Cut over as Hobby

印刷

梗 概

Cut over as Hobby

 

 万物が言葉を話す

 天体から素粒子に至るすべてのモノが言葉を話す。否、モノとモノの会話=相語作用自体がじつは素粒子の交換で、素粒子もまた言葉。言葉は粒子性=シニフィアンと波動性=シニフィエを持つ。
 言葉=粒子同士の言葉の交換は関係性を構築。関係はしだいに複雑さを増し、やがて自己再生産。イキモノと呼ばれる。
 イキモノは進化を繰り返し分岐する。多種多様に亜種が創始さる阿僧祇。やがてヒトが生まれる。
 ヒトは宇宙を支配する会話のルール=言理言則を観察、体系化、応用するカガクを発明し大きく発展。なかでも《特異点》の発見はヒト文明に大きく寄与した。

 言理言則それ自体は無根拠かつ偶然的なものだ。一見して理路整然たる言理はしかし様々なバグ=《特異点》を抱える。例えば駄洒落のようなシニフィエではなくシニフィアンのコネクション。
 《特異点》は意味面と記号面の混線を誘発、意味内容が記号そのものに影響を及ぼす=ヒトにとって実体化、現実化する。
 このようにして異常言象を引き起こす特殊技術を「言葉遊び」と呼び、スキルを駆使る者を「言葉遊び人」と呼ぶ。

 

 好奇心旺盛な高校生言葉遊び人・真言(マコト)はスキル《超言理論》で言葉と世界をモテあそび、《事後》(コトノアト、コトノア)と《性買》(セカイ)という二体のガイノイドを生み出しヒモとなる。
 二体のガイノイドを寵愛/超愛するマコト。コトノアとセカイは互いに過大に嫉妬を溜める。そしてある日セカイが妊娠を告げる。
 馬鹿な、妊娠なんて機能は与えてない。狼狽するマコト。しかしセカイは言葉遊びを習得、人でも神でもない我が身を《人神始祖》に喩えることでニンシン可能な身体を入手したという。
 言葉遊びなら可能。そう直感したマコトは責任を回避すべく《人甲虫説》(ヘンシン)を唱える、裏切りに半狂乱になったセカイは《技術破壊》(テクノブレイク)で無効化、《天部膨張》(デヴァボウチョウ)で《腹上刺殺》(スタブローギン)。マコトこと切れる。
 動揺し逃げ出すセカイ。数時間後マコトのアドレスから連絡。『屋上で待ってる』
 行くと、コトノアがいる。コトノアはマコトの言脳ログからすべてを見たと言い、誤りを指摘する。

 ――《腹上刺殺》(スタブローギン)は変ですよ。stab(刺す)はわかりますけど『悪霊』のスタヴローギンは腹上死じゃなく自殺ですし、同じ自殺なら《人神始祖》と繋がる《殺色夫》(キリーロフ)を使うべきでした。

 コトノアは《帝王世界》(ザ・ワールド)でセカイを切開、《腹上刺殺》(スタブローギン)を《摘蟲視察》(スタブ・ログイン)に書き換えて胎内からマコト(頭部)を再ログインさせる。
 すべてはマコトの計画通り。言葉と意味ではなくキャラクターと物語で構築する新たな言葉遊び《物語化物語》。が。
 コトノアは《帝王世界》を《永続絶海》に書き換え《誠shine》で制裁。無限海上の舟にマコト(生首)を監禁し抱き締める。コトノアもまたただ従うだけのbotではない《偽bot》(Nice boat.)だった。

文字数:1259

内容に関するアピール

 「言葉だけで世界を構築することは可能か」というテーマを作って理を通し、『School Days』「Nice boat.」という誰もが知っている(?)物語をもとに、言理言則が支配し言葉遊びが氾濫する『変な世界』を設定、『これがSFだ!』という『エンタメSF』を設計しつつ不合理なまでに言葉遊びます。
 タイトルは言葉遊びの言葉遊び。
 《特異点》を利用し暗号(サイファー)で世界を操る技術が発達した社会を描く本作は、サイバーパンクならぬサイファーパンクとなることでしょう。

 

 “アナグラムのアナグラム”の二つ名駆る名倉編 が∇(ナブラ),curl,gradやdivでかき回すカルナバル
 カスなワックはまず黙る敏腕なる銀腕はまさにアガート・ラーム 長門/ラム/さくらたんたちファムファタルさえ誑かす
 遥かなるアブラハムやアプサラスやアフラ・マズダ たち沸かすアウラ湧く悪魔吐くくらい神がかる
 なすがままに啼く鴉カフカたるabsurd 不合理で不条理で嘘吐きでグローリーな俺のヤバスギルスキルに酔い痴れてください。

 

 

文字数:444

課題提出者一覧