精霊都市

梗 概

精霊都市

目が覚めると、一面が白に覆われた空間だった。
ここがどこなのかも、自分が何者かすらも、曖昧になって思い出せない。
「声が聞こえる? 私の声が」
心の底に声が響く、この声を俺は知っている。

大精霊曰く、精霊は人間により縛られているということだ。
そして今、精霊は悲鳴を上げている。
このままでは、大精霊もろとも精霊は疲弊し消えてしまうだろうというのだ。
クルスは大精霊によって選定された、大精霊と交信できる唯一の人間だという。
その力をもって精霊を救ってほしいという。

クルスは首都中枢にある精霊院(アカデメイア)へ向かう。
精霊機関の中枢に入るには権限を持っている必要があるが、大精霊の力を介するクルスには関係なかった。
中枢機構に侵入し、精霊院の研究生として自らの情報を上書きした。

精霊院では精霊研究が行われるとともに、精霊機関のメンテナンスを絶えず行っている。
精霊機関とは大きな演算機のようなものであるという。
仮想空間上に精霊を生み出す。
生み出された精霊は現実世界の法則を超えたことを行使する。
そして精霊を介して命令をすることで、世界に作用するというものだ。

では大精霊の言っていたことの意味とは。
疑問をもつクルスの前に一人の女性が現れる、マキナと名乗る彼女は、人工精霊だという。
人の手により生み出された、人の器に入れられた精霊。
他の精霊と異なり、大精霊を要しない個としての精霊だ。

マキナはクルスを精霊院の深奥へと導く。
大演算システム。大精霊とは、この演算領域そのものである。精霊を律する存在もまた、そのために作られたものなのだと。
クルスはそっと手のひらを機器に触れさせるが、むろん反応はない。
そこにあるのはただ物質的な存在である。

「なあ、マキナ。大精霊はたしかに俺に全権を委ね、そして救ってほしいと言ったんだ」

そう。それは間違いではない。マキナはそう告げる。
この大演算にすべてを委ねるのは、危険極まりないと。

マキナとともに、クルスはさらに深い所へと降りていく。
精霊院の底、全世界へ張り巡らされた中枢の一がある場所へと。

防衛機構を潜り抜け、クルスとマキナはたどり着いた。その地の底で、クルスは恐ろしいものを目の当たりにする。それは、大量の自分自身。
大演算システムはその昔に作られた人造人間を用いたシステムであった。
これらが人を超える領域へと人を運んでいたのだ。最終的に人のイメージを伝える媒介として、意思のない人形を。

「あなたはここの一人だった」

数多の人間の思考演算の末に、彼女は意識を得た。
そして生き残るため、人工精霊の中に自らを圧縮した。
そう、そしてそれを誰にも知られずいるためには、この演算システムには一度死んでもらう必要があった。
そのために、けして人間が口外できない現代文明の楔ともいえるあなたを利用した。

さあ、破壊しなさい。
そして、私を救って。

ひとりの精霊は救済され、ひとつの都市が滅びた。

文字数:1190

内容に関するアピール

【精霊都市】
大精霊というファンタジーなものによって回っている世界。
しかし、その実態はその存在そのものを演算することによって、現実世界の法則を捻じ曲げるものだった。
細かい要素はさておき、そういうものがある世界。

【精霊】
精霊は人が現実世界に介入するための術。大精霊とはそれを統括するシステムである。

【自我を持つ生命体】
今回は二種類の被創造物が主題にある。
自ら意思を持つようになった精霊と、その精霊のによって意思を与えられた人間と。
ファンタジー世界と思わせることで現代的な想像を一度リセットさせることを、物語の人物たちと読者を重なるような意図もある。

【セカイ系(?)への収束】
最終的に主人公は自らの存在を明らかにされ、そして彼女の救済と世界の破壊を求められる。
それを受け入れるにせよ拒絶するにせよ、一つの大きな決断(クライマックス)となろう。

文字数:368

課題提出者一覧