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…提出用課題弄り中

言葉の遺伝子。

レイ・ブラッドベリ 『華氏451度 新訳版』伊藤典夫 訳

 

「携帯電話にインターネット、われわれの身の回りには電子機器が多すぎる。これらを駆逐していかなければならない」

レイ・ブラッドベリが、二〇一二年九十歳の誕生日を向かえるインデビューで発した言葉だ。

彼の『華氏451度』には、本を忌むべき禁制品と捉え、与えられるだけの電子メディアにどっぷりと使ったディストピア社会が舞台だ。主人公モンターグは、禁制品である本を焼却するファイアマンであり、本が近くにありつつも機会的に本を燃やす仕事をして居た。

そんな、主人公は何故本に興味を持ったのだろうか?

それは、本を読む事で得た感受性を惜しみなく表す、何故風変わり(感受性豊か)な振る舞いをして居た一人の女性に興味を持った事が切っ掛けとして描かれている。

つまり、作者は本を読む事は、身の振る舞いにも影響を与える事を示唆している。

本は情報を得る事だけでなく、世界の見方をも変える力があるのだと。

確かに本は、数百年前の情報だけでなく、数百年前の世界の見方を感じとる事が出来る、物である。

今、書籍を始め様々な電子化が進んでいるが、その電子データはHDD/フラッシュメモリ等の物理媒体に保存される、

その物理媒体は衝撃に弱く、電力が無ければ動く事すら無い、不安定な媒体であり。数十年単位なら非常に便利なのは明白だが、数百年後まで残す事を考えると、電子データで大丈夫!と声高らかには言えないのが現状である。

今後数百年後に本の持つ情報を伝えるのは、電子媒体では無く、石や紙等の寿命の長い媒体か、『華氏451度』の最後にあるように、人の脳内へ情報を溜め込み、口伝えでの方法か何かだろう。

 

 

エラーを内包するプログラムのような…

クリスティーヌ・アリソン 編著 『365日のベットタイム・ストーリー』高橋啓 訳

 

 「昔々…」今夜も子供の居る家庭で、物語が開かれる。お気に入りの話は毎夜”ループ”され子供の脳内隅々へとその物語を浸透させる。

小説でありながら、童話、神話、おとぎ話の類は口承する事が前提となっている。

ルーツは各地の口頭伝承が元になっているので、口承するのは当然とも言えるが、本書にはこの前提に乗っかった一つの試みがされている。

それは、世界中の物語を集めるだけでは無く、”作者のオリジナルストーリー”も収められている所だ。

オリジナルストーリーは特別に判別が付くような目印(後ろのページにある作者名逆引きでのみ判別可能)が付いてるわけでも無いので、意識せず読み進めると、どれがオリジナルストーリーか全く判別がつかない。

読み手と聞き手は意識する事なく、作者の話を昔話の一つとして脳に記憶して行く。

昔話を正規とすると、作者の話は偽物、プログラムで言うエラーのような存在だが、

このエラーが何度も何度も繰り返し伝えられた時、エラーと見なされない正規の状態になる、作者に興味が無くても他の興味と混在させる事で、知らず知らずに読み聞かせられる面白構造だ。

『華氏451度』の主人公が「本に興味無い人が、耳を傾けると思っているのか?」と本を記憶してる人々の一人に疑問を投げかけている、その答えを一部抜粋する

もしそうならなければ、待つしかないだろうな。本を一語一語、口伝えで子どもたちに伝えて行くんだ。そして子供たちも待ちつづけながら、ほかの人間に伝えて行く。

彼の答えのように、口伝えで情報を絶やす事さえ無ければ、今その情報に興味が無い人達が居ても関係が無い、未来に出てくる、聞く耳を持つ人を待てばいいだけなのだから。作者のオリジナルストーリーがいつか昔話になるその時まで。

 

 

高次元への影響。

鈴木光司 『ループ』

 

ホラー映画「リング」は二つの続編(正式な完結作として)がある、一つは後日談である「らせん」、もう一つは完結作である「ループ 」だ。

本書では「リング」「らせん」の世界はシュミレートされた仮想現実世界であり、

本書で描かれている現実世界は、今、「リング」「らせん」の仮想現実世界から来た呪いに侵食され始めている状態であると、

状況が説明されていく、この余りにSF的な内容の為、「リングシリーズ」のホラー性を望む、

消費者と製作者側の思い(映画化にした際にどうしても登場人物がネタバレになってしまう構造もある)により、本書は未だ映画化の話しは出ずに、小説の状態を維持している。

「リング」の”呪い”は仮想現実世界のプログラムコードの一部に過ぎず、プログラマーの予期しない挙動の為、

「リング」の”呪い”はエラーに過ぎない訳だが、そのエラープログラムが、現実世界へ呪い(エラープログラム)を広げている。

本書では、呪いとはエラープログラムであり、次元を超越したコンピューターウイルスとして描かれている、また、「リングシリーズ」に対するエラーのような振る舞いによって、現実の社会に於いても、映画化をしにくくしている点で次元を超越して影響を与えているとも言える。

エラープログラムの振る舞いは、組まれたプログラム全体の予想を超えた振る舞いを行い

”高次元”にまで与えているのだと言える。

全体を超えた振る舞いは、その次元だけでは無く”高次元”への影響が起こりうるのだ。

文字数:2122

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