ゲンロン 大森望 SF創作講座 2024
ゲンロンSF創作講座2024へようこそ
2016年4月にスタートした「ゲンロン 大森望 SF創作講座」は9年目を迎え、このほど、8期目を開講することになりました。
始まった頃はこんなに長く続くとは思いもしませんでしたが、SFの人気は年ごとに高まり、マンガやアニメ、ゲーム、映画、ドラマなど各メディアにとどまらず、最近ではビジネスの世界からも引く手あまた。SF作家という職業も、「小説を書いて雑誌や書籍のかたちで発表する」という仕事だけでなく、さまざまな可能性が広がりつつあります。
生成AIの発展や地球規模の気候変動など、これまでSFが書いてきたことが目に見えるかたちで実現しているのもその一因でしょう。SFと現実がかつてないほどの大接近を遂げつつある今、この講座が持つ意味も、従来以上に大きくなっているのかもしれません。
この講座で実際にどんな授業が行われているかについては、第1期の内容をコンパクトにまとめた『SFの書き方 「ゲンロン 大森望 SF創作講座」全記録』(早川書房)をぜひご一読ください。ゲスト講師陣の講義と講評、受講生が提出した梗概(+アピール)および実作例を収録し、編者の手前味噌ながら、1年間の講座の成果を1冊に凝縮した、たいへん中身の濃い本になっていると思います。
講座が軌道に乗ったここ数年は、現役受講生や元受講生の活躍が目立っています。いまや、ゲンロンSF創作講座勢が「新しい日本SF」の重要な一角を占めているといっても過言ではないでしょう。受講中に他社新人賞を受賞したり、提出作が編集者に認められて商業誌デビューを果たしたりした受講生もいますし、修了生の活躍事例はここに書き切れないほど。
また、講座の最終関門にあたる「ゲンロンSF新人賞」を通過した正賞受賞作は、作者のゲンロンからのデビューが確約され、ゲンロンが創刊した電子書籍レーベル《ゲンロンSF文庫》から単独の電子書籍として商業出版されます(正賞以外の受賞作でも、電子書籍化されるチャンスがあります)。
受講生たちの活躍のおかげで、ゲンロンSF創作講座は、2020年代日本SFの一翼を担う勢力へと確実に成長してきました。講座に対するSF業界内外からの関心は高く、この講座を受講することによって「SF作家として認知されるまでの道のり」を大幅にショートカットすることが可能です。
もっとも、こうした成果はそれぞれの書き手の努力の賜物。ゲンロンSF創作講座は、べつだん「受講生がSF作家になること」を第一の目的にしているわけではありませんし、受講生も、作家デビューを目指す人ばかりではありません。「ゲストの話を聞きたい」とか、「小説を書いている人たちと交流してみたい」とか、「本物の編集者と話がしてみたい」とか、そういうカジュアルな参加も大歓迎です(というか、毎回課題を提出するのは精神的にも肉体的にも相当タフなので、無理のない範囲で受講されることをお薦めします)。また、作品を書くつもりはないが講義は聞きたいという人のために、聴講コースも用意しています。
受講生全員(聴講コース含む)には、講義および講評すべてを収録した動画アーカイブが公開されるので、講義を欠席しても、自宅で視聴できます。
逆に、石にかじりついてでも職業SF作家になりたい人にとっては、この講座は実力を試す最高の場になるはず。書きたい作品のあらすじとポイントをアピールする力は、プロになったとき必ず役に立つでしょう。
小説の書き方は、かならずしも教えられて身につくものではありません。この講座では、小説の基本(ストーリーの構築、キャラクターの設定など)を一から教えるようなことはしていません。とはいえ、ジャンルのさまざまなテーマに応じた作法や心構え、やってはいけないことなど、学べることもたくさんあります。「小説の書き方」のような本を開いてもなかなか載っていないSFのコツ、ジャンルの勘所を、講座の課題を通して身につけることができるでしょう。
これまで、公募新人賞への投稿と落選を漫然とくりかえしてきた人は、自分が考えたプロット、書き上げた作品をプロの作家や編集者に見てもらい、意見や評価を聞くだけで、よほど効率的に関門突破のためのスキルが磨けるはず。ファンタジーやホラー、ミステリ、純文学など、SF以外の分野で作家になる道を模索している人にとっても、小説を書く基本は同じですし、SFの書き方を身につければ、それが強力な武器となるはずです。
また、これはオフィシャルなものではなく、あくまでも自主的な課外活動ですが、受講生同士のコミュニケーションや、オンライン/オフラインでの卒業生との交流もゲンロンSF創作講座の大きな魅力のひとつ。毎月提出される課題作品を元受講生が綿密に読んで講評するインターネットラジオ番組「ダールグレン・ラジオ」はパーソナリティが交替しながら長く続いていますし、SNSやnoteなどで毎回の講座提出作品がレビューされる機会もおおくあります。また、オンライン/オフラインでの感想交換会、講座後の飲み会、交流会などが受講生やOB有志によって開催され、講師以外からのセカンドオピニオン、サードオピニオンを聞くこともできます。さらに、積極的に参加するかどうかは希望次第ですが、元受講生によるSF同人誌やアンソロジーが複数刊行されるなど、修了後も、さまざまな活動の場があります。
