印刷

「WHAT YOU GOT」〜「RUN」にみる、切り取り可能な快楽

 

1976〜2016年までの、ファッションや音楽を中心とした東京のカルチャーを「今夜はブギー・バック」にのせて振り返る、BEAMSの40周年企画「TOKYO CULTURE STORY 今夜はブギー・バック(smooth rap)」[1]。それぞれの時代を彩った、南佳孝、戸川純にはじまる総勢17組のアーティストたちが登場するなか、tofubeatsは、チームしゃちほことSuchmosのYONCEに挟まれるようにして仮谷せいらとともに現れ、MacBook Pro片手にブギー・バックの次の歌詞を歌っている。

〈とにかくパーティを続けよう/これからもずっとずっとその先も/このメンツ このやり方/この曲でロックし続けるのさ〉

 

ブギー・バックから約20年、さまざまな形で現代のパーティを牽引しているといっても過言ではないtofubeats。そんな彼がいま、〈もっとDJ 踊れるやつちょうだい all night/フロア最前でもっと show me what you got〉と歌うのは、2017年にリリースされた「WHAT YOU GOT」だ。この楽曲は、メジャーとなってからの3枚目のオリジナルアルバム『FANTASY CLUB』のなかに収録されている。

KOJI1200の「ブロウヤマインド」をサンプリングし、一躍その名を轟かせることになったと同時に、多くの者にとって心のベスト10入りした「水星」をはじめとする楽曲が収録された『lost decade』(2013年)。藤井隆や森高千里らへの楽曲提供が話題となった「ディスコの神様」や「Don’t Stop The Music」も収録されたメジャー1枚目の『First Album』(2014年)。コラボの幅をさらに広げ、小室哲哉やくるり・岸田繁らとの楽曲も含んだ2枚目『POSITIVE』(2015年)。それらに続く、メジャー3枚目のアルバムとなる『FANTASY CLUB』は、楽曲毎の魅力だけでなく、一枚のアルバムとして聴いたとき、統一感のとれた、流れの完成度が高い作品となっている。〈最近好きなアルバムあるかい?〉(「SHOPPINGMALL-FOR FANTASY CLUB」※『FANTASY CLUB』2曲目)という問いかけではないが、“アルバム”というものが持つ魅力を改めて感じさせてくれる作品だといえるだろう。

そして、先に述べた「WHAT YOU GOT」は、この『FANTASY CLUB』のなかからシングルカットされた楽曲なのだが、まずその繰り返されるトラックが中毒性を孕んでいる。そして、日本のポピュラー・ミュージックでありがちな、Aメロ、Bメロ、サビといった要素の組み合わせから構成されるのではなく、同じメロディーが繰り返されることで、どの部分を切り取ってみても曲として完成されているような印象を受ける。たとえばトラップが入るところまでの2分間ほどを取り出してみても、少なくとも2回の大きな繰り返しをみて取れるし、フレーズで分ければさらに細かい繰り返しから構成されているといえるだろう。また、MVもそれに呼応するかのように、8000円の動画素材3本によって、ひたすら同じ動きが繰り返される[2]。
楽曲後半になると、KASHIFのギター、そして中村佳穂のコーラスが加わっていき、tofubeats自身もライナーノーツにて述べているが、とくに終盤のコーラス、〈show me what you got〉というフェイクの部分は、声質も似ているのか宇多田ヒカルを彷彿とさせる[3]。

この「WHAT YOU GOT」から、同曲のREPRISEなる「WYG(REPRISE)」を挟み、インスト曲「THIS CITY」に繋がる流れはスムーズかつ、アルバム全体のなかでもひとつの山場となっており、「THIS CITY」では、人口増加を願うべく神戸市のために作られたというだけあって、半ば過ぎからH、Cisと上へ上へと転調していくことで高揚感を表すことに成功しているといえるだろう。そしてラストの曲「CHANT #2-FOR FANTASY CLUB」では、神戸の街に鳴り響く汽笛の音がサンプリングされ、外に開かれた形で静かにアルバムは終わりを迎える。パーティから日常へ戻るかのごとく。

これらの楽曲を含んだ13曲、59分からなる『FANTASY CLUB』というアルバムを通して、ある程度の時間的厚みを持った経験を経ることで得られるものがあるのだと私たちに思い出させてくれたtofubeatsは、2018年7月、来たる10月に発売される4枚目のアルバムのタイトル曲ともなる「RUN」を配信リリースした。

だが、この「RUN」は、『FANTASY CLUB』での時間的経験とは打って変わって、一楽曲としては非常に短い。時間にすれば僅か2分に満たない。しかしながら曲として完成しているのは、「WHAT YOU GOT」でみた“切り取り可能”という側面がここでも十分に機能しているからだろう。大きくみても約40秒ごとに切り取ることが可能であるがゆえ、時間的には短くとも曲として完成している印象を受けるし、逆にどれだけでもループさせて聴いていたくもなる。

こうした楽曲が、もし『FANTASY CLUB』のようなテーマに貫かれたアルバムのなかに入り、全体の流れにのったとき、いったいどのような表情を魅せてくれるのか――そんなファンタジーな世界を見てみたく思う。

 

 

[1]https://www.beams.co.jp/company/pressrelease/detail/85参照。

[2]tofubeats、2017年4月27日Twitterより。

[3]http://tofubeatsreblog.tumblr.com/post/168897101490/fantasy-club-%E9%9A%8F%E7%AD%86参照。

文字数:2388

課題提出者一覧