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好きって最高だよね

愛は祈りだ。僕は祈る。僕の好きな人たちに皆そろって幸せになってほしい。それぞれの願いを叶えてほしい。温かい場所で、あるいは涼しい場所で、とにかく心地よい場所で、それぞれの好きな人たちに囲まれて楽しく暮らしてほしい。最大の幸福が空から皆に降り注ぐといい。僕は世界中の全ての人たちが好きだ。
舞城王太郎『好き好き大好き超愛してる』

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「おもしろき こともなき世を おもしろく」するためには、どうしたらいいでしょうか。現代日本の状況確認から始めます。

 

 

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村田沙耶香『消滅世界』(2015年/昭和90年)の単行本帯には「日本の未来を予言する圧倒的衝撃作」とあり、批評家・佐々木敦は文芸時評で本書の世界を「近未来の日本」と記しました【*1-1】。しかし実際には未来ではなく、現代/昭和90年代を描いているといえます。

『消滅世界』の舞台は人工授精の研究が進み、ほぼ全ての妊娠が人工授精で行われるようになった日本。「繁殖に交尾は全く必要なくなった」が「昔の交尾の名残で恋愛状態になる場合もある」。「キャラクターに対して恋愛状態になる場合もあれば、ヒトに対して恋愛状態になる場合もあるが、根本的には同じ」とされ、家族を形成するための結婚制度は残っているものの、夫婦間の交尾は近親相姦と称され禁忌となり、各自が別々にキャラクターだったりヒトだったりに恋愛しています。夫婦が現代社会の一般的な兄弟姉妹に近い関係性となっており、そのことは作中でも主人公が「夫は、放っておけない妹だ。」などと考えている場面などから示唆されます。

この作品がどうして現代/昭和90年代を描いていると言えるのでしょうか。

*1-1:http://dd.hokkaido-np.co.jp/cont/bunngeijihyou/2-0028026.html

 

 

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You、髪切っちゃいなよ。的な啓示でもあったん? て気軽には聞けんな~っちゅう目算4~5年分の長さを、職場で隣席の二見さんがバッサリいってもうたんは2016年1月19日夜のことらしく、翌20日おそるおそる様子見の周囲に対し「わたしは何があろうと応援していこうって決めてん。そしたら『よし、切るか!』ってなって」と言い放ち、晴れやかな顔で仕事に取り組む姿にわたくしは一抹の不安を覚えまして。SMAP解散するん? しないん? ちゅう報道が出まわった初日[*2-1]なんぞは、ゆらゆらした仕事ぶりで帰り際「今夜、決定的な公式情報出たら明日どうなるか分かれへん。そしたらすまん。先に謝っとくわ」て言い残して退社してらしたんで、その頃に比べれば安定感あるけど信仰段階が進行しとる気配もあり、気にせずにはおれんやないですか同僚として。やからわたくしの方から「実際、最近どうなん?」と口火を切ったところ「ホント5人ともかわいそうで。メンバーは誰も悪うないんよ。もうね、9割9分ウソやからスポーツ新聞は。日本揺るがす案件やし1週間以上連続で1面[*2-2]とか世間的にしゃあないとはいえ、情報不確か状態やのに断定口調でウソ書いて不安煽るん最低やからさ、ウソ情報にお金払うてもうたんホンマ悔しいわ。でも今回の件でファンの交流更に深まってん。木村君裏切りとかゆう記事はまあウソやからさ、トレンド入っとったしみんな見とるやろけど『#私の知ってるsmapの4対1』ちゅうてメンバーのうち1人だけダンスの振り間違えたり衣装違ったりのキャプチャ貼ったり、『#2topが不仲らしい』て木村君と中居君の二人がいちゃいちゃしてる画像を流したりしてね、不仲でこれなら仲がいいって何なん? そんなん目にしたら卒倒してまうわ~てな。ははは。そんでそれらのリツイートを何千、何万回してTL埋め尽くして、かわいい画像目にする機会増えてみんなほっこりやんね、毎日『こんなん持ってたか~』、『これあったわ~』てなるしで笑顔笑顔。それと出演番組やCMの継続お願いメールは毎日しとって、継続決定したら感謝メール、幸いまだ何も打ち切りになっとらんけど油断は禁物やから今日も送るわ。親切な企業担当者はお礼メール返送してきたりしてこちらの好感度上がるしでよかったやんね。まあ結果的にね、割く時間は増えて今は充実しとるっちゅうか。あとはお金ある人は日本コロムビアの株買うて、そこまでお金ない人は『世界に一つだけの花』のCD買えるだけ買うことになっててんな。オリコンのデイリーも3位[*2-3]まで来とったし、22日にはCD増産分が店頭に並び始めるから、また行って買わな。や、客観的にみて良い曲なん間違いないし、みんなも1枚ずつ買うてくれたら嬉しいけど……」と怒涛の言説でして、わたくしも「そうなんや~」ちゅうてTwitterでハッシュタグ検索してみたり、CD1枚買うてしもたりもして、呑気に応対しとったら翌々日あたりに追い打ちでリスト渡されてそこには「コカ・コーラ ゼロ」、「アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ」、「昆布ポン酢」、「1本満足バー」、「北海道十勝スマートチーズ」……とSMAPのメンバーがCM出演している商品一覧があり「特に買いやすいやつマーカーしといたから。まあ無理に買ってとは言わんけど、似た系統の商品買うかもっちゅうとき思い出してもろて、応援する意味でね、このリストの方を選んでくれたらさ」ちゅうて、その愛に圧倒されますよね。

