印刷

「神」は遍在する

1
You、髪切っちゃいなよ。的な啓示でもあったん? て気軽には聞けんな~っちゅう目算4~5年分の長さを、職場で隣席の二見さんがバッサリいってもうたんは2016年1月19日夜のことらしく、翌20日おそるおそる様子見の周囲に対し「わたしは何があろうと応援していこうって決めてん。そしたら『よし、切るか!』ってなって」と言い放ち、晴れやかな顔で仕事に取り組む姿にわたくしは一抹の不安を覚えまして。SMAP解散するん? しないん? ちゅう報道が出まわった初日[*1]なんぞは、ゆらゆらした仕事ぶりで帰り際「今夜、決定的な公式情報出たら明日どうなるか分かれへん。そしたらすまん。先に謝っとくわ」て言い残して退社してらしたんで、その頃に比べれば安定感あるけど信仰段階が進行しとる気配もあり、気にせずにはおれんやないですか同僚として。やからわたくしの方から「実際、最近どうなん?」と口火を切ったところ「ホント5人ともかわいそうで。メンバーは誰も悪うないんよ。もうね、9割9分ウソやからスポーツ新聞は。日本揺るがす案件やし1週間以上連続で1面[*2]とか世間的にしゃあないとはいえ、情報不確か状態やのに断定口調でウソ書いて不安煽るん最低やからさ、ウソ情報にお金払うてもうたんホンマ悔しいわ。でも今回の件でファンの交流更に深まってん。木村君裏切りとかゆう記事はまあウソやからさ、トレンド入っとったしみんな見とるやろけど『#私の知ってるsmapの4対1』ちゅうてメンバーのうち1人だけダンスの振り間違えたり衣装違ったりのキャプチャ貼ったり、『#2topが不仲らしい』て木村君と中居君の二人がいちゃいちゃしてる画像を流したりしてね、不仲でこれなら仲がいいって何なん? そんなん目にしたら卒倒してまうわ~てな。ははは。そんでそれらのリツイートを何千、何万回してTL埋め尽くして、かわいい画像目にする機会増えてみんなほっこりやんね、毎日『こんなん持ってたか~』、『これあったわ~』てなるしで笑顔笑顔。それと出演番組やCMの継続お願いメールは毎日しとって、継続決定したら感謝メール、幸いまだ何も打ち切りになっとらんけど油断は禁物やから今日も送るわ。親切な企業担当者はお礼メール返送してきたりしてこちらの好感度上がるしでよかったやんね。まあ結果的にね、割く時間は増えて今は充実しとるっちゅうか。あとはお金ある人は日本コロムビアの株買うて、そこまでお金ない人は『世界に一つだけの花』のCD買えるだけ買うことになっててんな。オリコンのデイリーも3位[*3]まで来とったし、22日にはCD増産分が店頭に並び始めるから、また行って買わな。や、客観的にみて良い曲なん間違いないし、みんなも1枚ずつ買うてくれたら嬉しいけど……」と怒涛の言説でして、わたくしも「そうなんや~」ちゅうてTwitterでハッシュタグ検索してみたり、CD1枚買うてしもたりもして、呑気に応対しとったら翌々日あたりに追い打ちでリスト渡されてそこには「コカ・コーラ ゼロ」、「アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ」、「昆布ポン酢」、「1本満足バー」、「北海道十勝スマートチーズ」……とSMAPのメンバーがCM出演している商品一覧があり「特に買いやすいやつマーカーしといたから。まあ無理に買ってとは言わんけど、似た系統の商品買うかもっちゅうとき思い出してもろて、応援する意味でね、このリストの方を選んでくれたらさ」ちゅうてね、これがいわゆる「布教」か~って、そこにはアイドルを神と捉えた宗教のような磁場が発生している訳ですよ。平岡正明『山口百恵は菩薩である』(1979年)、濱野智史『前田敦子はキリストを超えた』(2012年)なんて論考の存在からも、そういった思考形式があることは理解していましたけれども、生で長時間接したんは初めてでして、見える世界がマジで違うんやな、と。「神」という概念を久々に思い出した次第で。そしたら「神」って言葉を聞く機会自体は現代社会で存外多いよなと。

