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「星のカービィ」彼女の肌はピンク色 ~批評なんかじゃない吐露を添えて~

小学1年生の夏。

僕の心と身体に無数の傷跡が残った。

血だらけになる身体を必死に抑えて僕は目の前の画面から放たれる光の飛礫に釘付けになっていた。

鮮明なカラーを身に纏い縦横無尽にブラウン管を駆け抜けるそのピンク玉は僕の目玉を突き抜けて精神攻撃を仕掛けてきたらしい。

そのまま僕の視線はブラウン管へと固定されてしまった。

隣の兄ちゃんが「やる?」と一言発した。

多分、そんな感じのことを。

僕は声も発せずにただただ2P用コントローラを受け取った。

その重みは普段家で触るコントローラとは1ミリ足りとも違っていた。

 

星のカービィスーパーデラックス

 

それが僕に衝撃を残したソフトだった。

 

 1.なぜこのソフトはここまで衝撃を与えたのか。

 

元々僕は幼き頃からゲーマーで同じくゲーマーであるいとこのゲームコレクションを毎日貪るようにプレイしていた。

そんな中で1番ハマったソフトはGB用ソフト「星のカービィ2」だった。

主人公であるカービィはまん丸のボールにちょこんとした手足をつけたカワイイ存在。

特技は吸い込み。

敵を吸い込んで飲み込むとその敵の使っていた能力をコピーして自分の技として使用することができるようになる。

敵を殺して食べることで自分の能力にするというのは少々グロテスクだが全てはそのポップ空間的表現に纏まっているので何の抵抗もない。

「星のカービィ2」から「星のカービィスーパーデラックス」へ

この進化は凄まじいものだった

それはゲーム機のスペックの差が大きく起因するのだろうがとにかく僕は感動してしまった。

僕の知っているカービィが僕の知らないカービィであることにショックを受けた。

またそれを操作しているのが僕自身ではなく隣の兄ちゃんであることにショックを受けた。

僕の今まで操作していたカービィは偽物だったのか?今目の前に存在するカービィはなんと生き生きと動き回っているのか。

当時ネットなんていうものも存在しないわけで。

急として現前するのだ。

その破壊力たるもの凄まじい。

おそらくこれは目の前で自分の彼女の不倫現場を発見してしまった感覚に近い

自分の彼女が自分とのSEXよりも激しく興奮して喘いでいる

自分はもちろん不倫という行為にショックを受けるのだが、その今まで見たことのない彼女の姿に興奮してしまっている自分もいる

きっと、この感覚に近い

僕はその知っている彼女が知らない彼女になっているその現実に触れてみたいと思う

それは今までの積み上げてきた価値観が根本から覆されるかもしれない。

僕と彼女の絆が色濃く塗り替えられてしまうのかもしれない。

でも今はこの興奮に身を委ねたい。

そんな風に僕は思っていたのだ。

 

2.不倫現場目撃以降

 

僕はカービィが隣の兄ちゃんと性交するのを許せなかった

しかもその隣の兄ちゃんの本命はカービィではなくロックマンなのだ

僕は多分土下座でもしたのかもしれない。

家に着いた時には「開発された彼女」を手にしていた

僕は捲るめく愛のロマンスに心も体も奪われた

今までの彼女とは動きが違う。

まずちゃんと走ることができる!

今までの「星のカービィ2」の頃は二回十字キーをプッシュしても走ることなど到底出来なかった

しかし彼女は走ることができるのだ!

なんたる開発を受けたのだ彼女は

僕はだから彼女を走らせた。

ビビッドカラーな彼女が体を揺らす度に、僕は彼女に釘付けになる。遂に新しい世界へと入ってしまったなと感じる。

僕は彼女と一生添い遂げたいと思った。

 

 3.しかし恋は終わっていくもの

 

僕は彼女に飽きていた

それは仕方がない。スーパーファミコンは今の時代のようにソフトはアップデートされ続ける存在ではないのだ。

時代についていけなくなったゲームたちはその人の中で終焉をむかえていく。

僕はすっかり新しい彼女「星のカービィ64」にハマっていた。

今回のカービィは二つの能力をミックスできる!

な、なんて凄いんだ!!凄すぎる!!

僕は夢中になっていた。

しかしなぜだろう、忘れていた彼女の姿が脳裏をよぎるのだ

「星のカービィスーパーデラックス」彼女の残滓が僕の脳みそを時折愛撫していく

そしてその後も数々のゲームに触れてきた、色々なジャンルのゲームをやった、それでもなお彼女の「スパデラ」のような衝撃に出会うことは一度もなかった。

 

 4.「星のカービィスーパーデラックス」

 

思えば僕は高校の頃まで全ての人生をゲームにつぎ込んできた。

いわゆる「ゲーム脳」というやつだ

ゲームがなければ生きてる意味がない、本当にそう考えていた

学校にいても野球をしていても頭の中はゲーム、ゲーム、ゲーム、全てはゲームなのだ

僕は授業中にノートに落書きをしていた

それはほとんどカービィだった

まん丸で書きやすいというのもあったと思う

しかし僕はカービィに完全に惚れていたように思う

高校に入ると僕はアニメにハマった、それも萌えアニメというやつだ

「らき☆すた」や「涼宮ハルヒの憂鬱」といった当時2000年代真っ只中を駆け抜けた彼女たちに興味を移していくのと反対にゲームにはあまり興味を抱かなくなっていった

しかし僕にはやはり「星のカービィスーパーデラックス」が僕にとっての一番なのだ。

彼女に出会った時の衝撃はもう今後訪れないだろう。

隣にいたはずの彼女、君は僕の知らない間に兄ちゃんに陵辱されていたね、僕はそれを見て興奮したね、僕は君を連れて帰ったね、そのまま君を抱いていたね、運命の出会いっていうのはきっとこういうことなんだろうね

文字数:2210

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