昭和91年1月28日

*2-1:2016年1月13日。
*2-2:最長12日に及んだ。
*2-3:オリコンが発表するデイリー CDシングルランキング。SMAP『世界に一つだけの花』のリリースは2002年だが、SMAPの解散危機報道の後から売り上げが伸び始め、2016年1月22日・24日には1位になった。

 

 

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二見さんは既婚で、その夫はいわゆるジャニーズ系では全くありません。彼女自身、独身時代から職場の飲み会などで結婚の話題になると「結婚相手には(ジャニーズ的な要素を)全く求めていない」と主張していました。ライター・北条かやは、28~34歳までの独身女性たちのインタビューと各種統計資料から現代の女性の「結婚」についてまとめた著書【*3-1】の中で、「実際にジャニーズが好きなアラサー独身女性たちからは、『ジャニーズと現実の男性は全く別』との答えが返ってきた。」、「(ジャニーズが好きだと言うと、ジャニーズ系の人と結婚したいと思っていると)よく誤解される」と書いています。

同様の主張を、私たちは別の場所でも目にし、耳にしたことがあるはずです。アイドル好きや、宝塚好きの人たちが、あなたの周りにもいませんか。または、あなた自身がそうでしょうか。

そもそも「恋愛(=Love)」という概念が日本で生まれたのは明治時代からです。その言葉が「結婚」と等号で結ばれるイメージの発生は更にその先。昭和初期の「産めよ殖やせよ」の国策と無関係ではないでしょう。「恋愛=結婚=幸せ」は、古代から連綿と続く絶対的な価値観ではないのです。「恋愛」と「結婚」が別だという考え方は、現代日本で特別なことではありません。オウチーノ総研が2015年に既婚男女863名を対象に行った「『恋愛と結婚』に関する実態調査」【*3-2】では72.7%が「恋愛と結婚は別」と回答しています。

「恋愛」と「結婚」を切り離した世界は、「未来」ではなく「現代」の一側面です。

また、『消滅世界』は後半、実験都市・千葉に舞台が移ります。千葉では『楽園(エデン)システム』として「コンピューターによって選ばれた住民が一斉に人工授精を受け」「出産された子供は、そのままセンターに預けられます」。全ての子供が「子供ちゃん」と呼ばれ、全ての大人が全ての子供の「おかあさん」となっています。

高田かや『カルト村で生まれました。』【*3-3】は、19歳になるまでカルト村【*3-4】で過ごした著者が「子供と親が離れて、子供たちは一か所に集めて生活する」小学生時代の様子を、淡々と回顧する内容です。Twitterや読書メーターで目にする感想として「現代の話と思えない」というものがありますが、現代の話です。「消滅世界」の実験都市(のような世界)は現代日本に存在しています。

