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とある私塾の禁書目録

批評再生塾って楽しいの?

★︎大山:こんにちは⭐︎大山結子⭐︎です。友人にお願いしてお話ししています。

★Is714:年齢や性別、宗教や国籍などで先入観を持たれたくないので、この名前にしています。まず批評再生塾って面白いの?新芸術校は黒瀬さんの意見や「フクシマ」に寄せる意図が見えすぎて、正直、微妙なのですが。

★︎大山:新芸術校は「黒瀬塾」ですからね。名前が中立っぽいだけで。

★Is714:外から見たら取り巻きだと思われている人でも、中には「黒瀬キモい」って言ったり思ったりしている人いるし。それでもいい!と思うから内部生でいるわけですが。その辺り、批評再生塾ってどう?

ゲンロン社によるスクールは、新芸術校、批評再生塾の2つが並んでいる。
ゲンロン社によるスクールは、新芸術校、批評再生塾の2つが並んでいる。

 

★︎大山:毎回まいかい異なるゲスト講師のお題に答えている形なので、佐々木塾長の思想が全面に出ている感じはありません。そもそも批評自体が、過度に没入しすぎないとか、常にアウェーでいるスタンスでやっていく生業…みたいな。どちらにせよ、新芸術校での黒瀬主任講師の思想やロジックに違和感を持つ必要はないと思いますが。数ある講師、ないし先輩の一人なだけですし。失敗があるなら、美術系の学生は圧倒的に女性が多いのに、新芸術校では男女比が半々くらいで、しかも男性陣が「ゲンロン」のノリと同じでホモソーシャルを作っていることでしょうね。それにはミソジニーや女性蔑視、軽視がデフォルトで含まれているので、半数である女性はドン引きするのが正常。それでも大丈夫な女性である私が異常なの。その点で耐えられない人は苛立ってしまう。では批評再生塾が面白いかといえば、とても楽しいですよ。批評を読み書きする行為自体がそもそも楽しい。人間関係も、ホモソーシャルというより、純粋な勉強会の延長でしかないと感じています。飲み会があっても佐々木塾長やゲスト講師が毎回いらっしゃるわけでもないので、寂しいくらい。

★Is714:講師が輪に入り過ぎていないのですね。

 

 

なぜ中島梓なのか?

★Is714:『ゲンロン1』も、女性はあまりいないみたいですけど。ゲンロン社の今までの出版物も、全部を把握していないけど、登場するのはほとんど男性みたいで…。

★︎大山:その指摘は「ゲンロン友の会」の中でも多いのです。そう知っているから、『昭和批評の諸問題 1975-1989』の中で、ゲンロン社長でもある東さんが中島梓を評価しているのかなぁ、とか。

★Is714:どこでしたっけ…

東:彼女はのち『コミュニケーション不全症候群』(九一年)という先駆的なオタク論も出版し、他方でBL文化を立ち上げる仕事もやっている。中島梓が女性だということ、栗本薫としても活躍していたということが自体を見えにくくしているけど、大塚英志と並べて論じられるべき存在でしょう。

…褒めている、性別をアピールしながら。裏返して、批評の世界で女性の書き手は大塚英志と並べて論じられにくいのかな?

★︎大山:批評をやりたがる人は大抵、男性だって聞いたことはあるけど。批評やっている人は早稲田に集結するイメージがあるのですが、批評界隈にワセジョはいないのかも。

★Is714:ワセジョっていう呼称が既に差別的な気がする。性を消費しているような。大学生と呼ぶべきところ女子大生と呼んでしまうのを更に悪化させた感じ。中島梓がBL文化の立ち上げをしたようだけど、BLファンを腐った女子って呼ぶのも失礼なのではないかな。ご存命だったら中島梓が「腐女子」という呼称について論じていたかもしれませんね。

★︎大山:ワセジョとか言ってすみません。最近『おそ松さん』(2015年〜、藤田陽一監督)を観ていて「ミソジニックだなぁ」と感じたことがあったのですが、同時に「世間はミソジニックなのが当たり前だから諦めよう」って思ったのですけど、また諦めていました。年表をざっと見て、男性の名前が多いですね。はっきり女性の名前は上野千鶴子くらいかな。

★Is714:吉本ばななって、一瞬わからない。(笑)

★︎大山:嘘のような本当の話ですが、私ずっと、奈良美智さんのお名前を、「みち」と読んで女性だと思い込んでいました。

★Is714:それはアウト!

 

 

 

年表から見えるもの

★︎大山:1981年のところに、栗本慎一郎『パンツをはいたサル』ってあるじゃないですか。その3年後に、『ドラゴンボール』(鳥山明、1984年〜1995年)が始まって、ヒロインの名前が「ブルマ」つまりパンツなの。これ絶対に繋がっていると思うのだけど。

★Is714:よく気づきましたね。それでドラゴンボール批評が書けるのでは?