2
微妙な例というか他にも用例はいくらでもありますけれども今日目についたやつ挙げると、Googleの検索窓に「SMAP」と入れると追加の予測キーワード最上位が「神ブログ」となりまして(2016年1月28日現在)、件の「神ブログ」の内容はというとSMAPの生放送会見(2016年1月18日)を観ての、あるSMAPファンからメンバーへ向けての「わたしは本当のことわかってるよ」的な改行の多い文章なんですけれど、一神教信仰者が多数派ではない現代日本の一般用語として、「神」は相当身近ですよね実際。様々な方がインターネット上で主観による「神認定」をしておられて、その用法は少なくとも日本のインターネット上では一般化しており「神○○」って聞くとわたくしたちは「ああ、何かすごいんやろね」ぐらいの受け止めになっておりますけれど、これっていつからなんやろか。2003年に『阿修羅ガール』[*4]での登場人物の主観的な語りで「板尾天才。マジおもしれ~。/板尾は神。」[*5]と書かれとるんを読んだ当時には違和感なかったんで、十数年前には若年層に一般化しつつあったんは間違いないす。まあ結果として「神」と「現代社会」と聞くと、日本ではこの用法が誰しも浮かびますよね。などと書いていたら他の用法での「神」を思い起こさせる報道が本日(2016年1月28日)ありまして。

3
来たる未来が来てしまいましたよ実際。Google等の研究グループによる人工知能囲碁ソフトが、遂にプロ棋士を破ったそうで。偶然が関与しない有限確定完全情報ゲームである以上、コンピューターの性能が上がり続ければいつかは人間に勝つようになるんは自明でしたけれど、チェス、将棋に比べると囲碁の選択肢は莫大やから、もうしばらくはかかるやろ、てのは希望的観測やったんすね。本日の報道ではヨーロッパチャンピオンに5戦5勝して3月には世界最高峰レベルのプロ棋士と対局予定とか。囲碁漫画『ヒカルの碁』[*6]の登場人物たちは「神の一手を極める」とか何とか作中で何度も言うとりましたけれども、仮に囲碁に「神の一手」なるものがあるとしてコンピューターがその域に達するんも遠くないすわな。遺伝子操作とか人体改造とかいわゆる過去に「神の領域」とされていた地点に到達しつつある技術もそうやけれど、超越者として、絶対に届かないものであった「神」ってわたくしたちが生きているうちにどんどん手の届くものになりそうやんね。といったことを思案しながら散歩中にある看板を見かけて想起したエピソードを次に一つ。

4
確かに、って納得ちゅうか、あーはいはい的事案ですけれども「あのな、ネコが『神』やってん」「それはあれか。『すごいなあ~』くらいの意味合いでの『神』?」「ちゃうちゃう『神』がネコなんよ。証拠見せたる」みたいなやり取りがあって、証拠て! 証拠て何やねんと思てたら「ほれ」って見せられた画像集が、日本各地に貼られとる、黒い板に白文字で聖書の一説(ぽい文言)が書かれたやつの「神」の部分の白が一部はがれて「ネコ」になっとるやつで、「ネコと和解せよ!」、「ネコへの態度を悔い改めよ!」、「心からネコを信じなさい」って、あーはいはい。

5
筋運びが乱雑ながら「神」という概念に関して現代社会と絡めて思いついたことを端から書き連ねてまいりました。尻切れ気味の展開になってしまったんは現在わたくしの尻が負傷して物理的に切れていることと無関係ではなくてですね、座っていると痛くて立ったり寝転んだりしながら打鍵しておりますからか筆致も思考も安定しませんわ。完治した暁には尻切れの文章を書かなくなるとケツ意して己の心と約束いたします。ゆーび切ーりげーんまーんウソついたらハリセンボン飲~ます、ゆ~び切ったす。


*1:2016年1月13日。
*2:最長12日に及んだ。
*3:オリコンが発表するデイリー CDシングルランキング。SMAP『世界に一つだけの花』のリリースは2002年だが、SMAPの解散危機報道の後から売り上げが伸び始め、2016年1月22日・24日には1位になった。
*4:著者は舞城王太郎、単行本は2003年1月に新潮社より発行。三島由紀夫賞受賞作。
*5:新潮文庫版289ページ。
*6:ほったゆみ原作・小畑健作画、集英社。連載は1999~2003年で、単行本は全23巻。

文字数:3449

課題提出者一覧