『消滅世界』の作中で人工授精の研究が進んだきっかけは「第二次世界大戦」によるもので、「もし、人工授精の技術がここまで発達しなかったら、人類は今でもセックスをして妊娠していたと思いますか?」という問いかけに「まあ、そうでしょうね。」と応える医師も登場するし、「掃除はルンバだけでOK」といった描写もあることから、著者も未来というより「現代」日本(のパラレルワールド)を描く意図があったのではないでしょうか。

昭和は64年で終わったため、「昭和90年代」という時代は現実には存在しません。「昭和90年代」という言葉にはパラレルワールドのイメージがつきまといます。このことからも『消滅世界』は現代/昭和90年代を描いていると言えます。

そして、「好き」の多様性を描いた物語とも言えると思うのです。

*3-1:北条かや『本当は結婚したくないのだ症候群』青春出版社、2016年。
*3-2:http://corporate.o-uccino.jp/research-o/20150527-2.html
*3-3:高田かや『カルト村で生まれました。』文藝春秋、2016年。
*3-4:作中で明言されないが、おそらくヤマギシ会。

 

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岡田は後輩やけど院卒やから同い年やし、野球・競馬・ゲームと話題も合うし、「俺は升本さんしか(職場で仲良い人)いないからなあ」なんて人によっては告白と捉えますよ的な台詞を平気で口にしてくるしで、言うたら幼馴染ポジションというか攻略難易度は相当低いんじゃなかろうか。昼飯食ったりキャッチボールしたりと接触回数も多いので順当にいけばこのルートに進むんやろうとほくそ笑んだのは半年ほど前のわたくし。きっかけは「カソウスキの行方」【*4-1】の再読やったんですけど、カソウスキは仮想好きで、同僚を好きになったと仮定して日々を過ごすことで人生に彩りが加われば、みたいな話で、これを自分もやったろと思うて、それには同僚から相手を探すことになるんやけど、普通に行うと不倫の二文字がちらつくんで相手を同性(男)とした訳です。

前述の岡田は既婚でして、わたくしも既婚なんで、まあ仲良くすることにリスクがないちゅうか、こないだも二人ランチ中に岡田が何たら言うアニメのヒロインが何故好きかという話をしていて、それが先日の研修で私が受けた他己評価と合致している部分がありまして、こいつまた遠回しな好きアピール始めよったわなんて、心中にたにたしていた次第で。

恋愛って楽しいし幸福感半端ないですから恋愛してるときの気分を味わいたいと思うんは快楽を得たいちゅう人として自然な欲求なんすよ。みんな恋愛したらいい。愛は地球を救う。うるせーばーか、てめえは妻と恋愛しとけって話ですけど「恋ははじまるまでがいちばんいい」【*4-2】という言葉もあります通り、恋愛って成就するまでが最高にハッピーやからあのときの思いをもう一度! と思うと新規の機会を探してしまう訳ですよ。

私は入社以来、新入社員補正があった序盤以外は、職場の女性社員と仕事のこと以外を話す機会が少なく、そして今の職場は女性社員の方が多いんやけど、打ち合わせのない日なんか「おはようございます」、「お疲れ様です」、「お先に失礼します」以外口にしない日もあるなどして、ややもするとわたくしは職場では無口やと思われていたかもしれんです。そんな状況で仮に女性社員のどなたかにちらとでも気があるととられかねん素振りを見せようものなら裏で何言われるかわからんですし、そもそも不倫ってあかんことやないですか。なんで男性で脳内恋愛の相手を探すんは自然なことと言えます。そいで年齢がある程度近くて接する時間の長い男性社員ってわたくしの勤務先には3人しかおらんくて、年上、同い年、年下で一人ずつ。幸いにも3人とも私好みの高身長かつ細身の黒髪メガネ男子という外見で、これに気付いた時は私のためにお膳が立てられていたかのように感じましたね実際。以来、この3人のうち、わたくしが誰を選ぶのかというのを神の視点で眺めながら日常を過ごしてみるとこれが大層愉快である、と。

3歳下の北江(東大卒・帰国子女)は、接する機会は3人の中でいちばん少ないんやけど急接近イベントが多くてですね、二人で出張に行った先で、深夜に私の部屋から中々帰ろうとせんかったり、打ち上げで北江が泥酔して家の近い私が彼の自宅までタクシーで同乗することになり、カギを開けてあげた私を巻き込んで玄関で倒れこんだり等、私と一線越えたいと思とるんやろかと疑いたくなる事象がちらほらあるんすわ。玄関倒れこみのときは、その姿を北江の彼女っぽい人物に室内から見られ、「酔って一人で帰れなくなっていたので、ここまで送ってきて……」などと言い訳しながら慌てて帰るというどきどきもありましてね。