★︎大山:書ける、書ける(笑)。あとは、村上龍が登場したのが、中島梓と同じくらいの時期だってこと、年表を見てやっと気づきました。自分が読んだ時期が離れていたから、村上龍の登場ってもう少し後かと勘違いしていて。私、勘違い多いですね。

 

『ゲンロン1』と付録の年表。 本を持ち替える手間が少し面倒
『ゲンロン1』と付録の年表。
本を持ち替える手間が少し面倒

 

 

★Is714:と言うか、大山さんは元から読書される方なのですね。美術の人ってあまり本を読まないと思っています。

★︎大山:美術に限らず全体的に本を読まない時代になっているのでは。体調が良くない時期の私は本を読まないでいたのですが、本を読まないことで支障はなかったので、逆にそっちが、本を読まないみんなという危機的状況を炙り出したように思います。

★Is714:自分はこの年表にある本、あまり知らないです。有名な小説は流石に知っていますが。

★︎大山:むしろ小説や小説家が有名すぎるのではないでしょうか。東京芸大生と話していた時、私が「村上隆」と言ったら、相手から「ああ、小説家の!」って返事されたことがありました。その時の私はギョッとしたのですけど、その方は音楽学部の院生だったので、美術が専門じゃないと、村上某と言ったら小説家の村上になるのは、実は当たり前でした。私だって日本一有名な指揮者やヴァイオリニストなどの名前、なかなか出てきませんから。

★Is714:小説が映画化されて街頭の広告になったら、本を読むかどうかや専門は関係ないので、小説家が有名すぎるのはそうかも知れません。

★︎大山:年表なだけあって、有名な本ばかりだから、あちこちにずっと昔に読んだ本があって、しみじみと懐かしくなります。年表ページは見にくいけど、いちばん楽しいな。

 

 

 

 

対話形式の功罪

★Is714:この『昭和批評の…』ですけど、コラムみたいに短く区切ってあるから、さらりと軽く読み進められますね。一人の発言ごとに分割して読んでも、内容が濃いから面白い。

★︎大山:そうですね。むしろ細かく分割して、自分は休み休み読む方がいい。私、対談や対話形式の読み物ってあまり好きじゃないのです。一気に読んでもニュアンスが掴みにくいから。話しているその場の微妙な空気も含めないと、結構分からないじゃないですか。

★Is714:でも、これは会話の空気が分からなくても内容に影響はないでしょう。東さんのコメントだけ抜粋して読んでも面白いですよ。

★︎大山:それは同意します。東さんは話芸スキルが高いから対話でも面白いのですよ。同じような内容を誰か一人の書き手がまとめて、歴史を振り返る読み物にしてくれる方が私の好みなのですが、これは対話形式でも面白く読めました。内容もわかりやすいし。

★Is714:対談や対話だと、個人のよほど独特なエピソードがあるか、インタビュアーの力量が高いか、出演者の意見が面白いかでないと、途端につまらなくなる。

★︎大山:じゃあ本稿があまり面白くないかも知れません!

★Is714:ごめん。じゃあ意見を言いますが、対話形式にする必然性ってどこにあるの?大山さんがおっしゃったように、同じ内容を誰か一人が一括して書いてもいいし、その方が普通じゃないのかな?岡倉天心の『東洋の理想』(1986年、富原芳彰訳)のようにすればいいのに。

★︎大山:媒体が雑誌だから、他の記事と差異をつけて、雑誌の流れに緩急をつける必要があったのではないかな?それ以外に思いつかない。雑誌の前半の方には対談、対話や、短めの記事を置いた方が、構成の都合がいいのでしょう。

★Is714:巻頭カラーのようなもの?

★︎大山:そうじゃないですか?読者の目を引いて、かつ手軽に読める雰囲気が必要なのです。手軽に読めるという点では本稿はバッチリです!

★Is714:ライトです!専門知識いらないよ!

 

 

 

 

読者の目を引く

★︎大山:批評再生塾の最初に課題が、東さんによる「ヌードグラビアとか漫画とともに掲載される見開きコラム」のイメージで、というものだったのです。結局は一括した文章らしくしたのですが、本当は、小さなコラムに区切って、太字の小見出しをたくさん作って、できたら挿絵も入れたかった。でないと読者の目を引けないし、ヌードグラビアや漫画に負けてしまうじゃないですか。

★Is714:その大山さんの、拝読しました。今なら挿絵を掲載できるから、そのくらい描いて載せたらいいのでは?対談ですし、『昭和批評の…』でも話者の顔写真などが挿絵として掲載されています。

★︎大山:私のPhotoshopとペンタブが死んだので諦めました…。Is714さんは顔写真NGでしょう?

★Is714:すみません。顔が出ると先入観を持たれてしまうので、自分のポリシーでNGです。

★︎大山:大澤聡先生の課題では、美術で言うところの「見せ方」の課題なのかなぁと思うのですよね。批評であることも前提ですが。

★Is714:大山さんの得意分野じゃないですか、頑張ってください。

★︎大山:どうしよう…。見せ方に工夫が必要なのだなっていう部分は、誰でも気づくと思うし、気づけば全員がクリアーできるのでは。

★Is714:「見せ方」で見たら、『昭和批評の…』はとても綺麗なのではないでしょうか。特に目新しいことをしているわけではないけれど、丁寧なレイアウトというか。校正っていうのかな。

★︎大山:用語は私も詳しくないのですが、『ゲンロン1』は全部、そういうものが綺麗だと思います。だけど、もう1mmほど全体的に文字の位置が下の方がいいような気もしてしまう。『思想地図β』はその点が完璧でした。何も気にならない匠の技。

★Is714:意識したら、自分も、もう1mmだけ画面を下げた方が美しいようにしか思えなくなってきました。

★︎大山:実際に1mm下げたら、「上げたがいい」と思うのでしょうけれど。私が話すとこういう話題ばかりになりますね。

★Is714:ところでこの会話は、批評になっているのかな?

★︎大山:いや、よくわかりません。感想を言っているだけですからねぇ。開き直ってエッセイにしようかとも思いましたけど。でも対話したから!

★Is714:課題に対して素直なのですね。

★︎大山:それが吉と出ればいいなぁと切実に願っています。なんというか、寒くて遠いのに、私の課題のためにいらしてくださって、Is714さん、ありがとうございました。

 

 

2016年1月6日

オフィス大山結子

構成:Is714

 

 

 

文字数:4510

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