2022年開講の第6期からは、これまでの蓄積を踏まえつつ、SFに対する多様化するニーズに応えるため、フラッシュ・フィクションに特化した回を設け、また「ゲンロン ひらめき☆マンガ教室」との合同授業を行うようになりました。
2024年に開講する第8期のゲンロンSF創作講座でも、こうした試みを引き継ぎ、さらに発展させていく予定です。また新たな個性に出会えるのを楽しみにしています。
主任講師 大森望
プログラム
- ゲンロン 大森望 SF創作講座・第8期(以下「本講座」といいます)の開講期間は、2024年9月から2025年8月までの1年間です。
- 本講座の主任講師は書評家・SF翻訳家の大森望氏です。途中からの入講、一部のみの受講は受け付けておりません。
- 本講座の授業は、原則として月1回、東京・五反田のゲンロンカフェで行います。オンラインでの受講も可能です。
- 特別授業と最終講評会を除き、各回の授業は3コマからなります。
- 1限(19:00-20:00)は講義形式です。ゲスト講師の話を聞き、創作環境やテクニックを学びます。
- 2限(20:10-22:10)はワークショップ形式です。作家コース(後述)の受講生はあらかじめ示された課題にしたがい、短編の梗概を提出します。授業ではそのうち3編(回により異同あり)の優秀作を選出します。選ばれた受講生には、梗概を元にした短編を次回までに執筆し、講評を受ける権利が与えられます。
- 3限(22:20-23:20)もワークショップ形式です。前回の授業で選ばれた梗概に基づいて書かれた作品を読み、最優秀作を選びます。
- 第8期最後に開催される最終講評会では、「第8回ゲンロンSF新人賞」選考会として、弊社媒体にて発表される作品を選考します。
- 本講座には「作家コース」「聴講コース」「オンライン聴講コース」の区分があります。
- 「作家コース」は、授業のすべてに参加できるコースです。上記のプログラムに応じて、各回課題(最終講評会含む)に応じた作品を提出し、講師による講評を受けることができます。すべての提出物は専用サイトで受講生以外にも公開されますので、あらかじめご了承ください。
- 「聴講コース」は、授業を聴講できるコースです。すべての授業について会場またはオンラインで参加し、質問をすることもできますが、課題(最終講評会含む)の提出はできません。
- 「オンライン聴講コース」は、オンラインで授業を聴講できるコースです。課題(最終講評会含む)を提出することができないほか、授業への参加もオンラインに限られます。
- どのコースでも、授業動画のアーカイブが視聴できます。アーカイブは、最終講評会の3ヵ月後まで視聴可能です。
- 1webにて課題提示
- 各回授業のおおよそ1ヶ月前までに、ゲスト講師から課題が提示されます。課題は「タイムマシン」など道具立てに関するもの、「火星」など舞台に関するもの、あるいは表現手法に関する具体的な指定など、講師によりさまざまです。過去の課題は、こちらでご覧いただけます。
- 2webにて梗概提出
- 作家コースの受講生は、各回授業の7日前までに、課題に沿った梗概(1200字以内)と内容に関するアピール(400字以内)を提出することが求められます。所定のフォームより提出されたテキストは、受講生以外でもアクセスできる状態で専用サイトに公開されます。一般読者の反応は以下の選考・講評で考慮されます。
- 3講義にて上位3名選出
- 講師によって、優秀な梗概が3編(回により異同あり)選ばれます。選出された3名は④に進み、惜しくも選外となった他の受講生は、提示された新しい課題に基づいて、次回提出する梗概の準備を始めます。
- 4webにて小説提出
- 梗概が選ばれた3名は、次回講義の7日前までに、梗概に基づく短編小説(原稿用紙40枚以内)を執筆・提出します。この3名については、②の梗概提出と④の小説提出が同時並行の作業になります。
- 5講義にて優秀作選出
- 提出された短編には、講師から点数が割り振られます。点数は(10+当該課題の梗概未提出者数)×2点を、講師の裁量で配分します。点数の推移は専用サイトで公開されるとともに、最終講評において考慮の対象となります。
以上のサイクルを繰り返すことで、「課題に沿った小説を組み立てるプロット力」「分量に見合ったアイデアを生み出す発想力」「作品を魅力的に提示するプレゼン力」「発想を作品に落とし込む筆力」など、SF作家としての基礎体力を確実に向上させることになります。
注意事項
スケジュール
日程 | 1限目 | 2限目 | 3限目 | 講師 | |
---|---|---|---|---|---|
授業 1 | 9月21日(土) | 15:00-16:00 導入・講義 |
梗概講評会・自己紹介 |
小浜徹也(東京創元社)+大森望 | |
授業 2 | 10月18日(金) | 19:00-20:00 講義 |
フラッシュフィクション課題講評会 |
柴田勝家+溝口力丸(早川書房)+大森望 | |
授業 3 | 11月22日(金) | 19:00-20:00 講義 |
