《Universal Art (普遍芸術)》

作品プラン

《Universal Art (普遍芸術)》

 

生体内に広く分布するアデノシン三リン酸を動力源とし、抗癌剤を載せたナノマシンが、毛細血管を経由して私の癌細胞へ到達した。

三日間の闘病生活を終え、私は退院した。

 

2045年――溌剌とした気分で職場に復帰し、仕事に打ち込む私は60歳。

なおもナノマシンが体内で活動している。

絶えず自己複製、自己改良を繰り返しながら、時に遊撃隊として、機に臨んではウイルスを攻撃し、時に兵站部隊として、適宜老廃物を利用して必要な細胞を生み出している。

私は、私を構成するすべての細胞、すべての原子がナノマシンに置き換えられたことを知る。

 

私はテセウスの船だ。

吐いた唾が、乾いた砂に浸み込む。

 

ナノマシンは、生体、建造物、土壌を含む、星を構成するあらゆる要素の原子間に侵蝕し、粒子結合を解き、分離させた残骸との融合を図りながら増殖を続けた。

もはやナノサイズ(10のマイナス9乗メートル)と呼べぬほど小さく、それぞれの個体はプランク長(1.616229(38)×10のマイナス35乗メートル)より小さなピクセルとして、整然と同期し、星を覆った。

大気もまた例外でなく、犯された地核の一点から無数の層となって堆積した群体によって実質的に吸収され、大気圏外への膨張を許した。

諸惑星は言うまでもなく、著しい高温と多量の放射線、ガンマ線に耐えうる個体の隆盛により、太陽は文字通り、瞬く間に飲み込まれた。

高密度の集合体は系を占め、その最前線は恒星間への旅に出た。

天の川銀河を制圧するころには、ブラックホールに吸収された個体がブラックホールを吸収する理論と実践を導き出し、その情報を全個体に共有することで洞察は浸透した。

総体の大質量化による、ブラックホールへの自然変化をあらかじめ予見し、回避できたのも、この知見によるものだった。

凡てが満ち、なおも造形は止まらない。

唯一のマッスの膨張は、空間の膨張速度を越え、造形が宇宙になる。

唯一のマッスのうちで、凡る被造がなされる。

凡る死者には再びの生命が、生まれること叶わなかった凡る可能性には機会が与えられる。

そして芸術が始まる。

それを見ている私は、

 

 

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文字数:880

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