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脱・民主化アイドル批評宣言

 

■アイドル総選挙でストレス増大させる婚活サラリーマン

 

数年前、婚活アプリで会ったアラフォー・サラリーマンがAKBグループのヲタだった。数回目に会ったとき名物飲食店の行列に並びながら、その男性は推しているメンバーについて教えてくれた。彼女はAKBに本籍をおかず地方グループのトップメンバーだったようだ。こんなドラマに抜擢されて才能があるとか、総選挙の投票数が増えているとか饒舌に語るアラフォー男性。印象深かったのは、せっかく好きなメンバーの話をしているはずなのに、男性はイライラしている様子だったことだ。

 

男性のいらだちは、総選挙の結果がよくても必ずしもいいポジションを与えられないところから生まれていた。営業成績がよいのに昇進しないサラリーマン人事にイライラしているのと何ら変わらないではないか...。サラリーマン残業に疲れ果てその疲れをいやしてくれる、元気をもらうためにアイドルを見ていたはずが、本業の仕事よりもアイドルを見てストレスを増大させるとは本末転倒だ。

 

■ファンのクレームでできた総選挙システムにより、アンチが増大

 

AKBグループの総選挙はてっきり秋元康氏のアイディアだと思い込んでいたが、そうではなかった。自分が推しているメンバーがなぜ選抜グループにはいらないのか、不満をもったファンたちがAKB事務局にクレームをたくさん入れるようになり、事務局の業務に支障をきたすまでになったらしい。AKBのヲタでありながら、自分が推してないメンバーを批判する人は「アンチ」と呼ばれる。そんなアンチのクレーム対策として「総選挙」システムが完成した。秋元康氏や所属事務所、電通やテレビ局のお偉いさんに、何らかの理由で気に入られた子がAKBのセンターになるのではない。CDを買うとついてくる投票券にファンが書いた名前の数で次のシングル曲のセンターが決まるようになったのだ。

濱野智史氏「前田敦子はキリストを超えた」は、「秋元康率いる『独裁体制』に対し、アンチは批判の声を突きつけた。その結果として実現した『民主化』が、まさに総選挙」と語っている。

 

AKBグループメンバーが票数を集める「選挙活動」の方法も具体的に決まっている。今までのアイドルと同じようにテレビや雑誌などで活躍して好感度をあげるだけでなく、握手会でていねいにファンとコミュニケーションをとったり、小さい会場のコンサートで一生懸命努力している姿を見せたりすることで、ファンの口コミで人気をあげていく。今回の選挙では◎◎ちゃんを当選させてあげよう、と組織票を獲得していくのだ。

 

やくざまがいの事務所やコネ・金・権力にまみれている(とお茶の間が信じている)アイドルが、「民主化」となれば聞こえがいい。アイドルが本人が努力すれば票数があがり、センターをねらえる、アイドルが進化したと一見思える。

 

しかしどうだろう。実際は先述の婚活サラリーマンのように、総選挙のせいでストレスを増大させている人も多い。総選挙の順位で決まるのは、次のシングル曲で歌うセンターと選抜メンバーだけである。コンサートでの他の曲での立ち位置やテレビや雑誌などの仕事は結局今まで通り、事務所が売りたいと考えるメンバーがアサインされるのだ。今までのアイドルグループであれば「オレはセンターの顔も態度も嫌いだが、事務所やプロデューサーにゴリ推しされてるからセンターなんだ。むかつく。」と、アンチ・ファンは運営側を憎めばよかった。

 

しかし総選挙で票数を獲得したという数値的な結果があるがゆえに、票数があるのになぜ事務所は彼女を推さない?と怒りが増大してしまう。民主化されたという期待が高まるだけに、独裁体制への不満が高まる。民主化により、アイドルファンは不幸に陥ってしまう。

 

■選挙をやめたらハッピーだ

 

どんなに民主化を進めても、組織にはもぐらたたきのように独裁者が生まれてくるアイドルだけの話じゃない。サラリーマンだって、あの人は優秀だと平社員の多くが思っている人が昇進するとは限らない。独裁者である部長に嫌われれば左遷だってする。。所詮、世間なんてそんなもんだ。たたいてもたたいても湧いて出てくる独裁者のアンチを続けてストレスをためるより、民主化制度からはずれてストレスフリーでアイドルを鑑賞することをぜひ提案したい。

 

■旧体制・独裁者まみれのジャニーズJr.

 

男性アイドルに特化したジャニーズ事務所に、選挙制度がうまれる気配はまったくない。CDデビューしていないジャニーズJr.は、ジャニーさんの気まぐれで急にピックアップされてミュージカルの重要な役をまかされたり、主演をしていた数年後には何列も後ろで踊らされたりする。公演会場で各タレントの生写真が売られて、売上枚数でだれが観客のなかで人気があるのかは事務所はわかるはずだ。しかしそんな順位とは関係なくジャニーさんの直感でタレントはアサインされ続ける。そんな独裁政権へ不満を持つジャニヲタに気付き、アイドル雑誌「MYOJYO」では読者の投票で好きなジャニーズJr.ランキングを企画してきた。しかしこのランキングで何年も連続で1位になる子がいても一向にCDデビューしない。ジャニーさんが独裁者であることはわかっている。ファンがいくら批判してもその声が届かない。ファンもJr.もそんな諦めのなかで、公演を続けていく。

 

■ファンは無視、同僚同士で遊び散らかすジャニーズJr.の自由な身体性

 

握手会もテレビに出る機会もないジャニーズJr.が唯一できる選挙活動といえば、コンサート公演中にファンサービスをすることだ。うちわに「投げCHUして」と書いてあれば投げキッスをしてあげる。すると、ファンではなかった女性がそのJr,に「落ちて」応援してくれるようになるしくみだ。Jr.は主役タレントのバックで決まったふりつけで踊ることが責務であり、ちょっとした空いた時間…数秒で花道を移動する時間などにファンサービスをして努力をしていくのが定番だ。

 

努力して結果を出しても夢はかなわない(かなうこともある)こんな状態にさらされ続けてきたジャニーズJr.。もはや、ファンに気に入られようとする「選挙活動」をあきらめ、自分自身が楽しむことに特化しはじめたJr.も現れた。関西ジャニーズJr.のDK(男子高校生)組という人たちだ。

 

彼らはファンサービスに使える貴重な自由時間の大半を、Jr.同士で遊ぶことに費やしてしまう。曲と曲の間の数秒、ファンにメモ向けず、Jr.同士でカメハメ波を出し合ったり、釣りをしてどちらかが釣られたり…とふざけてじゃれあっている、高校の朝礼時間に校長先生の話もきかずふざける風景を思い起こさせる。もしかしたら、学校でもこんな風に遊んでるのかなあとジャニヲタの妄想をかきたてる。彼らがファンを無視して遊んでいる姿をジャニヲタは双眼鏡で見つけては鑑賞する。選挙活動から逸脱した自由な風を感じる。ファンはそんな姿をみてストレスを解放するのだ。

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