20:15-21:45 梗概講評会 |
22:00-23:00 実作講評会 |
長谷敏司+塩澤快浩(早川書房)+大森望 |
特別授業1 | 12月21日(土) | 合同授業 大森望 SF創作講座 × ひらめき☆マンガ教室 |
佐藤大+さやわか+大森望 | ||
授業 4 | 12月27日(金) | 19:00-20:00 講義 |
20:10-22:10 梗概講評会 |
22:20-23:20 実作講評会 |
新川帆立+髙橋裕介(ストレートエッジ)+大森望 |
授業 5 | 1月24日(金) | 19:00-20:00 講義 |
20:10-22:10 梗概講評会 |
22:20-23:20 実作講評会 |
円城塔+伊藤靖(河出書房新社)+大森望 |
授業 6 | 2月28日(金) | 19:00-20:00 講義 |
20:10-22:10 梗概講評会 |
22:20-23:20 実作講評会 |
斜線堂有紀+田中玲遠(集英社)+大森望 |
特別授業2 | 3月上旬 | 特別授業 SFとミステリと文芸批評を考える |
佐々木敦+法月綸太郎+大森望 | ||
授業 7 | 3月28日(金) | 19:00-20:00 講義 |
20:10-22:10 梗概講評会 |
22:20-23:20 実作講評会 |
高山羽根子+井上彼方(VGプラス)+大森望 |
授業 8 | 4月25日(金) | 19:00-20:00 講義 |
20:10-22:10 梗概講評会 |
22:20-23:20 実作講評会 |
藤井太洋+浅井愛(文藝春秋)+大森望 |
授業 9 | 5月23日(金) | 19:00-20:00 講義 |
20:10-22:10 梗概講評会 |
22:20-23:20 実作講評会 |
菅浩江+井手聡司(早川書房)+大森望 |
特別授業3 | 8月8日(金) | 1年間の講義 & 2024年度のSF界 振り返り |
小浜徹也(東京創元社)+井手聡司(早川書房)+大森望 | ||
新人賞 | 8月29日(金) | 第8回 ゲンロンSF新人賞選考会(最終実作講評会) | 菅浩江+斜線堂有紀+伊藤靖(河出書房新社)+東浩紀+大森望 |
感染症の流行などやむを得ない事情により、日程を変更したり、一部の講義をオンラインで行う場合がございます。その際はすみやかに連絡を差し上げます。
講師
主任講師
大森望|おおもり・のぞみ
1961年、高知生まれ。書評家・SF翻訳家・SFアンソロジスト。著書に『21世紀SF1000』、『新編・SF翻訳講座』、《文学賞メッタ斬り!》シリーズ(豊崎由美と共著)、《読むのが怖い!》シリーズ(北上次郎と共著)など。アンソロジーに《NOVA》、《不思議の扉》、《ベストSF》ほか多数。訳書にコニー・ウィリス『航路』『ドゥームズデイ・ブック』、劉慈欣『三体』(共訳)、テッド・チャン『息吹』など多数。《NOVA 書き下ろし日本SFコレクション》全10巻と『年刊日本SF傑作選』全12巻(日下三蔵と共編)で、第34回と第40回の日本SF大賞特別賞を受賞。
ゲスト作家講師
柴田勝家|しばた・かついえ
1987年、東京生まれ。成城大学大学院文学研究科日本常民文化専攻博士課程前期修了。
在学中の2014年、『ニルヤの島』で第2回ハヤカワSFコンテストの大賞を受賞し、デビュー。2018年に「雲南省スー族におけるVR技術の使用例」で第49回星雲賞日本短編部門を受賞。2021年に「アメリカン・ブッダ」で第52回星雲賞日本短編部門を受賞。
近著は『走馬灯のセトリは考えておいて』(早川書房)。戦国武将の柴田勝家を敬愛する。
長谷敏司|はせ・さとし
1974年、大阪生まれ。2001年、第6回スニーカー大賞金賞を受賞した『戦略拠点32098 楽園』(KADOKAWA)でデビューしたのち、ライトノベルからSFに活動の場を広げる。2015年、『My Humanity』(早川書房)で第35回日本SF大賞を受賞。『プロトコル・オブ・ヒューマニティ』(早川書房)で、2023年、第54回星雲賞日本長篇部門、2024年、第44回日本SF大賞を受賞。その他の著作に『円環少女』シリーズ(KADOKAWA)、『あなたのための物語』(早川書房)、『BEATLESS』(KADOKAWA)、『メタルギアソリッド スネークイーター』(KADOKAWA)、『ストライクフォール』シリーズ(小学館)など。
佐藤大|さとう・だい
1969年生まれ。脚本家。19歳の頃、主に放送構成・作詞の分野でキャリアをスタートさせる。その後、ゲーム業界、音楽業界での活動を経て、現在はアニメーションの脚本執筆を中心に、さまざまなメディアでの企画、脚本などを手がけている。2007年「ストーリーライダーズ株式会社」を代表取締役として設立。脚本代表作としてTVアニメ『カウボーイビバップ』『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』『サムライチャンプルー』『交響詩篇エウレカセブン』『エルゴプラクシー』『FREEDOM』、ゲーム『エースコンバット3 エレクトロスフィア』『バイオハザード:リベレーションズ』などを手がける。近作に、映画『サイダーのように言葉が湧き上がる』『映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021』『スーパー・クルックス』『攻殻機動隊 SAC_2045』、『ユーレイデコ』など。