3人目の赤松先輩(理系・院卒)は、姉がモデルをやっていて本人もグッドルッキングガイな青春時代のわたくしにとっては仮想敵やったような部類の人種なんですけど、まあとにかくパーソナルスペースが近い近い。私に仕事を教える際など、よくPCの画面前にぐいと身を乗り出してくる(「パソぐい」と呼んでいる)んすわ。資料を渡してくるときに手が触れることも多いし、こないだなんぞトイレの鏡の前で何度もネクタイを結びなおしていたので、何の気なしに「ネクタイ結ぶの苦手なんですね」と声をかけたら、無表情で「升本やってくれよ」と首を近づけてきよってね、プロポーズでしょうかね。

こうなってくると何かもう3人とも俺のことを好きなんはいよいよ間違いなく、そろそろ誰かを選ばなきゃな、でもしばらくはハーレム状態でいたいんや等の葛藤に苛まれていたある日、いつものように意識を中空に飛ばして現状を見下ろした場合、わたくしの見た目だけが麗しくないことに気付いたんすわ、一人だけ太りすぎておりまして。そんでまあ、何ちゅうか絵面をよくしたいと思いまして、とりあえず4か月で16~17kgほど痩せました。これで少しはマシになりましたかね。

といった顛末でわたくしは短期間でデブからある程度一般的な体型に至った訳なんですけれど前述の話は全て私の脳内でのみ展開されており、特に言葉で表明しておりませんでしたので、他の人からすると「ちょっと見ん間に升本えらい痩せおったぞ何でじゃ」という感じらしくて、職場の多数の方に病気じゃないかと心配されまして。いちいち説明もできひんかったんで「太り過ぎてたんで痩せようと思いまして」、「健康診断の結果はよくなりまして」、「いえ、ライザップとコミットはしておりません」といった回答をするんやけど、その後も多少は雑談が続くじゃないですか。このコミュニケーション量の増大を私はダイエット成功バブルと名付けたんですけど、職場の方々との会話量は確実に増えまして、それが仕事を進めるうえでプラスに働くこともあり、減量して体力の消費が減ったのか疲れにくくもなって当初の目的とは関係ないんやけどよかったことが色々発生いたしました。

という話を最近転職していった北江に会った際にしたところ、その後、北江から「彼女が升本さんの話に興味持ってる」とか連絡がきて北江の彼女さんと会うことになってBLに理解がある人と認識されたんか本の貸し借りとか始まってしまったんやけれど、これって大学時代の恋愛の始まりのときの感じに近いかもしれんとか思て、恋愛の気分を味わいたい→脳内で同性を相手に仮想恋愛する、というアプローチは最近進展もなく、失敗というか間違っていたのかもしれんのですけど、何故か味わいたかった感覚は味わえている気いします現在。不倫はしませんけど。

こないだ岡田とフェスに行きまして、「フェスにて演奏会場や時間帯を間違えて偶然聞いたバンドを、元々好きだったバンドより好きになってまう」ちゅう話を書こうと思うて岡田の話を書き始めたんやけれど書き出しの部分を膨らませていたら全く違う内容になってしまいました。結果的に元々書こうと思っていた文章より、耳目をひくかもしれん内容になったと思うので、これはしくじりの効用ですかね。

昭和90年8月6日

 *4-1:短編・中編小説が3編収録されている津村記久子『カソウスキの行方』(講談社、2008年)の表題作。初出は『群像』2007年9月号。第138回芥川賞候補作。
*4-2:北上次郎「恋は始まるまでがいちばんいい~有川浩論~」(『野性時代』Vol.38、2006年)より。有川浩『クジラの彼』(角川書店、2007年)のハードカバー版の帯にも使用されたコピー。

 

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続けてもう一つ。「好き」にまつわる話です。

 

