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三角関係の作り方覚書−ケース1、誘惑

 

「三」はあまりにも、知覚の及ばないところにまでびっちりと忍び込んで、重なりすぎて、下層にいる老齢の「三」が見えないほどに繁殖していた。であるから、批評をするには必要と思われる最低「二匹」の「三」を捕まえるのに大変苦労した。そのため、本稿は「三」について、様々な文芸、少なくとも映画、小説、漫画の「三」つのケースを横断する論考として延長されることを想定し、その第一章として記述する。

 

第一章

 一、三角関係について

 

三角関係は、一対、一対、一の関係ではなく、二へ一が関係するときに発生する。

底辺をなす二つの点は元々結ばれており、一線となった二に対し、もう一点が線上外の線と共に認識できる位置に登場することによって、三角形をなしているようにみえる。一線は平面上では一本の直線がイメージされるが、本稿では、空間上にそれをイメージする時、円状に、つまり一点から二本の曲線が出ている状態でそれぞれに接続されていることをイメージする。同様に、三角関係をもたらすもう一点は、円上外、円の面上外に登場し、円と関係する時、その総体は円錐をなすイメージである。そしてその円錐の各線は、任意の柔らかさを持つ。

また、三角関係は、三点全てが人間であることをイメージするが、ここでは、円をなす二点の他に登場する一点は、人間であることの他に、事件や物質、現象であることもしばしばあると仮定する。

円をなす二点の関係は、カップルやコンビ、「2娘1」のような二人一組の友人関係、テニスのダブルスのように共闘する二人組、ドラマ「相棒」の杉下右京と亀山みられるバディのような、二人で一つ、の関係性の中に適応できるが、ケース1では特に「セカイ系」にみられる、主人公(ぼく)とヒロイン(きみ)を中心とした小さな関係性(「きみとぼく」)ような、平たくいえば惹かれ合う関係性、追い追われる関係性を中心に話を進めたい。

「きみとぼく」の関係性を<セカイ>とするならば、<セカイ>の完結した円が、突如登場した一点によってたわむ時、突如<セカイ>の中の時間の流れはうねり、その一点に捕らえられた<セカイ>は、川の水面にしなだれた木の枝に引っかかったシャツのように流れに触れてはいるものの止まってしまう。

一点の登場すなわち一見の静止、これが文芸においては<セカイ>の物語を紡ぎ始める瞬間だ。静止したままでいたい誘惑にかられ、静止から逃れるべく抵抗する<セカイ>は、いずれ、ほつれ、洗われる。

 

 

 

 

<セカイ>と世界の関係性は、<セカイ>という一見一つにみえる二点と、その関係をほうっておいてくれない一点−人間・物質・事件・現象、すなわち拡大すれば世界との三角関係なのである。現実においても物語においても、表面張力の効いた池の水面に投げ入れられた石と同様<セカイ>の意図しない一点がもたらす、大方不条理でネガティブな関係性のことである。

 

二、誘惑

『LOVE 3D』は、アルゼンチン、ブエノスアイレス出身の映画監督ギャスパー・ノエによる3D長編映画である。世界では2015年に公開、日本では2016年4月1日に公開された。製作・脚本・編集・出演に監督自身が携わっており、過去作『アレックス』『エンター・ザ・ボイド』に続き、映画表現における性のタブーを破り、公開後に波紋を呼んだ作品である。

 

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