現在、TVアニメーションシリーズ『ポケットモンスター』のシリーズ構成を担当している。
新川帆立|しんかわ・ほたて
1991年アメリカテキサス州ダラス生まれ、宮崎県宮崎市育ち。東京大学法学部、同法科大学院修了後、弁護士として勤務。『元彼の遺言状』で第19回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞しデビュー。著書に『倒産続きの彼女』、『剣持麗子のワンナイト推理』(いずれも宝島社)、『競争の番人』(講談社)、『縁切り上等!』(新潮社)、『女の国会』(幻冬舎)など。
円城塔|えんじょう・とう
1972年、札幌生まれ。研究者を経て作家。SF、純文学問わず広く活動中。主な著書に、『Self-Reference ENGINE』(文藝春秋、2014年 Philip K. Dick Award 特別賞)、『烏有此譚』(講談社、第32回野間文芸新人賞)、『道化師の蝶』(文藝春秋、第146回芥川龍之介賞)。訳書に、チャールズ・ユウ『SF的な宇宙で安全に暮らすっていうこと』(早川書房)。現代訳に『雨月物語』(河出書房新社、池澤夏樹個人編集日本文学全集所収)。近作に『文字渦』(新潮社、第43回川端康成文学賞、第39回日本SF大賞)。アニメーション作品『ゴジラS.P』設定、シリーズ構成、脚本。
写真提供=新潮社
斜線堂有紀|しゃせんどう・ゆうき
小説家。主にミステリとSFの分野で活動している。六年目に差し掛かり、作家として生き残る為に日々一生懸命頑張っている。最近はアニメの脚本などもやっている。今一番したいことはメディアミックス。Twitterは@syasendouで運用している。主な著書に『回樹』『楽園とは探偵の不在なり』(いずれも早川書房)など。
佐々木敦|ささき・あつし
1964年生まれ。思考家/批評家/文筆家。音楽レーベルHEADZ主宰。映画美学校言語表現コース「ことばの学校」主任講師。芸術文化のさまざまな分野で活動。著書に『成熟の喪失』(朝日新書)、『「教授」と呼ばれた男』(筑摩書房)、『増補新版 ニッポンの思想』(ちくま文庫)、『増補・決定版 ニッポンの音楽』(扶桑社文庫)、『ニッポンの文学』(講談社現代新書)、『未知との遭遇【完全版】』(星海社新書)、『批評王』(工作舎)、『新しい小説のために』『それを小説と呼ぶ』(いずれも講談社)、『あなたは今、この文章を読んでいる。』(慶應義塾大学出版会)、小説『半睡』(書肆侃侃房)など多数。
法月綸太郎|のりづき・りんたろう
1964年、松江生まれ。京都大学法学部卒。在学中は京都大学推理小説研究会に所属。1988年に『密閉教室』(講談社)でデビュー。2002年「都市伝説パズル」で第55回日本推理作家協会賞短編部門を受賞。2005年『生首に聞いてみろ』(KADOKAWA)で第5回本格ミステリ大賞を受賞。2013年から2017年まで本格ミステリ作家クラブの会長を務める。『頼子のために』(講談社)、『一の悲劇』(祥伝社)、『ふたたび赤い悪夢』(講談社)、『ノックス・マシン』(KADOKAWA)など著作多数。
高山羽根子|たかやま・はねこ
富山県生まれ。多摩美術大学美術学部絵画学科卒業。2009年、「うどん キツネつきの」第1回創元SF短編賞佳作。同作がアンソロジー『原色の想像力』(創元SF文庫)に収録。2014年、短編集『うどん キツネつきの』刊行。2015年、短編「おやすみラジオ」が第46回星雲賞(日本短編部門)参考候補作に選出。SFが読みたい!2016年版 BEST SF 2015[国内篇]7位に『うどん キツネつきの』選出。第36回日本SF大賞最終候補作に『うどん キツネつきの』選出。2016年、「太陽の側の島」で第2回林芙美子文学賞受賞。2017年、「太陽の側の島」が『行き先は特異点 (年刊日本SF傑作選)』(創元SF文庫)に採録。2018年、短編集『オブジェクタム』刊行。小説トリッパー(朝日新聞出版)掲載の短編ほか収録。第39回日本SF大賞最終候補作に選出。2019年、「居た場所」が第160回芥川龍之介賞候補、「カム・ギャザー・ラウンド・ピープル」が第161回芥川賞候補。20年「首里の馬」が第163回芥川龍之介賞を受賞。
藤井太洋|ふじい・たいよう
1971年、奄美大島生まれ。 国際基督教大学中退。舞台美術、DTP制作、展示グラフィックディレクターなどを経て、2013年までソフトウェア開発・販売を主に行う企業に勤務。2012年、電子書籍個人出版「Gene Mapper」を発表し、作家として一躍注目を浴びる。同年12月短篇小説「コラボレーション」「UNDER GROUND MARKET」の2作で商業誌デビューし、2013年4月に、「Gene Mapper」の増補完全版『Gene Mapper -full build-』(ハヤカワ文庫JA)を刊行。『オービタル・クラウド』(早川書房)で、第35回日本SF大賞、第46回星雲賞(日本部門)を受賞。2019年『ハロー・ワールド』(講談社)で第40回吉川英治文学新人賞を受賞。
