参考テキストは拙訳の『風と共に去りぬ』(新潮文庫1~5巻)です。

le plagiat par anticipationは英語にすれば、the plagiarism by anticipationです。ピエール・バイヤールやウリポ工房が使った言葉だそうで、わたしはひとまず、「先取りの剽窃」と訳しています。

しばらく前にSNSでも話題になりましたが、若い読者に大友克洋の漫画を勧めると、「なんですか、これ。既視感のあるパクリばかりじゃないですか」などと言ったという。

ある時代のある領域の世界観を丸ごと変えてしまうほど強力な作家や作品というものがある。その影響をさまざまに受けた後続の作品が生まれる。しかし後世の読み手は先にそれらを読むため、後からオリジナル作に触れると、むしろそちらの方が盗作のように感じられてしまう。そういう現象を指します。

そこからもう少し意味を拡大し、「時間的に先行する作品が、読者の目を通じて後世の作品に影響を受けること」「影響の時間的転倒」なども含めて考えていただければと思います。

翻訳というのは原作より先に存在することはできない。本質的に(ハロルド・ブルーム風にいえば)「遅れてきた者」です。不可避的に「未来の読み」を被るものです。それが特にオリジナルから時間を隔てた古典新訳であれば、なおさらでしょう。

さらに、遅れてきた者=翻訳者のなすべきこととはなにか?翻訳で読む読者は、オリジナルで読む読者に対してどのような位置にあるか?などについて、考察していただいても良いかと思います。

<運営による追記:今回ゲスト講師より提示された文字数制限は「3000字以下」です。また、今回提出されたすべてのテキストに対するチューターからのコメントはこちらからご覧いただけます。>

課題提出者一覧