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ここで一つとっておきのウンチクを紹介しますと、マッコウクジラっちゅう歯がある動物では最も大きい生物がおるんやけど、そいつがダイオウイカを食べた後にするウンコは得も言われぬ豊かな芳匂がするんやって。などとTwitterにてtweetしたら何の因果かRT祭りになり「排泄物自体がいい匂いな訳ではなく、その中に含まれる胆石的なものが云々」といった教えてあげますよリプライが次々に来て、途中から雲行きが怪しくなりデマを広める人物ちゅう認定を受け個人情報が晒され、言うたら正義感による小悪党懲らしめといいますか、私刑的な状況に陥って、推移を観察していた人物にまとめを作られて、そのまとめを読んだ人らに冷笑tweetされるみたいなことあるやないですか。また、ガタガタと政治的な激動が続く昨今、様々な政治的見解の方から過激な発言が続々表出するんやけれども、どの陣営もツッコミどころのある科白を仰る方がどうしてもまじってしまいますんで、何だかんだ多いんは様子見層といいますか茶々を入れる立ち位置の方たちなんかな、そんな冷笑茶々組を目にする機会が増えてきたんやけれども、そんな方たちに他人に水を差すより肉を食べてみるんはどうかと本稿では提案いたします。

肉の話をするのに冒頭のツカミはどうなんか、ちゅう話ですが、アニメ版『ぼのぼの』ではクズリくんが道端で垂れる際に「にくにくにくにく」言うていて……いや、いま入ってきた情報によりますと「にこにこにこにこ」やったようです。マジか! すいません。いやまあ肉を食べているとわたくしなどはそれだけでにこにこ笑顔になるんやけれど、その感じを伝えるためにも、最近都内でぶいぶい言わせとる「いきなりステーキ」さん行ったときのことを実況してみんとします。まず、どの店舗でも日によって働く人員が違いますんで、外から眺めまして客捌きを確認、くるくると回転していたら入店、何かイラついてそうな客が多かったら諦めましょ。昼やったらワイルドステーキ300g 1択(量り売りは夜にした方がええです)で、米の量はお好みですがわたくしは食しませぬ。程なく肉が届きますがここでわーとか歓声あげながら写真撮影するんは愚の骨頂らしいですよ「肉は熱いうちが勝負だ」【*6-1】いう人もおりますし。写真撮影していると最も美味い時間帯を逃しますよ勿体ない! ま、わたくしは後で写真眺めて悦に入りたいんで毎回撮りますけれども。そんでステーキソースですがこれをだぼだぼかけると熱い鉄板が冷めますんで注意っちゅう店員の忠告を無視してですね、わたくしはレアーでいただきたいんで鉄板を少し冷まします。前半ソースのみ、中盤は+塩胡椒、後半+ワサビで味変しながらむぐむぐと顎に負荷をかけて食すと幸せ元気で午後もがんばろういう心持ちになります。店舗にもよりますが入店から退店まで15分ほどで済むこともあり時間のない現代人におすすめですよね。

そうそう、肉ばかり食べていると驚くことに、副次的に痩せてまうんすよ。肉には糖質がほとんど含まれとらんので、自然に糖質制限になるんすわ。糖質制限については、わたくしとても感慨を受けた本がありますんで、ちょっとテレビショッピング風に紹介してみますね。

升本:今回ご紹介するんはこちら『マンガで分かる肉体改造 糖質制限編』【*6-2】ということなんやけれども、どういったご内容で?

升本:はい、こちら、ダイエットの手法の一つ「糖質制限」について語られた書籍ですわ~。

升本:糖質制限? 最近よく聞きますね。本もたくさん出ているんやないですか?

升本:ふふふ。数多あるんすけど、こいつはまさに決・定・版というべき1冊なんすわ~。なんと、これ1冊で全員痩せます!

升本:全員!? すごい! と、わざとらしく驚きましたが、実はですね、わたくしもこれで、ものすっごい痩せたんすよね~。

升本:どれくらい痩せたんです?

升本:4か月で約20kg減ですわ。その後2か月くらいキープできてるんすよ~。

升本:仰天! 効果絶大ですね。でもー、その本、お高いんでしょう?

