岸線に巨大な赤砂吸引機を設置し吹いてくる赤砂が道路の奥へ侵入することを防ぎ、今では住民の大半がSRS関連の仕事に就いていた。父親は半身不随になってから、うわ言を繰り返すようになっていた。パインは父親を植物状態にした赤砂を恨んでいるが、同時に赤砂がなければ島が成り立たないことへのジレンマを抱えていた。

島の出身でないアップルが経営する街で唯一のバーにパインは入り浸っていた。パインはバーでからまれたSRSの職員と国道で喧嘩をした末、基地跡地と道路を仕切る金網の前に倒れた。そのとき基地があったころに親しかった少女を思い出した。彼女は本国へ帰還する軍人の父親に手を引かれながら「逃げて」とパインに一言つぶやいて去った。彼女へコンタクトを取ろうとするが既に死亡していることが判明し、匿名で残していたブログから植物状態の原因が事故ではなく赤砂によるものと理解する。
赤砂の正体はフリーズドライ化した遺体で、大量に吸うと幻覚がみえる効果があることがわかった。SRSは死体を赤砂化し、その埋め立て地として島を使用していた。パインはそれを公表しようと市長の叔父に相談するが絵空事だと切り捨てられ、さらに祖母から一括された。
「一族の恥さらしが。血を汚しやがって。父親とは大違いだね。母親の影響か」
母親は島の外の人間でパインを出産した際に死んでいた。パインはSRSに乗り込むことを決め家を出る。アップルのバーで寝泊まりしながら二人は吸引機を破壊し赤砂の効果を明かすためのテロを計画する。

決行の日、パインはアップルを後部座席に隠しゲートを突破する。入口を警備しているのはパインの後輩で、ルールよりつながりを重視する島の特性を活かして簡単に通過した。吸引機の前に到着すると窓に初恋の少女が現れ「逃げて」と告げる。防砂マスクをはめた二人は吸引機に向かった。砂の凝固剤を吸引機に投げ入れた。モーターの回転音が変わり吸引機が炎上した。中から赤砂が舞う。
アップルはマスクを外し何かをつぶやいていた。パインはアップルを無理やり車内に連れ込み発進する。幻覚が赤砂によること、その原因もアップルは知っていた。彼は死んだ娘に会いたくて島にやってきていた。しかしSRSの管理で居住区まで赤砂は届かず、彼はどうにかして赤砂に近づく機会をうかがっていた。次の吸引機を破壊しようとしたときに二人はSRSに捕まった。

アップルは助かった。一族から戸籍を抜くことを了承すればアップルを助けるという叔父からの取引にパインが応じたためだった。パインはその後、刑務所に収監され死んだとの噂が流れた。アップルは今でもバーを経営している。

文字数:1501

内容に関するアピール

一本の境界線を軸に、左右の異なる二つの環境があり、
それでも結局、その場所は一つなのだという話です。

文字数:49

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