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面白

愛は祈りだ。僕は祈る。僕の好きな人たちに皆そろって幸せになってほしい。それぞれの願いを叶えてほしい。温かい場所で、あるいは涼しい場所で、とにかく心地よい場所で、それぞれの好きな人たちに囲まれて楽しく暮らしてほしい。最大の幸福が空から皆に降り注ぐといい。僕は世界中の全ての人たちが好きだ。

舞城王太郎『好き好き大好き超愛してる』

 

何か面白いことないかな。万人が一度は考えたことがあるのではないか。当然わたしも経験がある。でも今はあまり考えない。いつ変化があり、どうして「何か面白いことないかな」と考えなくなったのか。

手始めにわたしは「BL(ボーイズラブ)」のことを書く。きっかけは『俺たちのBL論』(*1)を読んだことだ。この本の冒頭に「BLとは、世界を見る『メガネ』」という言葉がある。納得の比喩。はじめてメガネ(比喩ではない)をかけた日のことを思い出す。世界はこんなに輪郭がはっきりしていたのかと驚いた。その瞬間、世界は色鮮やかになった。

実際、世界は退屈と不平不満に満ちている。人によっては。だって楽しそうにしている人もいらっしゃる。それらの人たちへの妬み嫉みやっかみ羨み。とにかく美しく綺麗な感情ではなくて、どろどろした暗い色合いの気持ちからスタートしたい。ズルいなー教えて。わたくしも熱中したい。面白がりたい。「面白い」と感じているとき、素直に世の中の全ての人の幸福を願えるかもしれない。

みんなが幸福になるといい。なんぴともすぐに私刑に遭う世の中の空気が変わるといい。わたしたちにできることは何か。楽しそうにする、面白がる、熱中する。メタ目線でツッコミをするのではなく主体的に参加してボケにまわる。その姿を目にした人の中で一人でも、心が穏やかになればいい。そう考えてわたしは「批評」の扉を開いた。「批評」はボケかツッコミで言うとツッコミだ。でもその前に批評は「面白がり方」の技術であるともいえる。

何かに熱中している人は「面白がり」の達人と言える。20年以上前に出版されたルポ、ナンシー関『信仰の現場―すっとこどっこいにヨロシク』(1994年)で描かれる人々――ウィーン少年合唱団の追っかけや、福袋のために正月三が日をフルに費やす人――は本気で熱中している。隙だらけだ。ネット上ではこの本について「わたしは違う」という冷めたメタ目線のレビューが多い。そこに嫉妬や羨望は微塵も生じていないと言えるか。清野とおる『その「おこだわり」、俺にもくれよ!!』(2015年~)はもっと自覚的で、熱中人口の少ない事象――内ポケット、ベランダ、帰り道、喫茶店のアイスミルク等――に夢中になり、幸せそうにしている「おこだわり人」に対し筆者自身がやり方を問い真似したいと叫ぶ。こちらのレビューは「真似してみました」報告が多数派で、「おこだわり」にも肯定的だ。

そう、当事者になるのがいい。確かに見方によっては滑稽かもしれない。でもわたしたちのうち多くが世の中の事象に事細かにツッコミを入れるのをやめて、「ツッコまれしろ」のあるボケにまわったとき、きっと世界は色鮮やかになる。のびのびと、能力を発揮できる人が増える。

で、BLである。これまで全く縁のなかった人であっても、近年目にするし耳にする分野だ。今後、更に人口に膾炙していくだろう。閉鎖的ながら、日本国内のコア層(コミケや即売会に行く人)だけでも数十万人規模の市場があり、ライト層はその10倍近くいるかもしれない。着目したのは当事者たちが「とにかく楽しそう」な点である。そんなに楽しいなら知りたい、となるんは自然な感情やんね、ってあーもういいや。文語体で書こうとするん疲れた。BLはコンテンツとして広大な鉱脈でして、手順を踏めば誰しもが楽しめるようになると思うし、よかったらおいでよーっちゅう話をしたかったんすよ前置き長かったけど。いわゆる腐女子と言われる人らーのようにわたしが十全に楽しめとるんかは不明やし、その域に到達できることは一生ないかもしれんのですけど、例えば生理的嫌悪感からBLを毛嫌いするんは損やと。踏み込んでみるんはどうかと。誤解が生まれやすいジャンルなんは間違いなく、実際わたくしも何が面白いん? と思っていた時期はありましたよ確かに。でも今は、恋愛や性愛の絡む事象の一つとして受け止めておりまして。あまり特別視せずに嗜んでおります。っちゅうとすぐ「ゲイなん?」って問われたり、「へ、へぇ~」って距離置かれたり、「こんなんがええんやろ?」って雑ないじりされたりね。そうなるん分かるよ。でもさ「エス」っちゅうか「百合」っちゅうかさ、それらの文化を大なり小なり享受する女性の全てがレズビアンだという認識はないですよね。「双子コーデ」で仲良さそうにしとる女性二人組みて全員が同性愛者やと即断します?

まあね、細かい定義や用語の区別をほっぽって一言でいうたら、BLを嗜むっちゅうんは「恋愛体質」になることなんですよ。AとBという2者がいたらとりあえず恋愛として捉えてみる。恋愛って快楽じゃないですか。でもそう頻繁に陥れるものでもない。BL的目線を獲得すると、これが自由自在に摂取できると。BL愛好家は何らかのきっかけで自然とできるようになった方が多いらしいですけど、これ別に選ばれし感覚っちゅうんやなくて、誰しもいけますからね。その辺り、男性に向けては前述の『俺たちBL論』が詳しく手ですね、ってああ時間的〆切が来た。BLもそうですけど、昭和から続いている分野がネット等で可視化されただけで、新しく急に出てきた訳ではないもの多いですよね。でも情報量とアクセスしやすさが向上しとるから、どんな分野も最初の数段が登りやすくなっとるし、各自で熱中見つけて、それに邁進しましょうや。そうすると世界は、っちゅう話を最終課題では書きたいです今のところ。

 

*1:『俺たちのBL論』サンキュータツオ・春日太一、河出書房新社、2016年。

 

<参考文献>

・槙田雄司『一億総ツッコミ時代』星海社、2012年。

・溝口彰子『BL進化論 ボーイズラブが社会を動かす』太田出版、2015年。

文字数:2497

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