菅浩江|すが・ひろえ
1963年、京都生まれ。高校在学中、同人誌『星群』に発表した短編「ブルー・フライト」が『SF宝石』(光文社)に転載されるかたちでデビュー。1992年『メルサスの少年』(新潮文庫)で第23回星雲賞日本長編部門受賞。1993年『そばかすのフィギュア』(ハヤカワ文庫JA)で第24回星雲賞日本短編部門受賞。2001年『永遠の森 博物館惑星』(ハヤカワ文庫JA)で第54回日本推理作家協会賞、第32回星雲賞日本長編部門を受賞。2021年『歓喜の歌 博物館惑星Ⅲ』(早川書房)で第41回日本SF大賞を受賞した。著書多数。シラスで創作講座を主にした番組を配信中。
ゲスト編集者講師
小浜徹也|こはま・てつや
東京創元社。担当書籍に、宮内悠介『盤上の夜』、高山羽根子『うどん キツネつきの』、酉島伝法『皆勤の徒』、など。〈創元SF短編賞〉で第11回から15回まで選考委員をつとめる。
溝口力丸|みぞぐち・りきまる
2014年早川書房に入社、SFマガジン編集部所属。2021年より同誌編集長。
髙橋裕介|たかはし・ゆうすけ
株式会社ストレートエッジ。新潮文庫nex元編集長。担当作に、河野裕『いなくなれ、群青』、知念実希人『天久鷹央の推理カルテ』、竹宮ゆゆこ『砕け散るところを見せてあげる』、宮部みゆき『ほのぼのお徒歩日記』、伊坂幸太郎『ジャイロスコープ』など。
田中玲遠|たなか・れおん
集英社。担当書籍に池井戸潤『ハヤブサ消防団』、村山由佳『二人キリ』、道尾秀介『N』、小川哲『地図と拳』、新川帆立『令和その他のレイワにおける健全な反逆に関する架空六法』など。
井上彼方|いのうえ・かなた
VGプラス。担当書籍に日本SF作家クラブ編『SF作家はこう考える 創作世界の最前線をたずねて』他。編著書に『社会・からだ・私についてフェミニズムと考える本』など。愛猫家。
浅井愛|あさい・あい
文藝春秋。担当作に森見登美彦『熱帯』、冲方丁『十二人の死にたい子どもたち』、有栖川有栖『捜査線上の夕映え』、彩瀬まる『新しい星』、小川哲「walk」シリーズ、一穂ミチ「アフター・ユー」など。
井手聡司|いで・さとし
早川書房。担当書籍に上田早夕里『華竜の宮』、宮内悠介『ヨハネスブルグの天使たち』、藤井太洋『オービタル・クラウド』、月村了衛『機龍警察』、春暮康一『法治の獣』、人間六度『スター・シェイカー』など。
伊藤靖|いとう・やすし
河出書房新社。担当書籍に酉島伝法『奏で手のヌフレツン』、柞刈湯葉『まず牛を球とします。』、宮部みゆき『さよならの儀式』、大森望責任編集《NOVA》シリーズ、シュルツ『完全版ピーナッツ全集』など。
募集概要
■ コース概要
募集期間は終了いたしました
-
9月21日(土)に行われた初回授業の講義部分(1限目)を無料公開しています。
- 定 員:40名
- 受講料:160,000円(税込176,000円)
※ゲンロン友の会第14期会員、および過去にSF創作講座を受講された方は割引が適用されます。割引金額は6,000円(税込)です。割引の併用はできません。 - 募集期間:終了しました
- すべての授業を会場またはオンラインで聴講することができますが、課題を提出したり、講評を受けたりすることはできません。最終講評会についても同様です。
- ゲンロンショップよりお申し込み・お支払いください。ご利用にはゲンロンショップへのユーザー登録が必要です(無料)。
- 定 員:なし
- 受講料:95,000円(税込104,500円)
※ゲンロン友の会第14期会員、および過去にSF創作講座を受講された方は割引が適用されます。割引金額は4,500円(税込)です。割引の併用はできません。 - 募集期間:終了しました
- すべての授業をオンラインでのみ聴講することができます。会場では聴講できません。また、課題を提出したり、講評を受けたりすることもできません。最終講評会についても同様です。
- 講座期間中3回まで、チケットを別途ご購入いただくことで、通常授業のゲンロンカフェ現地での聴講が可能です。
- ゲンロンショップよりお申し込み・お支払いください。ご利用にはゲンロンショップへのユーザー登録が必要です(無料)。
- 定 員:40名
- 受講料:270,000円(税込297,000円)修了作品審査料を含む
※ゲンロン友の会第14期会員、および過去にSF創作講座を受講された方は割引が適用されます。割引金額は7,000円(税込)です。割引の併用はできません。 - 募集期間:終了しました
- すべての授業を会場またはオンラインで受講すること、課題を提出し講評を受けることが可能です。
- ゲンロンショップよりお申し込み・お支払いください。ご利用にはゲンロンショップへのユーザー登録が必要です(無料)。
- 先着順で受け入れます。8月12日(月祝)いっぱいもしくは定員に達し次第募集を締め切ります。
<募集に関する注意事項>
※いずれのコースも通年での募集となります。
※ひとりが重複して複数のコースに申し込むことはできません。複数のお申し込みが判明した場合には、いずれもキャンセルとさせていただきます。