升本:そ・れ・が野口英世【*6-3】1人分でおつりが出ちゃうんです。

升本:ええー! そりゃお得ですわ~。

や、この手法は文字数食いますね。やめます。まあダイエット本なんて星の数ほどあるんやけれども、どうしてこの作品かといいますと、まず活字ではなくマンガなんで読みやすいちゅうのはありますわな。で、次が大事なんやけれども、ちゃんとマンガとして面白いんすよ、この作品。どうもね~、「マンガで分かる」系の書籍は乱発されとって駄本率が高いんすよね。マンガパートより活字パートの方が多くて本によっては台詞付きの一枚絵があるだけとかこんなん「マンガで分かる」は嘘ですやん系から、まあマンガで構成されとりますけど絵や筋運びの質が著しく低くて読むに堪えまへん系とか、「マンガで分かる」ちゅう文言が一種の地雷と化している向きはありますわな。でも『マンガで分かる肉体改造 糖質制限編』に関しては、青年誌で連載していた作品なもんで一定の質は担保されているといいますか、マンガが面白く、かつ痩せられます。いや、痩せられました。痩せたんすよ。【*6-4】

痩せて何がいいって自己肯定感は高まりますよね間違いなく。あとは見た目が変わるんで元からの知り合いには注目されること請け合いで承認欲求満たされます。痩せる情報を知りたい人はごまんといらっしゃいますんで、体験を文にしてみるんもいいやも。ダイエットは出版業界で恒久的に売れる分野として名を馳せているんで、うまくいけば本も出せちゃうやもしれんですよ。

まあ何だ。マッコウクジラがダイオウイカを食すことでええ匂いの石ができるように、何を食べるかによって変化が起こるとゆう訳です。みんなが肉食べていったら変わっていくんやないですかね色々。

最後に、わたくし一人の力では、みなさまに肉の魅力が伝えきれんかったかもしれんので、プロの文筆業の方の肉の魅力を語る文を29(にく)×5字ほど引用して終えますね。

ビフテキの左端一センチぐらいの幅にズブリとナイフを入れた。その感触はもうほとんどそのまま味覚で、私は体がのけぞりそうになった。その切り取ったビフテキ部分を実際に口に含んだ後の口中粘膜の状態については、もはや各自想像するほかないだろう。

赤瀬川原平「ビフテキ委員会」『ごちそう探検隊』ちくま文庫

昭和90年10月1日

*6-1:西尾維新『花物語』p109、講談社、2011年
*6-2:原作・ゆうきゆう、作画・ソウ、少年画報社、2015年
*6-3:千円札に描かれた人。あまり関係ないがWikipedia「野口英世」の項にも掲載されている野口英世記念館所蔵の野口英世が母シカと共に映る写真はトリミングされており、元の写真では4人の人物が映っている。その写真の左端の女性・宮原八重子(結婚後は升本八重子)は筆者の曾祖母にあたり、一時期野口英世と懇意にしていたらしい。
*6-4:痩せた経緯については<4>参照。

 

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何かを「面白い」と感じているときは、素直に世の中の全ての人の幸福を願えるかもしれません。そのためには、メタ目線でツッコミをするのではなく主体的に参加してボケにまわるとよいと考えます。

何かに熱中している人は「面白がり」の達人と言えます。20年以上前に出版されたルポ、ナンシー関『信仰の現場―すっとこどっこいにヨロシク』(1994年)で描かれる人々――ウィーン少年合唱団の追っかけや、福袋のために正月三が日をフルに費やす人――は本気で熱中しています。隙だらけです。ネット上ではこの本について「わたしは違う」という冷めたメタ目線のレビューが多いのですが、そこに嫉妬や羨望は微塵も生じていないと言えるでしょうか。清野とおる『その「おこだわり」、俺にもくれよ!!』(2015年~)はもっと自覚的で、熱中人口の少ない事象――内ポケット、ベランダ、帰り道、喫茶店のアイスミルク等――に夢中になり、幸せそうにしている「おこだわり人」に対し筆者自身がやり方を問い真似したいと叫びます。こちらのレビューは「真似してみました」報告が多数派で、「おこだわり」にも肯定的です。

そう、当事者になるのがいいですね。確かに見方によっては滑稽かもしれません。でもわたしたちのうち多くが世の中の事象に事細かにツッコミを入れるのをやめて、「ツッコまれしろ」のあるボケにまわったとき、きっと世界は色鮮やかになります。

そのために、私はくりかえし「好きって最高だよね」という「物語」を綴ります。

文字数:10368

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