作品プラン
【愛するものを表現できない悲しみ】ステートメント
100枚の中で一番気になる存在はリクガメだった。
遡ること15年前。
私が初めて北アフリカのモロッコの地に足を踏み入れ、イスラム文化の洗礼を受け、異文化というものを全身で浴びていた時の事。
松田聖子が歌っていた、マラケシュの迷路のような町を彷徨い歩き、様々なスパイスやオリーブがピラミッドのような造形で売られているスーク(市場)の片隅に、蠢く小さな何かを発見。よく見るとそれはコインサイズほどの小さなリクガメだった。
そんな運命的な出会いをしてからリクガメが愛しくてたまらない。
わが家の家族となったリクガメの名前はゾリハ。
夏の日は驚く速さで走り回り、日光浴をしては短い手足を伸ばしながら欠伸する姿に癒される。
日本の冬はヒーターの前で人間がスイッチを入れてくれるのをスタンバイしている程馴染んでいる、愛嬌溢れる相棒なのだ。
こんなに魅力溢れる存在なのに、私の手いう媒体を通してしまうと、途端に愛らしさも賢さも、自然の造形美も何もかも何処かへ吹き飛んでしまう悲しさよ。
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