※決済が完了し、受講が確定したあとのキャンセルは受け付けておりません。
※受講を希望される方は、受講規定をお読みのうえ、各コースのお申し込みにお進みください。
● 聴講コース
● オンライン聴講コース
● 作家コース
■ 決済に関して
銀行振込をご希望の方は、弊社よりご案内する支払い期限までに受講料全額(消費税込)をご入金ください。入金が確認でき次第、手続き完了となります。振込手数料はお申し込み者の負担とさせていただきます。
クレジットカード決済をご希望の方は、ゲンロンショップの指示に従い、手続きを終えてください。決済が確認でき次第、手続き完了となります。
どちらの場合も、支払い期限までに入金・決済が確認できない場合は、申し込みをキャンセルさせていただきます。
■ 受講までの流れ
授業開始日は9月21日(土)です。受講確定者には随時メールにて初回授業のご案内を差し上げます。
受講規定
授業期間 | 授業期間は2024年9月から2025年8月の1年間です。 |
---|---|
受講手続 | 受講料の納入が確認された時点で受講手続きが完了するものとします。また、受講の申し込みをもって本受講規定に同意したとみなします。受講手続き完了時にはメールで連絡いたします。 |
定員 | 定員は作家コース40名、聴講コース40名です。オンライン聴講コースには定員を設けません。 応募数が開講最少人数に満たないときは開講しない場合があります。 |
スケジュール | 授業日・授業時間はSF創作講座ウェブサイト(本サイト)に明示いたします。 |
撮影・放送 | 授業は受講生限定でオンラインで中継されます。また、一部はネットで期間限定で中継されることがあります。ゲンロンは記録および広報のため、授業風景を予告なく静止画あるいは動画で撮影することがあります。公開を希望しない受講生はその場で必ず申し出てください。また、感染症の流行などに伴い、授業をオンラインで実施することがあります。それ以外にも、オンライン参加を希望される場合は、別途担当者までご連絡ください。 |
メーリングリスト | 授業についての連絡は、公式メーリングリストを用いて行います。公式メーリングリストには、特にお申し出のない限り、お申し込み時のメールアドレスを登録いたします。お申し込み時のメールアドレスとは別のアドレスの登録を希望される場合は、その旨あらかじめご連絡ください。 |
受講料 |
|
在籍証明 | 教程の3分の1以上を欠席した場合は、在籍したと認められない場合があります。 |
注意事項 |
|
お問い合わせ
ゲンロン SF創作講座運営
info[at]genron.co.jp
実績紹介
卒業生からのコメント
※アイコンをクリックすると各卒業生の受講時の作品ページをご覧いただけます。
(第1,2期受講生)
「サンギータ」で第10回創元SF短編賞受賞
五反田はやばい。二〇歳を過ぎるまで滋賀県に住んでいた田舎者なので、最初に訪れたときはビビった。初来訪のきっかけはゲンロンカフェの平田オリザさんのイベントだ。就活のために上京し、五反田でトークを拝聴し、カフェ近くのカプセルホテルに泊まった。ホテルは入り組んだ路地の奥にあって、道に立った妖艶なお姉さんたちがマッサージはどうかと誘ってきた。やばい、と田舎者は恐怖した。
次に訪れたのもカフェのイベントで、亀山郁夫さんが登壇されていた。前回落ちたから今回も就活のための上京だった。面接を翌日に控え、就活カバンを持って臨んだ。イベントが終わるとカバンはなくなっていた。『罪と罰』のラスコーリニコフの話を引いてだったか、文脈は忘れてしまったが、亀山さんがイベント内で「悪をなすこと」について語ってらしたので、犯人は亀山さんの言葉にあてられたのか?と思っていたら犯人は亀山さん本人だった。電車に乗って追いかけ、合流した。「似てるから間違えちゃったよー」と亀山さんは仰った。亀山さんはうっかりさんだった。その晩はなんと亀山邸に泊めていただいた。深夜にご馳走になったうどんの美味さが忘れられない。そして翌日俺は仕事を得た。東京で職にありつけたのはひとえに亀山さんご夫妻のおかげだ。
ここまで読まれた方には五反田のやばさがわかってもらえたと思う。魔都であり、同時に予測のつかない出来事が起こる土地だ。ただならぬバイブスが横溢している。SF創作講座の舞台はそこだ。必然、集まってくるのはただならぬ受講生たちで、彼らは一年間、大森先生をはじめとしたただならぬ講師たちに教えを請うことになる。講座のあとには近場の居酒屋で宴が催される。やばい宴に決まっている。事実、そこで大森先生から授かったある言葉が、いまも俺の創作の核を為している。ただならぬ講師とただならぬ生徒がやばい宴をひらき朝まで喋り倒すのだから必然、バイブスが生まれる。そう、我々もまた、五反田をやばい土地にしている当事者だったのだ。小説は独りで書くものだが、集団のなかで生まれたバイブスがもたらす「イマ、ココで何かが起こっている感」を伴うことで俺もあなたも、文体や表現やヴィジョンを共鳴・共振・共進化させ、独りでは想像もし得なかった「飛距離」を獲得できるはずだ。その驚きと感動を俺は、いまこの文章を読んでいるあなたとも分かち合いたいんだよ!
(第1期受講生)
『異セカイ系』で第58回メフィスト賞を受賞
豪華な講師陣と「競う場」に魅かれ。成長を求めてSF創作講座の受講を決めました。結果。期待どおりの手ごたえを感じています。
けれど得たものはそれだけではありませんでした。競いつつともに創作する仲間。そのなかに自分を置いてみて。自分の得意なもの。苦手なもの。書きたいものが見えてきた気がします。
1ヶ月に1回。短編小説を書く。落としてしまうこともありましたが。それだけでちょっとした自信になります。そしてなにかを書くと。そのたびに発見がありました。SF創作講座で書いた作品のうえにいま自分は立って。景色が変わった。気がしています。
(第1期受講生)
『うつくしい繭』(講談社)で単行本デビュー
小説は教えられて学べるのでしょうか。学べるところもあるし、全部を取っぱらった本人のなかにしかないものもある、というのが現時点で私が考えることです。後者については学んで得られるものではないけれど、SF創作講座のハードな課題に真剣に取り組んだら、自分のなかにそれがあるか、あるとしたらどのようにあるのか、ということはわかってくる。それからもうひとつ、この講座は、編集者も作家仲間もいないプロになる前の孤独な書き手に、ある重要なものを与えてくれると思います。
大岡信は、詩歌における歌合(うたあわせ)を例にとり、日本では古代から、文芸や芸術の世界において「著しい盛り上がりを見せている時代や作品には、必ずある種の『合す』原理が強く働いている」と分析しています(『うたげと孤心』)。もちろん「合す」だけでなく、そこから離れて創作に取りくむ「孤心」は絶対的に必要だ。しかし「孤心」だけにとじこもっていると、作品は色褪せてしまうのだと。複数で集い、批評や競争をしあい、時には車座になって語りあう「うたげ」の場と、ただひとり創作をする「孤心」の両方を行き来することによって、作品はみがかれ、飛躍する。SF創作講座は、まさにこの、「うたげ」の場であると私は思います。
そこにいるのは小説を愛する一流の書き手たちと百戦錬磨の編集者、そしてこれからあなたが出会い、発見してゆく受講生たちです。容赦なくもすばらしいうたげの世界へようこそ。
(第2期受講生)
『約束の果て 黒と紫の国』で日本ファンタジーノベル大賞2019を受賞
「かけがえのない仲間を手に入れました」「見える景色が変わりま
ゲンロンSF創作講座を受け、このページに並んでいるようなキラ
私が講座について思い出すのは、腹が立つことばかり。自分の尊敬
そんな思いをしてまで、面白い小説が書けるようになりたいですか
迷わず「そうだ」と答えることができたあなたは、ぜひゲンロンS
(第2期受講生)
「天駆せよ法勝寺」で第9回創元SF短編賞受賞
「Final Anchors」で第5回日経「星新一賞」グランプリ、「蓮食い人」で同優秀賞をダブル受賞
私はこの講座を受けて人生が変わってしまいました。
そうなっても誰も責任を取ってくれません。自己責任という奴ですね。
ともあれ本講座の講師から得た刺激と、同じ課題に向けて書く仲間たちが、いくつかの受賞につながる力になりました。
もう一つの成果は、物語の設計図である梗概の書き方をある程度身につけたことです。
SF創作講座関連のブログ記事をまとめているのでよければそちらもどうぞ。
書くことを諦めない自信と、他人から学ぶ謙虚さのバランスも重要でしょう。自信過剰は大敵です。
講座で毎回きっちり課題を出し、講評を待つのは辛い。今もあのころを思い出すと心がざわつきます。
でも人生はどうせ辛いのです。
同じ辛いなら受けなきゃ損々。
小説は痛みを糧にすることができます。
いずれは自分の文章で自分を救えることだってあるでしょう。
ウェブサイト: https://YashimaYugen.com
Twitter: https://twitter.com/YashimaYugen
作品リスト:http://bit.ly/yugen-works
(第3,4期受講生)
「Meteobacteria」で第6回日経「星新一賞」優秀賞(アマダホールディングス賞)受賞
日本SF作家クラブ 第26代事務局長 就任
SF創作講座、驚きの真実(小説素人からの出発編・改)
・大森望(本物)がいる!(敬称略。初回講義にて)
・SF作家がたくさん。サインももらえる!
・小説ほぼ素人に、星新一賞の優秀賞が!
──と書いたのが2019年。趣味の延長で受講したミーハーな私の驚きの怪進撃は、まだ続いています。
・日本SF作家クラブに入会(2021)。なんと主任講師の大森先生と同期入会。
・日本SF作家クラブ第26代事務局長を拝命(2022)←いまここ
SF創作講座には、たくさんの人との出会いとチャンスが待っています。何が起こるかわかりません。思い立ったが吉日。申し込みボタンを急いでぽちっと!
(第4期受講生)
『鯉姫婚姻譚』で日本ファンタジーノベル大賞2021を受賞
小説書くならSF創作講座に行くといいらしいよ、と職場の先輩に言われ、じゃあ行ってやりますよぉ!と勢い任せに返したのが始まりでした。
ネット申し込みをした後で布団の上に寝転んで、受講料結構すんなあ、と思いながら天井を見上げたれど後の祭り。いえ、ここからが祭りです。もう申し込んでしまったのでやるしかない。参加してからわかったけど割と怪我人とか出るタイプの祭りだった。
そんな経緯で、ほぼ毎月梗概と短編小説を提出する生活が始まりました。てっきり小説の文章作法とかから優しく教えてくれるのかと思ったらそんなことはなかった。提出してはダメ出しされ、ダメ出しされた部分を直して提出してダメ出しされる日々でした。心が折れた人間から姿が消えていく。
正直言って私は結構褒めて貰えることもあったのでなんとか耐えられたのですが、一つ大きな問題を抱えていました。SFをよく知らない。本当に全然知らない。しかしこれに関してはなんとかなりました。二回目で苦し紛れに妖怪ものの話を提出したら良い評価を貰えた。私SFより妖怪ものの方が向いてる。
とはいえSF創作講座ですから、やっぱりSFを出さないといけないのかな、と思ってSFっぽいものを書いてみたりするんですがこれがすごく評判が悪いんですよね。じゃあどうすれば、と主任講師に飲み会で詰め寄ると、向いてるものを書いた方が良いと思うよ、みたいな言葉が返ってくる。突き進むべき方向が定まりました。
そうやって妖怪ものの短編をいくつも書いて、最後の方には主任講師も私をゲスト講師に紹介するとき「妖怪の人」って言ってたし、私の方もそうか、私は「妖怪の人」なんだっていう自覚をもって日々を過ごすようになったし、最終実作でも妖怪の話を提出してゲンロンSF新人賞の優秀賞を頂いたし、そんなこんなで私の妖怪創作講座は終わりを迎えたわけです。
講座が終わってからも文章を書き続け、光栄なことに日本ファンタジーノベル大賞を頂きました。これも言ってみれば妖怪ものです。人と人じゃないものが出会って交わる婚姻譚。しかも短編が連なった構成ですから、間違いなくSF講座で短編を書き続けた経験が生きている。
元が取れたどころじゃない大当たりでした。行ってて良かったSF創作講座。とはいえSFの講座に妖怪ものを書く人ばかり集まると皆困ってしまうと思うのでこれから通う人はちゃんとSFを書いてください。甘えるな。
(第5期聴講生)
『元彼の遺言状』で第19回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞
上手くなるためには、たくさん読んでたくさん書くのが一番だと思います。読むと書くは車の両輪ですが、いずれも一定の客観性が必要です。
自分ひとりで読んでいると、好き嫌いで作品を判断してしまいがちです。作品の魅力や技術に気づけないことも多い。他人の「読み」を聞くと、作品を読む際の解像度がぐんと上がります。
自分ひとりで書いていると、独りよがりになってしまうことがあります。他人からコメントを受けてはじめて、矛盾しているところや伝わりにくいところに気づかされます。
ゲンロンSF講座は「読み書き」に「他人の目を入れる」格好の場だと思います。しかも、「他人の目」というのが第一線で活躍なさっている作家や編集者、書評家たちの目。こんなに贅沢なことはありません。
受講すれば、「読み書き」の両方に他人の目を入れることができますし、聴講だけでも「読み」は鍛えられます。
私は当初受講生として参加し、途中で作家デビューが決まったため、聴講に切り替えました。これまで、小説とは人間を描くものであり、誰にでも分かる言葉で誰にも書けないものを書くのがよい文章だと思っていました。ですが聴講をするなかで、「読み」の幅が広がり、考えが変わりました。人間を描く必要もないし、誰にでも分かるように書く必要もない。文芸は途方もなく自由で、だからこそ難しいと感じました。商業作家としてのキャリアの初期段階で、このような気づきを得られたことは、今後数十年の文筆生活にとってかけがえのない経験になったと直感しています。
教室に通って小説を学ぶなんてカッコ悪い、天才はパパッとひとりで傑作を書くものでは、と考えている人もいるでしょう。そんな方に言いたいのですが、そういう考え方が一番ダサいです。文芸は芸の道。鍛錬を積めば上手くなるに決まっています。先人たちの芸を吸収して、自分の芸を鍛える一つの場として、ゲンロンSF講座、いかがでしょうか。
(第4期受講生、第5,6期聴講生)
「廃番の涙」で第15回創元SF短編賞を受賞
SF創作講座の受講手続きが完了した翌週の金曜日、私は部屋の鍵をなくして途方に暮れていました。当時、私は社員寮から今のマンションに引っ越してきたばかりで、玄関の内側には先日購入したテレビ台の段ボール箱がありました。帰ったら組み立てようと思ってたのに部屋に入れません。これは好きな作家に自分の小説を読んでもらおうとした代償だろうか、とネットカフェで嘆いた覚えがあります。
講座が始まってからも忙しく、なかなかテレビ台は組み立てられませんでした。なくてもテレビ映りますしね。毎月やってくる新たな課題。梗概と実作を同時並行でこなす日々。いつ来るか分からない自作の講評までの待ち時間。早朝まで続く懇親会。受講生有志による感想会。講座を通して知った小説や資料本が、地べたのテレビの前にどんどん積みあがっていきました。
そうやって、ひたすら創作に没頭した一年間(+聴講生の二年間)があったからこそ、現在の自分があるのではないかと思います。一度、平穏な日常から閉め出されてみたい人におすすめです。
今もテレビ台は玄関にあります。
SFの書き方 「ゲンロン 大森望 SF創作講座」全記録
日本SFはいま、第2の黄金期を迎えようとしている――大森望(主任講師)
2016年4月、書評家・翻訳家・SFアンソロジストの大森望氏を主任講師にむかえて開講した「ゲンロン 大森望
SF創作講座」。東浩紀、長谷敏司、冲方丁、藤井太洋、宮内悠介、法月綸太郎、新井素子、円城塔、小川一水、山田正紀各氏ら第一線の作家陣が、SFとは何か、小説とはいかに書くかを語る豪華講義を採録。各回で実際に与えられた課題と受講生たちの梗概・実作例、大森氏による付録エッセイ「SF作家になる方法」も収録の、超実践的ガイドブック!
早川書房 2017年4月20日刊行
ゲンロンSF文庫
ゲンロン 大森望 SF創作講座から傑作を集めた電子書籍レーベル。
各期の新人賞受賞作をはじめこれまでに9作品が刊行され、すべてに大森望・主任講師による解題がついています。ゲンロンショップ、およびAmazon Kindleでご購入いただけます。